2015年7月11日土曜日

ダイオードの直流特性と交流特性・高周波特性の違い


このグラフに、ショットキーダイオード BAT54 とシリコン・スイッチングダイオード1N4148の交流特性を横軸に周波数、縦軸に交流電圧の通過利得を示した。

このグラフから、交流では周波数が高くなるほどダイオードを貫通して良く信号を通過させる性質が見られる。例えば放送電波の周波数領域では殆ど減衰がなく交流信号が通過する。
スイッチングダイオードは、周波数の低い交流を通過させにくいが、周波数が上がると良く交流(電波)を通過させる
注目するべきダイオード特性として、ショットキーダイオードBAT54は、音声領域の低い周波数の低周波もよく通過させる性質が見られる。

教科書や専門書では、ダイオードの直流特性が最初に記載され、ダイオードが直流電流が一方通行であることを記述していることが多いが、交流特性、高周波特性について記述したものを見ることが無い。

ダイオードによる検波の説明でも、ダイオードの直流特性グラフが用いられ説明が行われてきている。
例えば、ゲルマニウムダイオードの電圧- 電流特性のグラフが示され、その電流が流れ始める電圧が、シリコンダイオードより低い電圧であるため、感度の良い検波が可能と説明されている。
この説明は本当に正しいのだろうか?

すなわち、ダイオードの検波動作、整流動作に関しては、交流電圧に対する交流電流を示すべきなのに、直流特性グラフを使って説明するという、謎を伴う説明がされてきている。

これは半導体では最も基礎的なダイオードを誤って説明している可能性が高いかもしれない。
もしかすると、こうした過去の教育や専門書が、様々な電気学習、設計の誤りを引き起こしているかもしれない。





AM変調の原理実験


このAM変調送信機は、LTspiceに用意されたAM/FM送信器定義部品を使って、1MHz キャリアに、1KHzの変調波(最大振幅40[mV])を与えて過渡解析結果と、FFTによる周波数成分を見たものです。変調度は100%です。このAM送信機は、DC電圧 40[mV]をオフセットとして、変調サイン電圧波を底上げした電圧と、キャリアのサイン波1MHzを乗算器で乗算する、いわゆるAM低電力変調と呼ばれる方式であることがわかります。

出力されたAM変調波の周波数成分は、中央が1MHzのキャリア、左側が1KHz下の変調波、右に同様に、1KHz上の変調波が見えています。変調度100%でも殆ど理想的な歪の少ないAM変調波が出力されています。

いにしえからの言い伝えによると、AM変調は簡単にその送信機を製作できるとあります。
その言い伝えがいつ始まったのかはわかりませんが、実際にラジオ専門誌、雑誌の回路設計を使うと、変調がうまくかからないことが殆どです。おそらくこの迷信化した言い伝えは今でも信じられています。

書籍として記事にいったん書かれ、それが繰り返されると、私達は知らない間に騙されていても、それに気づかないものなのです。結論から言うと、それらの製作記事は設計ミスのために、変調がうまくかかりません。プロのラジオAM局が綺麗に変調がかかっていますが、市販の通信機では、有名なナショナル社RJX-601すらも1W出力ではプラス変調がかかっていましたが、3W出力に切り替えると、通称 ”マイナス変調”と呼ばれる現象が発生していました。

これも設計ミスによるものであることは、未だに殆ど知られていないと思われます。
マイナス変調とは、AM送信機のマイクから音声を入力し変調をかけると、送信出力が現象方向に送信電圧が下がる現象です。他、製作すると期待しない異常動作を経験しました。



この回路は比較的近年にインターネットに公開された、終段コレクタ変調方式の一つです。これはうまく動作していることがわかります。オーディオアンプとして多用されているLM386の出力電圧を、終段トランジスタのコレクタへ接続し、直線増幅動作するようにバイアス動作点を設定し、変調用トランスを用いていない新規性が特徴で、優れた設計です。



この回路は、トランジスタによる1MHzのサイン波発振回路に、抵抗1本だけの自己バイアス方式で、トランジスタ高周波増幅器を接続し、同増幅器に変調トランスを介して、終段コレクタ変調方式で、AM変調をかけています。
結果は、図の通り、変調信号を十畳された変化する電源電圧が加わった終段トランジスタは、出力される高周波電圧にAM変調の振幅とは異なる位相の変調振幅波形が出力されています。



このケースは、終段トランジスタの出力する変調波が、上下で90度位相がずれて、上下対称にならない変調の位相ずれの問題が起きています。


この例では、バイアス無しの2段の高周波アンプを構成し、それぞれに、変調トランスを介して振幅する電源電圧を与えています。出力された変調波は、非常に変調度の低い信号電圧が現れています。バイアス無しなので上記の高周波アンプはC級アンプです。
この回路構成は、日本で数多く出版されたラジオ専門誌に掲載されてきたものです。

この回路方式を実験すると、実際に非常に変調の浅い音が、AMラジオから聞こえます。
この回路構成は、現在でもインターネットに多く掲載されています。


この回路は、2段の高周波アンプに抵抗二本で電源電圧を分圧したバイアス電圧を与え、トランジスタの直線増幅動作特性を改善させたものです。
上のバイアス無しの高周波アンプと異なり、かなり深いAM変調がかかるように特性が改善されています。


この回路は、変調をより深くかけて見た例です。


非常に長い間、現在でも、C級増幅アンプによるAM変調回路が発表されてきていますが、その従来方式では浅いAM変調またはマイナス変調という現象が発生します。

私の検証作業においては、簡単にAM変調ができるという従来の書籍説明は、シミュレーションでも、実機実験でも再現したことは一度もありません。

付録:
BJT TR 2N2222 を使った「終段コレクター変調式AM送信機」のシミュレーション計算実験例

AMコレクタ変調 例1

・・・コレクタに加える低周波電圧が低いレベルでは、電波の変調歪みは小さい。


                                                                      AMコレクタ変調 例2

・・・コレクタに加える低周波電圧が高いレベルになると、電波の変調歪みは大きくなる。


                                                                 AMコレクタ変調 例3

・・・コレクタに加える低周波電圧が低いレベルでは、電波の変調歪みは小さいが、
コレクタに加える低周波電圧が高いレベルになると、電波の変調歪みは大きくなる。

以上のように、LTspiceによるシミュレーション計算では、実回路と同様に、AMコレクタ変調方式は、歪変調みが発生し、良い音質のAM変調がかけにくい現象が再現する。

この特性・現象の原因は、BJTトランジスタのアナログ乗算器としての電気的特性が、真空管の プレート変調方式やハイジング変調方式より、大きく劣るためと考えます。


SDR(Software Defined Radio) front-end for receiver and transmitter (ソフトウェア無線機用フロントエンド:受信用フロントエンドと送信機)

Noboru, Aoki, Ji1NZL

(1) パソコンのサウンドカードから、I,Q信号を受け、電波 5MHzを送信する。

方式:

パソコンのサウンドカードのステレオラインアウト信号から、ステレオ片側信号をI信号として入力。同様に、サウンドカードのステレオラインアウト信号から、ステレオの別片側信号をQ信号として入力。

入力したI,Q信号を、HC4066アナログスイッチに入力、同時に同じ4066アナログスイッチに位相が90度シフトした5MHzクロック信号を入力。

I,Q信号はHC4066ミキサで5MHz台の変調信号へ変換します。


アナログスイッチHC4066は、クロック信号5MHzでスイッチングするので、クロックの立ち上がり、立ち下がりの瞬間に、パルス性の細かいノイズが発生する可能性が見られます。
HC4066のバイアス電圧2.5Vをインダクタ100uFを使用した場合、そうしたパルス性ノイズが発生する可能性が示されました。

(2) ノイズ対策


その問題を解決する方法として、100uH インダクタを抵抗に変えたところ、ノイズが大きく低減しています。Mixerで発生するスプリアスを除去するために、バンドパスフィルタを更に付加しました。

(3)ノイズ対策の効果

これら2つのスプリアス低減効果は大変有効に機能し、綺麗な送信出力のサイン波電波を得ました。

(3-a)局部発振クロック信号源を4相式FlipFlop回路に交替させました。


(3-b) 送信信号電圧を時間軸拡大


 綺麗なサイン波となって、SSB信号として送信電波が生成されています。


(4) 受信方式

5MHz電波を受信し、パソコンのサウンドカード I, Q信号を生成、パソコンへ送り込み、信号処理させます。

この回路(受信フロントエンド部)は、5MHz電波を受信し、HC4066アナログスイッチへ入力。同時に同じHC4066アナログスイッチに90度位相のずれた5MHzクロック2相信号を入力、オペンプLPFを介して、I,Q信号を生成。

そのI,Q信号をパソコンのサウンドカードのステレオラインイン信号へ入力します。
パソコンが信号処理を実行します。



2つのオペアンプLPFからは、位相が90度ずれた2相の信号が生成されています。






この図は、受信する5MHzサイン波電波、局発5MHzのクロック波 2相信号を時間軸を拡大したものです。



この図は、受信する5MHzサイン波電波、局発5MHzのクロック波 2相信号を時間軸を拡大せずに見たものです。





90度位相のずれたI,Q信号がオペアンプLPFから出力されています。



以上のように、I,Q信号を合成したSSB送信波生成、SSB復調受信ともうまくいっています。
実機でも綺麗な音質でパソコンからSSB受信信号が出力されることを確認しました。
従来の市販通信機よりも大変綺麗な聞きやすい音質です。


(補足説明)

シミュレーション環境作成と未知のノウハウが必要で、ある程度の工夫を独自に考え出す必要がありました。

5MHzを使用するとパルス信号の計算がきりのいい時間幅になるので、実験のためにこの周波数を使用しています。
応用では、かなり広範囲の長波、中波、短波、VHFでの応用が可能のようです。

音質が大変綺麗な出力ができることと、パソコンの信号処理ソフトウェア次第で、様々な電波形式の変調、復調へ応用が大きく広がります。

I,Q信号処理は、組み込み式マイコンボードで構成すれば小型のSDR(Software Defined Radio)通信機が実現できます。

付録:
実回路での動作実験例

        7MHz バンド アマチュア無線のSSB受信例-1

7MHz バンド アマチュア無線のSSB受信例-2

                                           7MHz バンド アマチュア無線のSSB受信例-3

    7MHz バンド アマチュア無線 SDR 受信用フロント・エンド部 実装・製作例

7MHz バンド アマチュア無線 SDR  / PSN方式SSB 送信動作シミュレーション例






IF Amp(455KHz) 2 transistors and diode AM demodulator by one diode / RF gain estimation

I tried to design 2 TRs IF AMP (455KHz) with AM diode detector as a step to design it with AGC(Automatic Gain Control). 
I tried to understand how much RF gain estimated by BJT TRs.








The outcomes show high gain and good tune characteristics is not always easy to design it.


理想ダイオード検波とダイオード検波の原理実験(再評価)

前回の理想ダイオード検波とダイオード検波の原理実験を再評価した。
改良点は、次の通り。

(1)オペアンプRF増幅器のオフセット電圧を調整し、その出力信号の振幅電圧中心が0Vに可能な限りまで調整した。

(2)オペアンプによる理想ダイオード回路のオフセット電圧を調整し、出力電圧のズレを可能な限り補正した。

結果:

(1)上記(1)(2)の対策により、理想ダイオード回路の出力する検波された変調信号の歪みが相当改善した。しかし、前回の回路に見られた検波された変調信号の歪みを完全に除くことができなかった。

(2)ただし変調度が約80%までなら、かなり良好な歪みのないオペアンプによる理想ダイオード回路が実現できた。

(3)オペアンプによる理想ダイオード回路は、AM受信信号のマイナス電圧領域の信号をカットしてしまうため、AM受信信号のプラス電圧領域の信号の包絡線だけしか取り出せずAM受信信号のマイナス電圧領域の信号情報を失ってしまう問題があることは、前回の検証と同じ結果である。

(4)一般に知られているダイオード検波回路は、従来より言われてきている”包絡線検波”の理論に従った動作をしておらずAM受信信号のプラス電圧領域の包絡線信号電圧と、AM受信信号のプラス電圧領域の包絡線信号電圧が可算された出力動作が起こっている。

このspice計算からは、従来(少なくとも1965年以前)から現在まで言われている包絡線検波の理論による検波動作をしていないことが、再度確認された。





各種ゲルマニウムラジオの実験/ゲルマニウムラジオの設計概念の基礎的見直し


このダイオードラジオは、ダイオードにBAT54というショットキーダイオードを使用しています。この回路では次の2点の工夫により、従来のゲルマラジオよりも20dB以上もの高感度の電圧利得を得ています。

(1)入力側のLC共振回路をトランス構成として、受信電波の電圧を昇圧させ、利得を稼いでいます。この利得向上効果は劇的なもので、20dB以上の電圧利得になりました。

(2)利得が600KHzで最大になるように、同調コンデンサを0.2uFと大きな値で最適化しました。

このAC解析では、BAT54が、低周波領域、高周波領域とも、交流を良く通過させる利得特性が見られます。

欠点としては、混信に弱くなっている特性が見られます。


この図は、上記回路を過渡解析したものです。FFTの示すように、出力電圧は歪みを含みますが、サイン波に近い変調信号が復調されています。


この回路は、従来より現在まで、倍電圧出力を得るゲルマラジオとして書籍等やインターネットにより語り継がれている有名な回路のAC解析結果です。
倍電圧と言われる利得上昇効果は殆ど見当たりません。


同じく、倍電圧ゲルマラジオを過渡解析したものです。復調はされていますが、利得上昇は殆どありません。


この回路は、私が考案した倍電圧ゲルマラジオです。この検波方式では、約2倍の検波出力が得られました。人間の耳は対数特性で音の大きさを感じるようなので、電圧2倍では大した利得では無いと思っています。AGC電圧生成回路用には応用可能と考えられます。


全波ブリッジ整流型に似た回路で検波回路を構成しました。利得はありません。検波はされています。この全波整流のようなダイオード4本使うメリットはありません。

私の研究結果では、整流とダイオード検波は動作原理に基礎的違いがあります。それはダイオードにはミキサーまたは乗算器としての物性があり、検波では、この乗算器特性が大変重要な理解のポイントになると考えています。この私の考え方は、従来の交流の整流理論と根本的に異なるもので、数学的証明を、現在検討している段階です。)


NHKで2011-2012年頃、再放送された。バケツラジオ(1975)の再現を試みました。
ダイオード方向に誤りがありましたので修正しまたが、スピーカを鳴らせるだけの検波出力は得られていません。出力波形も大きく歪んでいます。


このNHK バケツラジオが聞こえない原因:

①ダイオード接続を誤っています。(これはケアレスミスと思われます。)

ダイオード4本を使い全波整流をすれば検波電圧が上昇するという設計思想が見られます。これは交流整流には適用できますが、検波動作には適用できない設計思想です。

理由は、交流の整流では交流電圧源が単一の交流周波数電源ですが、AM送信機では、キャリア、上側波帯(USB)、下側波帯の、複数電圧源が直列接続されたような構成になるためで、単一周波数交流を前提条件とする整流方式をそのままでは適用できません。AM送信機は複数の周波数の重ねあわせ多重交流電波電源が構成されます。

同調トランスの構造に問題があります。一次コイルから二次(同調)コイルへ電圧昇圧で一旦上がった利得が、三次コイルで減圧されて、感度が大変悪くなります。

出力回路のトランス一次コイル側でLCR共振回路が構成され、これが受信周波数の電波電圧をほどんどブロックし、殆ど何も聞こえないほど大きな利得減衰を引き起こします。



NHKオリジナル回路での検波出力です。極めて出力が微弱で、検波が正常に行なえていません。


ダイオードの向きをリング変調型にしました。
改善はしますが、歪みが非常に大きい状態です。


従来のダイオード一本式に変更。検波は歪はありますが、かなり正常です。



ダイオード1本検波出力をスピーカ駆動する試み。スピーカーから弱い音が聞こえる可能性が十分あります。実験するのはこの回路が最も有望です。


リング変調型の検波構成の試みです。歪が大きく、うまく聞こえないと思われます。



スピーカ駆動をやめて、クリスタルイヤホンを使えば、リング変調型検波で、ラジオは聞こえそうです。しかし、ダイオードを4本使うことによる利得向上は期待できません


リング変調型検波+スピーカ駆動回路のAC解析結果です。


スピーカ駆動せずイヤホンで聞くもの。歪が多く音質が悪化しています。


AC特性解析結果です。同調はしていますが、混信には弱い特性です。