トランジスタやFETは、入力に周波数の異なる2高周波信号を入力すると、周波数変換された信号が現れることがスーパーヘテロダイン式ラジオ等でも良く知られています。
(これは動作条件を適切に設定することで1石でも乗算回路動作が起こることを事実証明しています。(ただし乗算の性能品質はあまりよくありませんが。))
一方、オペアンプは差動増幅演算なので、乗算演算ができません。
このため、周波数変換動作は発生しないはずです。
実際に周波数の異なる2つの高周波電圧を差動増幅式オペアンプに入力したら何が起こるでしょうか?
上図では、2MHzと1.5MHzを入力し、出力に0.5MHzまたは3.5MHz成分が現れるか調べました。
結果は、理論通りの動作で、周波数変換動作は起こりませんでした。
楽器のギターの弦を2本鳴らしてチューニングをとるとき、そのうなりの音を聞きながらうなりが無い澄んだ音になるようにした経験を持つ人は多いと思いますが、オペアンプでは、このような”うなり”とか”ビート”と呼ばれる空気の振動で起こる現象は起こりませんでした。
(従来まで(現在でも)、ラジオや電気の専門書ではミキサー回路の動作説明には、この空気中の”うなり”現象が説明にさかんに使用されてきています。
しかし現実の電気回路のミキサー回路では、アナログ乗算回路の電気的位相角度回転現象が起きていることで異なる2種類の周波数電圧波成分が発生するのに対し、空気中の音波に見られる”うなり”現象は、実は、音波の重ねあわせ現象で発生しており、両者を同一の物理現象とは考えにくいことが、上記のシミュレーションや理論からも分かりました。)
乗算器・ミキサー回路についての補足情報:
乗算器としての周波数変換器(ミキサー)の機能と概念
日本国内では電気回路、ラジオ・通信機関連の専門書の書籍が多数出版されてきたそうですが、ラジオ内部に使われているミキサー回路が乗算器回路であることを今までうまく説明してきていないように思えます。
僕が高校生の数学I初期、虚数が出てきた時は、大変残念なことに、「虚数は実際には存在しない数字」と習ってしまいました。この僕達の重大理解ミスは先生方へ与えられた教育に関する法律(おそらく教育指導要領)の間違いがおおもとの原因だったと知ったのはだいぶ後でした。この日本の教育文化が、いかに現在まで電子回路設計技術の遅れを引き起こしているか、この教育指導ミスが引き起こしてきたあまりにも長年の普遍性を思うと、その重大な結果はたいへんに残念です。(先生がたが女将にものが自由に言えない様子が伺えます。)
ギルバートセル乗算器が発明された年は随分古く(1968年)、この時既に、欧米では、乗算器が複素数平面上の交流ベクトルを回転させる概念が知られていたと考えられます。ところが、僕がラジオ専門誌を読みだした1970年ごろから今現在も、ミキサーが乗算器と説明されたことは無く、周波数変換器、ミキサーという用語が、何回も何回も、繰り返し繰り返し使われており、複素数平面上の交流電圧を乗算するときの位相角度回転の概念が書かれた書籍を未だ見たことが無いのです。
(この乗算器の複素数電圧ベクトル回転の概念を知らないと、周波数変換の原理は一生理解できない重大な状況に陥ります。)
こうした専門書籍に関しても、非常に長年(半世紀以上)の電子回路設計を失敗させてきた過失責任はあまりにも重いと考えられます。思考停止し成長が止まり、情報が時代遅れとなっている専門書籍を繰り返し読んでいても得るものは残念ですが無いかもしれません。僕達は、これから改善を急ぐ必要があるように思えます。
スーパーヘテロダインラジオがいつ発明されたのが僕は知りませんが、現在でも未だに、トランジスタ式スーパヘテロダイン式ラジオのミキサー部には、ギルバートセル型乗算器は使われていません。
信じがたいことながら、メーカや専門誌を信じ僕らがトランジスタで長年苦労してきたコレクタ変調AM送信機も、ギルバートセル型乗算器を使用すれば、それこそ驚くほど簡単に高品位のAM変調が実現することが、実に今頃(2015年9月)になって確認されました。
(国内ではトリオ社が低電力変調実装は通信機TS-600が最初でしょうか。)
なぜ、このように日本だけが知に対する不遜な状態に陥ってしまったのか、あまりにも長い間の設計ミス、その過失責任の重みを深く反省しなければならないように思います。
世界を変えたのは、DBM ICの発明でしょうか?(SN76514がその初期製品?)
(DBM ICは日本では東芝製だけ? あるいはかろうじてJRCかな?
これらも特許回避はできたのかな?
この水準はあまりにも情けないように感じます・・・Orz。 )
参考文献:
乗算器(ミキサー、周波数変換回路)