2016年12月29日木曜日

電圧、電流計算と、電力計算に関するお詫び

電気回路の計算は、多くの場合、オームの法則キルヒホッフの電流則(KCL)、キルヒホッフの電圧則(KVL)を基礎として、それらを接続する線形素子(抵抗コンデンサコイル導線等)、非線形素子(ダイオードトランジスタJFETMOS-FETSCRIGBT真空管豆電球ニクロム線、ほか多数)のインピーダンス(直流から交流での抵抗値)を計算したり、KCLKVLに従った連立方程式(線形一次方程式/線形微分方程式/非線形微分方程式)を解き、目的の電圧v(t)や電流 i(t)を求める計算の手順になると思います。


電力 p(t) は、回路中の v(t), i(t), 負荷インピーダンス Z(ω) が求まった後から、


p(t)=v(t)*i(t) …(1)
     =v(t)^2 ÷ Z(ω) …(1)’
     =Z(ω)*i(t)^2 …(1)’’’


のいずれかの式で計算できますよね。


上の電力式は、計算順序として、v(t), i(t), 負荷インピーダンス Z(ω) のいずれか2つのパラメータ値を先に計算しない限り、電力 p(t) が求まらないことを意味しているように思います。多分ですが・・・。


でも、日本国内では、なんらかの理由で、真っ先にいきなり電力計算をする考え方がネット記事、無線専門誌等が、あちこちに沢山、頻繁に、それも相当数の量、大変熱心で誠実な真剣さをもって、見られますよね。


このように、日本国内で頻繁に見られる、いきなり電力計算をしようとする考え方は、もしかしたら、日本独特の新理論(?)なのかもしれませんけども・・・どういう考えかたか僕にはわかりません。orz


これは僕の個人的考え方になりますが、電圧 v(t) も電流 i(t) もインピーダンス Z(ω) も求まっていない状態で、電力 p(t) から真っ先に計算しようと考えるのは、非常に難しいのではないでしょうか?


野球の話で言うならば、ピッチャーがマウンドを勝手に降りてしまい、誰も交代の人がいなくて、なおかつボールも外野の外に無くしてしまい一個もないのに、
監督からは、
「得点をとらないと、この試合に勝てないのは判るよな。だから打席にたってヒットを打ってこい! 判ったか! これは命令だ!!」
と言われたら、僕はどうしたら良いのでしょうか?


こうしたことを笑い話に読む方もおられるかもしれませんが、野球でも、けっこうマジで辛い思いは、よーくあるんですよ。
このようなヒット打ちを監督から指示・命令されても、僕の力ではとても無理なんです。


さて、状況を振り返って推定してみますと・・・。


そのアプローチ法では、手元に送信機受信機アンテナパワー計があるのでしょう。
ダミーロードもあるかもしれません。

送信機で送信するとパワー計が電力3Wを示しました。
すなわち、この場合は、電力値(実効値尖頭値?)が真っ先に求まってしまうのですね。


さあ、困りましたよ。
アンテナにかかっている電圧や電流はどうすればわかるのでしょうか?


終段トランジスタの電圧や電流も手持ちのオシロスコープでは 50.62[MHz] なんて高い周波数は測れませんし、そんなオシロスコープは売ってもいませんでしたし、あっても恐ろしく高価でとても買えませんよね。高周波の電子電圧計?・・・そんな高いもの買えませんよね。

学校の先生はオシロ使ってもいいよ、と言ってくれてますけど、作った無線機持ってくうちに配線がビミョーに壊れるかも・・・orz


アンテナは SWR=1.2 です。
1.0を目指していますが、1.2以下には下がりません。
アンテナのSWRは、周波数を変えると変化しているようですよ。


そこで送信機からマイクでしゃべると、パワー計は3Wより下がり、大きな声を出すほど、パワー計の値は下がりローカルの通信相手局から、


君の電波変調が薄いよ!


と言われました。


どうして? なぜに、こんな困った現象が発生するのでしょうか?


また誰かが言いました。


「それは表皮効果なんじゃないか?」(本気モード)


この謎解きは、なかなか難しかったと言っても良いのではないでしょうか?
この問題は、もしかして、ひょっとすると、いや今でも、けっこう難しいのはないでしょうか?


あれ? また同じことが本に書いてある。


SSBトランシーバの製作は難しいですが、AM変調ならば簡単に自作できます。
この記事の回路は出力5Wに設計してあります。
八木アンテナを使えば、関東一円は楽に交信できます。
回路図プリント基板配線パターンも本に書きましたから、みなさんも作ってください。
終段トランジスタ・アンプは、C級動作で大丈夫です。
C級アンプですからバイアスを考える必要はありません。
だからトランジスタのベース端子バイアス電圧は0Vでいいんですよ。
受信部は、コリンズ方式ダブルスーパヘテロダイン式高感度です。
RFアンプミキサー部はすべて最新のデュアルゲートMOS-FET混変調にも強い設計です。」


あのー、先生。どうしてもうまくできないので、手紙で質問書きました。


先生のお答えの返事です。


トランジスタには真空管と違って、コレクタ変調がかかりにくい性質があります。
マイナス変調が起こるのは、変調をかけた時に、トランジスタ増幅の動作点が下側に回り込むために起こります。
変調が薄いのが気になる場合は、変調トランスからの中間タップから、ドライブ段ドランジスタコレクタ電源端子へ、終端タップ終段(ファイナル)段トランジスタのコレクタ電源端子に接続して、ドライバ段では変調を浅めにかけファイナルで深く変調すれば、変調が薄くなくなり、濃くかかります。」


あのー、先生・・・。
編集部経由でお手紙でお返事はもらったんですけど、その方法やっても、全然、改善しません。
この場合どうしたら良いのでしょうか?


それと先生、ドライブ段トランジスタは、アナログ乗算器として動作しないといけないんじゃないでしょうか?


アナログ乗算器では、RF電圧の周波数と、低周波アンプの周波数同士で複素数電圧平面周波数と位相回転があるので、AM変調がかかると考えた場合、乗算器を2段連結すると、ドライブ段の変調電圧をファイナル段でさらに乗算して、変調電圧が、AM変調の式から相当に歪んだりしないのでしょうか?
そこ、本当に、それでいいんですか?


それと、変調トランスの出力は、2相の電圧になりますよね。
2相電圧のそれぞれの電圧と、位相差はどう考えて計算したらいいんですか?


僕には、このコレクタ変調は、無理なんでしょうか?
どうか、ご勘弁を、お許し願います。m(__)m


PS.
Bakabon Mama, Bakabon 記
これはパロディーの冗談ですが、今でもかなりまじめ話に、事実に基づいた本当の話かもしれませんよ。

追記:
C級アンプというのは、BJTトランジスタのベース電圧を0[V]に設定して動作させるので、リニア電圧増幅はできません。
C級アンプが非線形アンプの歪みのために、電圧波形は大きく歪むのが電子工学として古来から広く知られています。
SSB/AM/DSB変調はリニアアンプでないと、電波が歪んで電波法で定められた不要輻射成分の抑圧は不可能です。
「AM/変調の終段トランジスタにC級アンプが使える」という日本古来からの「言い伝え」理論的にありえないことではないでしょうか。

C級アンプが使えるのは振幅が一定であるFM/PM変調であって、なおかつBPF,LPFで不要輻射電波を大きく減衰させる電波法による電波の質を良好に保つ義務条件が伴います。

一方、3V程度の低い電源電圧動作でBJTトランジスタをアンプとして使用すると、例えば2SC2053のようなリニア増幅に向いた特性の場合、0.2W程度までは、コレクタ電流が飽和しない狭い増幅領域があり、バイアス電圧0Vでも、コレクタ終段へのAM変調が可能になるかもしれません。

しかし、リニア増幅レンジは、VCE範囲が大変小さな狭いダイナミックレンジになるはずです。
実際の実験の経験的にも1W以上はとても無理でした。
(実際やってみるとわかりますが、従来の日本式プロの仕事のやり方は、試行錯誤の結果であって、1Wでもできるのが神業の領域です。しかし試行錯誤というのは、論理手順がわからないから、いろいろやってみるという最後のやりかたで、日本古来の精神論に近いと思う。最大の問題は時間とコストをかけても、理論が全然無いから、できる保証が無く、一生かけてもできないことも十分あり得る。

たまたま半導体から青色の光がでてもその理由がわからないとか、どうしてネオジム磁石にある種の物質を混ぜると熱をかけても磁力が失われにくいみたいなアプローチは試行錯誤法が主流に見える気がする。)

AM変調回路の設計も、理論無しの思考錯誤法の落とし穴、とにかく動かせ、理屈をこねずに、とにかく作れ、たまたま成功した経験だけにたよるやり方が陥った、解決不能の迷宮にはいったまま抜け出せない、永遠の迷宮の実例と思う。

電力計算から抜けられずに困っているよりも、まず、オームの法則、キルヒホッフの電流則、電圧則から、電圧か電流を計算してから、そのあとに電力を考えるのが、現代までの物理学、電気工学、電子工学による、計算手順に従って計算したほうが、理にかなっていると思う。

ただ、交流の抵抗(インピーダンス)の計算は、数Iの複素数が応用されますが、何故、こんな計算法をして良いのかを教えず、こうやればできるから、それでいいみたいな、教育のアプローチは、理由なしの機械的計算手順を教えるだけだと思う。

何故このような計算をしてよいのか、Z(ωの)計算方法の本質的理由を教えてないと思う。
だから、いずれは自分でその理由を考えなければならず、インピーダンス計算の仕方がいまいちわかりません、という質問がネットに多く見られる原因になっているような気がする。

学校では応用の仕方とか、考え方の手順を教えないで、決まりきった演習問題の多数のパターンをこなして試験の点数をあげることを目標に置いている傾向が続いているので、身近な電気の問題でも、どういった考えから、どういう思考の順序を組み立てて、目的の計算を行うかというような、応用問題へのアプローチ、考え方、応用方法が身につかない?のかなぁ・・・と思うことがあります。

かしこ

参考文献:
[1] 初歩のラジオ 月間連載各誌(2000年ころ休刊中)
[2] ラジオの製作 月間連載各誌(同じく休刊中)
[3] CQ Ham Radio 月間連載各誌
[4]モービルハム 月間連載各誌
[5]ハムジャーナル 各誌
[6]トランジスタ回路の設計
[7] 数I,IIB,III 高校教科書(お勧め); 三角関数、複素数、行列の一次変換、オイラーの公式
[8] 電気工学、電子工学用各種教材(お勧め
[9]トランジスタ技術 月間連載各誌(お勧め)
[10]ブログ ラジオの勉強(お勧め)

※:古い書籍でも、最新の書籍でもネット記事でも、まだ沢山の再現性のない回路、設計、理論があります。それらは改訂されていないため、理論上の誤りを含んだまま、繰り返されて、文化の伝承が続いているようです。
僕が調べた限り、理論修正が必要なケースもかなり多数残っているのがわかってきました。
僕は、今後の改善されるべき課題として、微力ながら、文明の進歩へ努力しようと思います。

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