2017年1月31日火曜日

ギルバートセル乗算器によるラジオ受信機用周波数混合器の設計 基礎性能実験

 ギルバートセル乗算器によるラジオ受信機用周波数混合器の過渡解析+高帯域FFT解析(図1.)のように、ラジオ受信機の周波数混合器に同乗算器を使うと、フィルタ無しでもスプリアスの大変すくない良好な周波数変換ができる。

図1. ギルバートセル乗算器によるラジオ受信機用周波数混合器の過渡解析+高帯域FFT解析

図2. 変換されたIF周波数帯域455KHz近傍のスプクトラム解析したFFT結果から、AM変調波が大変きれいに歪みなく周波数変換されていることがわかる。

図2. ギルバートセル乗算器によるラジオ受信機用周波数混合器の過渡解析
+IF 455KHz近辺FFT解析

しかしながら重大な課題もあることが判明した。
この回路には、入力RF信号のダイナミックレンジが狭くなる特性がある。
本回路では電源電圧6Vと大きく振幅のスイングがとれるように考慮したが、それでもOSC 1.0Vピーク電圧を与えると、出力される波形には、細かいスプリアス信号が現れる。

このままの回路でラジオや通信機に使うのは難しいかもしれない。
Power トランジスタで直線性の良いものがあれば良いが、現在のところそのようなトランジスタがあるかどうかは不明。
市販のアナログ乗算器ICはほぼ生産中止で、かつ扱える周波数が低く、ラジオのような高周波用途のものは現在でも無いと思う。

別の記事にも書いたように、OPアンプは理想的な直線性をもつが、差動型電圧リニアアンプなので、原理的にアナログ乗算器は実現できない。必然的にOPアンプではAM変調回路も実現できない。

通信機では4本並列させたFETによる周波数混合器を用い、ダイナミックレンジを広くとる設計が見られる。

僕が別記事に示したオリジナル設計のアナログ・スイッチを使ったDBMや、ダイオード式リングDBMミキサーは、ダイナミックレンジが広く、RF段、OSC回路、IF回路の各回路間の結合を疎にして、回路全体が安定して動作させやすいという大きなメリットがあるのもわかった。

ブログ記事目次へ戻る







2017年1月30日月曜日

ダイオードAM検波回路に見られる広帯域周波数上の複数放送局の同時受信検波特性

ダイオードの持つ周波数変換特性を使い、広い帯域の周波数に出現するAM送信局が、同調操作無しで、バンド帯域内の全てを一度に受信する機能が動作するかどうか確認しました。
NHK,TBS,IBSの周波数のAM放送局を想定し、受信動作させたところ、全ての放送局が同時に復調されました。

このアイディアは、エアーバンド受信機のYoutube動画をみてひらめきました。
おそらく同じ原理と思います。
この同時の周波数変換動作も、従来のEnvelop Detector/Peak Detector理論では説明できないと思います。

図1. ダイオードAM検波回路に見られる広帯域周波数上の複数放送局の同時受信検波特性


ブログ記事目次へ戻る

数値演算式AM変調/DSB変調送信機の基本設計(Direct Sampling Method準拠)計算基礎実験

数値演算式AM変調/DSB変調送信機の基本設計(Direct Sampling Method準拠)計算基礎実験を行った。
綺麗な歪みのないAM変調電波、DSB変調電波の送信機ができることがわかった。
(図1.1,1.2,2.1,2.2)

図1.1 数値演算式AM変送信機の基本原理の動作確認と広帯域FFT解析結果



図1.2 数値演算式AM変送信機の基本原理の動作確認と狭帯域FFT解析結果


図2.1  数値演算式DSB変調送信機の基本原理の動作確認と広帯域FFT解析結果


図2.2 数値演算式DSB変調送信機基本原理の動作確認と狭帯域FFT解析結果


ブログ記事目次へ戻る

数値演算式AM同期検波受信機の基本設計(Direct Sampling Method準拠)基礎計算実験

図1.に示すように、数値演算により歪みが殆どない理想的なAM同期検波が実現できることがわかった。

図1. 数値演算式AM同期検波受信機の基本設計(Direct Sampling Method準拠)基礎計算実験


ブログ記事目次へ戻る

数値演算式FMステレオ送信機(SDR/Direct Sampling Method)の基本設計

Direct Sampling Methodを意識した、数値演算によるFMステレオ用ベースバンド信号の発生方式(図1.)と、そのFMステレオ送信機(図2.)をLTspice上で、計算・シミュレートした。


図1. 数値演算によるFMステレオ送信機用ベースバンド信号の生成

このステレオ信号(図1.)は、何もFM変調だけで無く、別の変調機に接続してもステレオ送信はできる。
例えば、AM変調器、DSB変調器、PCM変調器でも、このベースバンド信号を入力すれば、ステレオ信号が送信できる原理になっている。
図1.は、もはや回路図というより、計算式をそのまま電圧式で書いただけのシンプルなものになっている。

図2. 数値演算によるFMステレオ変調送信機

図2.は、図1.で生成したステレオ信号を、LTspice組み込みのFM送信機パーツにつなぎ、その中心周波数 10.7MHz FM変調信号を生成してみた。


ブログ記事目次へ戻る

2017年1月29日日曜日

高品位・高音質・高感度AMラジオ・システム(スタンドアロン動作対応/マイコン制御対応可)


図1. オリジナル設計の高音質ラジオ IF利得約40dB

人気のあるLTC1799 (Linear Technology inc.)で局部発振器VFOとして使用し、微弱なAM変調電波(変調指数=1.0)を受信動作を計算シミュレーションした。
大変素直な動作で安定しており、オリジナル設計の検波で、検波歪みも非常に少ないいい音で聞こえると設計段階で、予測計算できた。(図1.)


図2. オリジナル設計の高音質ラジオ IF利得約80dB

もっと感度をあげたらと、IFアンプの利得を大きめにした。
AF出力に異常は無く綺麗な音声質力だが、IFアンプの出力に低周波信号が現れてきた。
これはOPアンプの帰還抵抗を介してAF信号がOPアンプにフィードバックされ混入し、増幅が起こっていると考えられる。
このままIF利得をあげるのは得策でない。


図3. オリジナル設計の高音質ラジオ 全体システム



マイコン制御でDDSクロック出力器を制御すれば、周波数表示、周波数同調も制御できる。
RF段のバリコンの制御は、今式ではバリキャップ制御でできるが、入力RF電圧が大きいとバリキャップ容量が変化する課題がありそう。
OPアンプのAGC制御は実現困難な課題として残るが、このへんが妥協点とし、ここから先の性能向上にはデジタルSDR式へ進んだほうが得策そうに思います。
VRボリュームでIF利得を手動で変えられるのも良い解決法と思います。

ブログ記事目次へ戻る


2017年1月28日土曜日

ラジオ/受信機用電圧昇圧特性をもつフロントエンド同調回路と発振現象のリスク/その回避方法

FET小信号高周波アンプの前段に使われているあまりみかけない同調回路を見つけました。
入力電圧が+10dBも昇圧される特性があり、感度を高める工夫が見られます。
一方、下記のようにリスクも同居していると思います。

図1.  4MHz同調点周囲の利得・位相特性明

図1.のように4.0MHzで+10dBもの高い昇圧利得が現れています。

図2.   4MHz 10mV 入力時の過渡解析結果

電源ON瞬間に、電圧振動の過渡現象が見られます。
こうした波形の発生は、後段のFETが発振するトリガーになり得るリスクが伴うと思います。

経験的には、こうした振動信号の発生は、電力アンプ(特に高周波アンプ)ではトランジスタは電源ONと同時に異常発振し、一瞬にトランジスタが昇天し恒久破壊となる場合が少なくありません。


図3.コイルのダンピング抵抗を変化させた利得・位相特性

鋭い利得+10dBを下げて、安定した発振しにくい抵抗値を探しました。
タンピング抵抗で、鋭い利得は平坦化可能です。発振をおさえる安定動作が可能です。


参考サイト:
RLC回路の昇圧現象をうまく利用している応用例
Crystal radio with (almost) loud sound
https://www.youtube.com/watch?v=RaPgzO1P62M
(Copyright by Mr. Marcos Kusnick and Mr. Youtube)



ブログ記事目次へ戻る


R0.1: Mar.25, 2016
RLC回路の昇圧現象をうまく利用している応用例を追記
Crystal radio with (almost) loud sound

3連LED点滅回路(電飾実験用 Lチカ)の動作確認と消費電力効率の課題

小型クリスマスツリー用電飾LED点滅回路(通称 Lチカ回路)
(JARL QRPクラブ殿 2016年12月公開発表, Copy right by JARL QRPクラブ殿)
をLTspiceで動作確認しました。

安定した3組のLED点滅ができるシンプルで優れた回路です。
消費電力の省電力化に課題があることもわかりました。

図1. 点滅動作の確認 動作OK


図2. 平均総消費電力の測定


図3. LED一個の平均消費電力の測定



市販のLED製品では、省電力化に各社の競争があるようです。
この回路の特性はその点課題が残りますが、実験、教材の用途に良いと思います。

ブログ記事目次へ戻る


ワイドラー(Widler)定電流源のシミュレーション設計

前記事のギルバート乗算回路で使用する定電流源ワイドラー定電流源回路を用いて設計する。

電流吸い込み型の定電流源回路(ワイドラー/Widler定電流源回路)をLTspiceでシミュレーションし、目的の定電流源200uAを得る抵抗REの値を求めた。

REの値は計算でも求まるが、シミュレーションでDC解析しておいたほうが、設計時点で事前に安心できると思う。

図1. ワイドラー定電流源のシミュレーション設計

ブログ記事目次へ戻る

FET(2SK241/2SK192)入力+BJT TR高周波増幅式ストレートラジオの設計と特性/性能見積もり

FETのハイインピーダンス特性を使ってLC同調回路のハイインピーダンス電圧を受けやすいFET入力、BJT TRで高周波増幅する簡易型ストレートラジオを構成しました。

感度は特に問題はありませんが、OPアンプ LTC1358/1359/NJM4580一個構成には負けます。

選択度は甘く、その分、音質が良い?かもしれません。
ただしダイオード検波による高調波歪みは避けられません
(市販のラジオと同等の音質レベル)

図1. FET(2SK241)入力+BJT TR高周波増幅式ストレートラジオ

FET 2SK241の利得は1.0倍で増幅はしません。トランジスタ側で利得を稼いでいます。

図2. FET(2SK192)入力+BJT TR高周波増幅式ストレートラジオ Q=53

FET を 2SK192に交換Qが高すぎないようQ=53に抵抗でダンピングしました。

図3. FET(2SK192)入力+BJT TR高周波増幅式ストレートラジオ High Q

これは、LC回路をダンピングを弱いものにしたものです。
High Qですが、「Qは高ければ高いほど良い」という「言い伝え」に疑問を抱いており、「適切なQ値がある」と、僕は考えています。(別途ブログに説明済)


図4. FET(2SK192)入力+BJT TR高周波増幅式ストレートラジオ Q=53同調特性

LC並列回路1個だけなので、同調特性は甘いです。その分、高域の復調信号が聞こえやすくなると思います。

図5. FET(2SK192)入力+BJT TR高周波増幅式ストレートラジオ ドレインソース出力型

この回路では、FETからの出力を、ソースからとった場合でも、ドレインからとった場合でも利得は殆ど同じです。

FETでも高利得を期待していたのですが、この回路構成ではこうした特性(FETは利得=1.0のハイインピーダンス入力バッファアンプ)であることが分かりました。

回路が簡単なので、初級の実験、学習用、教材、遊びの趣味の用途に使えると思います。






安定動作を目指すアナログ・スイッチ使用オリジナルDBMミキサーの設計

以前このブログで扱ったトランジスタ・スーパーヘテロダイン方式ラジオが、ピーピー、ギャー、う〜などと異常発振しやすい課題を解決する手段として、僕がオリジナルに設計したアナログスイッチ式使用DBMミキサーを、市販のポリバリコンを使った同調を可能とするように改良しました。

図1. アナログ・スイッチ使用オリジナルDBMミキサー 改良版

図1.に、中波AM放送を受信シミュレートした過渡解析結果と、周波数変換のスペクトルを示しました。
手前味噌ですが、良い特性と思います。

ミキサーは高速スイッチ式で増幅がないので、飽和も起こらないのではないかと思います。
同ミキサーは、5V HCMOSレベルで動作するので、ダイナミックレンジも広い特性になると思います。

クロック信号をOSCとして0度、180度位相を入力し、これらもDBM内でキャンセルされるように工夫しました。
マイコン制御での周波数設定もやりやすくなっています。
LTC1799等の可変クロック発振器も使えます

ブログ記事目次へ戻る







ギルバートセル乗算器を使ったAM変調/DSB変調器の設計

前回構成したギルバートセル乗算器を使ったAM変調/DSB変調器は、BJTトランジスタへのバイアス電圧を定電圧源で設定していた。
これらを、電源電圧Vcc=6Vから抵抗分割で、同じバイアス電圧を設定した。

図1.1に示すように、問題なくAM変調ができている。

図1.1 抵抗によるバイアス電圧設定をしたAM変調器 (ギルバートセル乗算器使用)


次に、図1.1 の回路中の定電流源を、BJTトランジスタで構成するワイドラー定電流源で置き換えた。
問題無くAM変調ができている。(図2.1)
フィルターを使わなくても、大変スプリアスの少ない電波の質の良い綺麗な変調波が得られている。(FFT参照)

図2.1 ワイドラー定電流源に置き換えたAM変調器 (ギルバートセル乗算器使用)



図2.1と同じ回路で、ベースバンド信号に加算した底上げDC電圧を0Vにした。
変調波はキャリアが綺麗にキャンセルされたDSB変調波を得た。(図3.1)

図3.1 ワイドラー定電流源に置き換えたDSB変調器 (ギルバートセル乗算器使用)

図3.1 のFFTの周波数軸を拡大した。
キャリアが綺麗にキャンセルされたUSB,LSB成分の変調波が見える。(図3.2)

図3.2 ワイドラー定電流源に置き換えたDSB変調器(ギルバートセル乗算器使用)FFT周波数軸拡大

出力には、よりスプリアスを減少させるためBPF(バンドパスフィルタ)を通過させた後に、リニア電圧アンプで電圧増幅を行うのが良いと思う。
差動型出力なので、OPアンプでの増幅がより向いていると思う。

従来のアナログ式AM/DSB変調器にはダイオード4本で構成する平衡変調器(リング変調器)が多用されたが、こちらの方式のほうは、遥かに発生するスプリアスが少ない。

従来式リング変調器は、スプリアス減衰効果の優れたバンドパスフィルタ(水晶フィルタが多い)が必須だったが、この方式では、BPFがいらないくらい電波の質が良い特性が見られる。

ブログ記事目次へ戻る


高性能OP AMP LT-1359を使ったIF増幅器の設計(455KHz 対応)

市販のトランジスタ・ラジオよりも音質を良くする改良を目標にして、増幅のリニアリティーが理想的であるOPアンプでIFアンプを設計した。(図1., 図2.)

IFアンプは、電圧利得 約40dBとし、アンプ前段に複同調回路を市販のIFTコイル2個で構成した。
低域から高域の広い周波数域の綺麗な音が出せるように、同調特性の選択度を甘くしてみた。(図2.)

図1. 過渡解析結果とFFT解析結果


図2. AC解析結果

従来のトランジスタ・ラジオは、中間周波増幅回路で発生する振幅電圧の歪みを少なくする思想がみられませんが、この方式では、OP Ampの理想的直線増幅利得特性を用いて、振幅電圧の増幅歪みが非常に小さくなるよう音質を良くするための改良を考慮しました

ブログ記事目次へ戻る

2017年1月27日金曜日

LTspiceで見るゲルマニウム・ラジオ(Crystal Radio)検波回路のピーク・ホールド動作

LTspiceで計算したゲルマニウム・ラジオの検波信号の時間軸を拡大すると、負荷のRC並列回路で、細かなピーク・ホールド動作が起こっていることを見られることがわかった。
(図1.1)

図1.1 時間軸を拡大した検波信号のピーク・ホールド動作

図1.2 時間軸拡大前の検波信号(1KHz)

時間軸拡大前の検波信号は、図1.2のように1KHzで、その緑の線が太く見えている。
この太い線は、細かなピーク・ホールド動作であったことが、時間軸を拡大表示するだけで見えてきた。

この現象はけっこうexcitingなものに見える。
復調されたベースバンド信号は、ベースバンド内の周波数ごとに、従来とは別の意味で、2つの大変狭い電圧幅の包絡線に囲まれるように、キャリア周波数のサイン波が細かく振動しているのかもしれない。(現在、仮説です。)

やっぱり、従来言われている包絡線検波理論、Envelope detector, Peak detector説明とは、全然違った挙動で、AMダイオード検波回路は動作しているように見えています。


ゲルマニウムラジオのシミュレーション動画(LTspice使用)


ブログ記事目次へ戻る

2017年1月26日木曜日

SA612/NE612 SA602/NE602 14MHz受信機の利得制御効果の計算(失敗例)

SA612/NE612,SA602/NE602 は、ギルバートセル型乗算器を 2ペア 1個 内蔵し、Mixer回路、プロダクト検波回路、水晶用局部発振器を実装している。
(高感度のシングルスーパヘテロダイン受信機や、送信機用のDSB/SSB/AM用平衡変調器を実現できる人気のあるIC。)

受信機として使う場合は、この応用で、総合利得が100dBを超えるのに対し、AGC制御がおよそ40dB程度可能らしく、飽和しやすい課題があるように思える。


図1. SA612/NE602 受信機で発生するプロダクト検波の奇数次高調波の歪み


図1.は、14MHz受信機を構成し、ベースバンド信号1KHz 最大振幅=20uV 程度を入力すると使用したspiceモデルでは、3次、5次、7次の奇数次の歪みが現れた。
おそらくこの原因は、サイン波同士の乗算では無く、クロック波形のような矩形波との乗算が起こっているのではないか、と思える。(図1.)


図2.1  AGC制御の効果 その1

増幅された信号が内部で飽和しているかもしれないので、TRによる電圧制御で利得を制御してみた。
利得可変があまり効かないのと、IC入力前のLC回路で過渡現象によるRF入力電圧歪みが発生しているのがわかった。(図2.1)


図2.2  AGC制御の効果 その2

ICの電圧制御ピンの電圧を、パラメータ解析で変化させてみた。
IC の電圧の変化で、利得も変化しているが、IC仕様がAGCレンジ40dB程度らしいので、微弱な信号受信には高感度で受信できても、すこし信号が強くなると検波信号が歪むと思われる。
このため、ダイナミックレンジを広げるには、前段にAGC付きアッテネータがあると良い解決になるかもしれない。

最も簡単な解決方法は、バリオームの手動で感度を絞るのも現実的にあると思う。

図3. 初段LC回路を取り、過渡現象の電圧振動を止めた場合のAGC特性

フロントエンド部のLC同調回路を暫定的に取り去り、LC回路の過渡現象による電圧振動の歪みを取り除いた。(図3.)
AGC電圧制御は非常に微小な電圧変化で利得が変わるのでアナログ回路での制御が難しい。
依然としてAF出力は歪んでいる。
第一 OSC電圧およびBFO電圧に線形比例でAF出力があがるはずなので、それらの電圧を下げると過剰な利得を下げて、歪みが無くなる?かもしれない

#この回路構成では、二段目のICへ与える局部発振器電圧が大きいため、
#電圧利得が過剰で飽和し、出力が歪む現象が起きています。
#解決法は、後ろの記事に記載しました。

このICは、DSW-II(US Small wander Lab.社製造販売の組み立てキット)という製品に採用されている。この製品ではAGC制御無しと、割りきった設計となっていた。
7MHzで使用すると電信の受信時、弱い信号は問題無いが、信号が強い場合に800Hz程度のビート音が「ポーポー」安っぽい音に聞こえるという違和感を感じた。

VGAというICが市場には出ていてダイナミックレンジは120dBにも達している。
しかし、使用できる周波数が現在のところ100KHzまでなので、こうした最新VGAをマイコン制御で使う場合、ダウンコンバートしてRF入力信号を100KHz以下にさげる必要がある。

国内通信機メーカはだいぶ以前に120dBのダイナミックレンジと超高感度の両立を実現しているが、VGAでこうしたAGC制御をマイコン制御でやることも可能か。

一方、Direct Sampling Methodと呼ばれるダイレクトコンバージョン受信機で、DC(0Hz)〜ベースバンド周波数域へ落とし、ADコンバータで直接信号をサンプリングして、マイコンやDSPで信号処理して、DAコンバータで、音声や画像、データを復元する方法が現在の流行にある模様。
(この方法は高い周波数VHFでは利得が低くなるため、RFアンプで利得を稼がないといけない厄介な課題もあり、全てがHappyとは言えない。LNA IC 2段 +32dB/82.5MHzのFM受信機設計例あり。RF増幅段のAGC制御も不可能。ここまで高い利得をRF初段でとるのは、システム全体の利得配分としてはたして適切かどうか・・・。)

1997年ころからポケットベルに採用されたらしいダイレクトコンバージョン受信機は、現在では、携帯電話やスマートホンでも採用されているかもしれない。(要確認)

AGC制御は、マイコン制御なら容易にプログラムで制御電圧を計算で出せるが、アナログ回路でやろうとすると非常に回路の実現が難しいと感じる。


Revision;
2017.Jan.31: 図3.と説明追記。
2017.Apr.09 :誤記訂正: ギルバートセル型乗算器を 2ペア 1個 内蔵し
2020.Sep.19:この設計は、AGC制御の予備計算実験であるため、電圧制御によるSA612/NE612, SA602/NE602の利得制御をトランジスタによる電圧制御を予備テストしており、フィードバック制御回路は入っていないのでご注意願います。

2017年1月21日土曜日

和音:ド・ミ・ソをFM変調で送信し、受信する:レシオ検波回路のFM復調動作

1. 和音 ド・ミ・ソの電気信号の発生方法

異なる振幅、異なる周波数であるド・ミ・ソの音を、マイクロフォンで電気信号に変換し、抵抗による加算回路、または、抵抗による加算回路のロス1/3倍を補正する3倍AF増幅回路をOPアンプで構成できる。

図1. 和音 ド・ミ・ソの電気信号の発生方法


2. 和音 ド・ミ・ソのFM変調波をレシオ検波回路で復調

上記で生成したド・ミ・ソの和音をFM変調し、それをレシオ検波回路で復調し、原音(ベースバンド信号)の和音が復元されることを確認した。(図2.)

図2. 和音 ド・ミ・ソのFM変調波をレシオ検波回路で復調


FM復調信号は、図2では、2つの出力端子があるが、中間端子からの電圧出力が、コンデンサからのDC電圧放電が無く、より安定している。
(緑色のビート音が、復調されたド・ミ・ソの和音)

課題:
このレシオ検波回路では、微小な信号10[mV]くらいになるとFM復調に難があり、ある程度大きな振幅電圧でないと復調できない特性が見られた。

付録:
和音 ド・ミ・ソのFM変調波をレシオ検波回路で復調 別例


高音質・ワイドダイナミックレンジ特性を持つベース定電流制御式BJT検波回路

1. 課題:

ラジオの電波電圧を高い利得で増幅すると、例えばOPアンプの±12V電源では、-12〜+12[V]と広いダイナミックレンジの高周波電圧増幅ができる。
こうした大振幅の高周波電圧を、従来式ダイオード検波回路に入力すると、低周波出力に大きな高調波電圧が現れ、音質が劣化する。

2. 解決方法:

BJTトランジスタのコレクタ電流を直線的に増加させる不飽和領域の電圧レンジを、できるだけ大きな定電流ベース電流を流すと、AM検波と増幅がリニア増幅できダイナミックレンジが大きく改善される。
その結果、歪みが大きく減少し、AMラジオの音質が大変良好になることが期待できる。


図1. に、僕の独自設計による「ベース定電流制御式BJT検波回路(仮称)」を示す。


図1  ベース定電流制御式BJT AM検波方式

3.効果

図2に「ベース定電流制御式BJT AM検波回路」の実現例と、図3に「従来式ダイオード検波方式」によるAM検波回路の実現例を示し、両者の性能を比較する。


図2  ベース定電流制御式BJT AM検波回路の実現例


図3 従来式ダイオード検波方式によるAM検波回路の実現例

このように、「ベース定電流制御式BJT検波回路」は、小信号から大信号の高周波AM電圧を広いダイナミックレンジで歪みなを少なくして(良質な音質で)復調できる。

これに対し「従来式ダイオード検波方式」は、ダイオード電流の指数関数特性に由来し、高調波歪みが増大し、音質が劣化する。


4. 多重周波数 和音の受信計算実験

ベースバンド信号にド・ミ・ソの和音を入力し、455[KHz]キャリアにAM変調をかけた信号を、「ベース定電流制御式BJT検波回路」で受信する計算結果を図4.1,図4.2に示す。

図4.1  和音 ド・ミ・ソの受信例

 図4.2  和音 ド・ミ・ソの受信例(FFT周波数軸拡大)

このように、多重の周波数と振幅成分を持つ和音のベースバンド信号が、良好に受信できる


5. 応用例

AM変調信号を綺麗な音質で聞けることを目指したOPアンプによる中波AMラジオの回路例を図5.1, 図5.2 に示す。
高感度、高音質の実現が期待できる。

混信を除去するには、9[KHz]帯域で、群遅延特性の位相変化が少ないフィルタを使ったIF増幅回路の実現が考えられる。


図5.1  OPアンプ(+20dB利得)ラジオへの応用

図5.2 OPアンプ(+40dB利得)ラジオへの応用

6. 対称型ベース定電流制御式BJT検波回路の性能見積もり

「ベース定電流制御式BJT検波回路」を、NPN,PNP TRで対称に構成し、2倍のダイナミックレンジ拡大ができるか性能を見積もった。
残念ながら、PNP型 TRが、大振幅入力で歪みを起こすので、期待する効果は得られなかったが、TR性能が対称に改善されれば、扱えるダイナミックレンジが2倍になる。

図6 対称型 ベース定電流制御式BJT検波回路

(Copyright) Noboru, Ji1NZL, Jan.2017

2017年1月3日火曜日

AM/DSB変調器(ギルバートセル乗算器(6TR構成)使用)

6石のBJT TR 2N3904を使ったギルバートセル乗算器[1]を使ったAM変調またはDSB変調器として動作できるAM/DSB変調器をLTspiceで構成し、PC上で設計段階での動作確認を行った。
問題なく変調が動作する設計事例[2]と、再現しない事例[3]を示す。

図1. AM変調とDSB変調のパラメトリック過渡解析 期待動作OK

図1. :
ベースバンド信号[1kHz], 尖頭電圧5[mV]のサイン波(正弦波)を使い、キャリア信号 RF 1[MHz],尖頭電圧5[mV]を入力。
ベースバンド信号電圧を底上げするDC電圧を0.0[mV]の時にDSB変調波が出力され、5[mV]の時に、変調指数1.0のAM変調波電圧が生成されることを確認した。
フィルタを使わなくても、スプリアス成分の大変少ない質の良い電波が生成された。


図1.1. AM変調とDSB変調のパラメトリック過渡解析 期待動作OK

図1. 1:
図1.1のFFT解析結果周波数軸を,キャリア周波数1[MHz]近傍で拡大した。
LSB波、USB波、キャリア信号が問題なく出力されている。

図2.1. AM変調の過渡解析 期待動作OK

図2.1. :
図1.1で、AM変調の場合についての結果を示した。
ベースバンド信号[1kHz], 尖頭電圧5[mV]のサイン波(正弦波)を使い、キャリア信号 RF 1[MHz],尖頭電圧5[mV]を入力。
問題無く、電波の質の良い、AM変調波出力が得られた。

図2.2. AM変調の過渡解析 期待動作OK

図2.2. :
図2.1のFFT解析結果周波数軸を,キャリア周波数1[MHz]近傍で拡大した。
LSB波、USB波、キャリア信号が問題なく出力されている。



図3.1. DSB変調の過渡解析 期待動作OK

図3.1. :
図1.1で、DSB変調の場合についての結果を示した。
ベースバンド信号[1kHz], 尖頭電圧5[mV]のサイン波(正弦波)を使い、キャリア信号 RF 1[MHz],尖頭電圧5[mV]を入力。
問題無く、電波の質の良い、DSB変調波出力が得られた。


図3.2. DSB変調の過渡解析 期待動作OK

図3.2. :
図3.1のFFT解析結果周波数軸を,キャリア周波数1[MHz]近傍で拡大した。
LSB波、USB波が問題なく出力されている。
微小なキャリア信号電圧が見られるが、実用上問題ない信号レベル。



課題:
(1)入力電圧のダイナミックレンジの確認
(2)AC特性・周波数特性の確認(利得と上限周波数、位相特性)
(3)BIAS電圧の設定と差動電圧出力取り出しの回路構成と動作確認


----------------------------------------------------------------------------------------------------------

以下は、AM/DSB変調が再現しない事例
いずれもほとんど変調がかかっていない。(いわゆる無変調)

原因:
オリジナルのギルバートセル乗算器は、入力ポート2個とも、±差動電圧を入力してアナログ乗算回路を構成するが、この回路図はおそらく記載ミスで、回路図が差動電圧を入力する構成になっていないことが判明した
また、ギルバートセルのオリジナルは、下にエミッタ電流を吸い込む定電流源があるが、これを抵抗ですませている課題がある。(これはワイドラー(Widler)定電流回路で実現可能。)

図4.1 「無変調」状態の動作例 動作NG

図4.2 「無変調」状態の動作例   動作NG

図4.2 に周波数軸を拡大し、1[MHz]近傍をみると、極めて弱い微小な変調信号が見えるが、ほとんど変調はかかっていない。

参考資料:
[1] [2] トランジスタ技術 2016 LTspice連載記事 「ギルバートセル乗算器」

[3] インターネット上の教育サイト;
     "Basics of the Gilbert Cell | Analog Multiplier | Mixer | Modulator"

ブログ記事目次へ戻る