2015年6月29日月曜日

各種DBM(Double Balanced Modulator)の特性比較(FETによる増幅型DBM/ダイオード式DBM/アナログスイッチ74HC4066モデルDBM)

1. FETによる増幅型DBM の特性

2SK241の増幅型DBMは、バランスが崩れ、入力されるRF信号が、ミキサ出力に漏れて、OSCサイン波信号と合成された歪みが発生している。回路図上はバランスしているように見えても、本シミュレーションでは良いDBM特性は得られなかった。

2. ダイオード式DBMの特性



ダイオードDBMは利得ロスが大きいが、前述のFET増幅型DBMより、純度の良い中間周波数電圧出力が得られた。

ダイオード式DBMは、ダイオードがリング上に回転するように回路図上から電気的な完全平衡状態をイメージしていたが、意外に広帯域の細かいノイズ発生が見られる。


3.擬似アナログスイッチ74HC4066モデルによるDBM特性







ここの74HC4066モデルは、かなり良くそのアナログスイッチ特性を再現できることがわかっている。しかし、パルス性ノイズの発生が気になるところ。このパルスノイズはBPF(ハンドパスフィルタ)を使えば、中間周波数出力電圧の特性を改善できることも判明している。アナログスイッチ74HC4066のモデルを作ることは非常に難しいこともわかった。
実回路での特性確認は重要である。

2016/3/20:
追記:
 3.で発生しているパルス性ノイズの発生をできるだけ小さくし、性能向上を図った改良回路を以下にリンクしました。

Improving quality of my Analog Switch DBM / アナログスイッチ使用DBMの改良



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2015年6月27日土曜日

ダイオードDBMとオペアンプを使ったスーパへトロダインラジオの設計

ダイオードDBMとオペアンプを使ったスーパへトロダインラジオを設計してみた。

複数のトランジスタを使ったスーパへトロダインラジオ回路設計をspiceでやってみると、異常発振が起こったり、局部発振回路が発振しないなど、試行錯誤の実験で体験するような様々な回路の不具合発生をコンピュータ上でも経験できた。

結果的には、現代風にダイオードDBMとオペアンプを使った回路が安定した動作になった。




図2 受信信号の各段での増幅利得の比較


OP AMPは、デバイス特性上、原理的に高い周波数の増幅に難があるが、2MHz程度までは増幅アンプとして十分利用可能なので、オペアンプ最大メリットの理想に近い直線性を持った広いダイナミックレンジの増幅ができる。

(中間周波数として)高周波 455KHz程度の周波数ならば、OPアンプを使うことで、トランジスタ、FETでは不可能なより高感度、低い歪み、広いダイナミックレンジのIFアンプを構成できる。

また、ダイオードDBMを使うことで、Mixer回路、OSC回路、IFアンプ間の電気的結合が疎になり、各回路の独立した動作安定性が格段に向上する特性が確認できた。

この結果、従来式ヘテロダインラジオに見られるピーピー、ギャーギャーというような異常動作が容易に無くなり、設計も製作・製造も楽になる効果が得られることが分かった。


[Rev.]
Rev. 0.1: 2016/11/26 ; 図2とその説明文を追記


2015年6月20日土曜日

包絡線検波で起こる電気的現象の解析/spice設計文化と従来式試行錯誤法の間にあるカルチャー・ショック

従来までは「オペアンプで理想ダイオードを構成すると、AM変調信号から(従来まで言われてきたところの)包絡線信号を取り出すことができる。ゲルマニウムラジオ(Crystal Radio)も、包絡線検波でAM変調信号を復調する。」と言われてきた。

では、実際にオペアンプとローパスフィルタで包絡線検波を実現してみると、何が起こるかを検証してみる。

下の回路図は、オペアンプを使用した理想ダイオードとローパスフィルタで構成した検波回路と、ゲルマニウムラジオやトランジスタラジオのダイオード検波回路の出力信号をLTspiceで解析したものである。

僕達が長い間(おそらく半世紀以上?)読んできた専門書らラジオ月刊誌に書かれた内容は本当に正しかったのだろうか?

21世紀近くになり、spiceが登場することで、このようなコンピュータ上の数値演算で、電気・電子回路上で何が起こっているかを、回路を組み立てなくても机上で検証、検討できる時代になっていた。

・・・・が、僕を含め、専門書や教育上のミスを思い込んだに状況を改善するには多少の時間とカルチャーショックを味わうことになると思う。
(ある程度の試行錯誤法は必要としても、すべて精神論で、開発期限に到底間に合わない長時間の実験で、しかも試行錯誤法に頑なに固執するあまり、迷宮から永久に抜けられない悲惨な事例が現実に起こっています。)

いつまでも昔の知識を信じていると、永遠の迷宮から脱出できないまま、日進月歩と言われるデバイスの進歩に取り残されてしまいます。
日本の教育、技術は遅れているのではないだろうか?と心配です。
世界の先進的技術進歩へ目を向けたいと思います。
 




注意:上図中、正の電圧波形を取り出すオペアンプNJM4580の理想ダイオード特性には、同オペアンプのオフセット電圧誤差が現れ、誤差を含む波形であることが判明しました。

オフセット電圧誤差分をキャンセルする工夫が必要です。この点、上図は現在そのオフセット調整機能が含まれていません。しかしながら、現時点では、従来言われてきたダイオードによる包絡線検波の動作を確認できないことに変わりはありません

理想ダイオードではマイナス側の電圧波形がカットされて情報が半分失われます。これに対してダイオード検波回路は、マイナス側の電圧波形がカットされずに、マイナス電圧側の情報が失われずに出力に可算されています。この記事内容はさらなる検討が必要です。
(加筆:June 29, 2015)

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PS.
オペアンプの内部回路を、トランジスタで組んで、トランジスタによる能動負荷の手法等をアナログ回路ICを構成しようとしたところ、spice解析計算中に、異常発振など、回路動作が極めて困難な複雑な動きを見せ、これを実回路で組みながら完成させようとしたら、恐ろしく長期の工数のロストが起こることが実際のspiceを使った解析経験で、嫌と言うほど思い知らされました
回路の適切なspiceモデル設定のノウハウを知識と設計経験で集積することが大変重要と思います。
従来式試行錯誤の設計手法が明確で無いまま、見通しの見えない実験を続けるのは、設計手法としては、ずいぶん過去の時代にオワコンだったと痛感しています。(2020/11/17 ) 

2015年6月14日日曜日

ゲルマニウムラジオが聞こえる仕組みについての解析/日本の「包絡線検波理論」の見直し

1. 無変調キャリア 600KHzのラジオ電波を受信する動作
 中波ラジオ放送局が無変調の搬送波600KHzを送信し、1960年代の古い技術資料にみられるゲルマニウムラジオ回路で受信すると、検波用ダイオードを通過した信号は、受信された搬送波と同じ周波数のサイン波が、負荷抵抗 1Mオームに現れる。


負荷抵抗1MΩ両端には、クリスタルイヤホンを接続するが、クリスタルイヤホンの抵抗値が大きいため、この回路図では記述を省略している。負荷抵抗両端に現れる電圧は、プラス、マイナスの電圧を振幅するサイン波である。古来より(私の調査では1965年以前から現在2015年まで)、検波ダイオードを通過した信号は半波整流され、サイン波のプラス側の脈流電圧が現れると考えられてきた。

しかしながら、LTspiceのシミュレーションでは、検波ダイオードの出力電圧波形は、マイナス側の電圧がカットされることはなく、出力電圧は綺麗な600KHzのサイン波が出力されている。

このシミュレーション結果が正しいならば、約50年もの間、ダイオード検波が半波整流をして脈流を出力するという考え方に誤りがあったことになる。

回路1.では、意図して出力回路のコンデンサを接続していないが、ゲルマニウムラジオではこのコンデンサが重要な検波出力動作に関わっていることが以降の記事でわかる

2. ここの回路は、1.と同一の回路で、ゲルマニウムラジオの出力電圧を、横の時間軸を長くして見たものである。













出力電圧は、±15[mV]のサイン波で、1.と同様に、出力されるサイン波は、マイナス電圧がカットされず、サイン波600KHzが出力され、半波整流動作は起こっていないこの現象も、包絡線検波動作が発生していないことを示している。


3. 1,2と同一回路で、AM変調波を受信する動作














放送局から、キャリア(搬送波)600KHzに、低周波信号200[Hz]でAM変調をかけた電波を受信した場合、負荷抵抗には、受信電波と相似した周波数波形の被変調波が現れる。1,2と同様に、ダイオードによる整流動作は起こらず、マイナス電圧側がカットされることはない。

4. この回路は、1,2,3の回路中のダイオードの向きを逆にしたものである。




負荷抵抗には、受信電波と相似の被変調波が現れる。1,2と同様に、ダイオードによる整流動作は起こらず、マイナス電圧側がカットされることはない。

3,4 を比較してみると、高周波600KHzと変調波600.2KHz、599.8KHzは、ダイオードで減衰はするが、受信した高周波信号はダイオードを貫通しており、整流動作が起こらないことがわかる。

このことから、ダイオードでは従来言われている包絡線検波の現象は起こっていないことになる。

5. ここでは、回路4.の負荷抵抗と並列に、コンデンサ0.001uFを接続した場合の、受信出力波形を示す。





出力電圧は、低周波変調信号200[Hz]が、振幅 0 〜 +6[mV]のサイン波として現れている。
従来言われてきた検波動作による脈流は出力されていない

これは、コンデンサ0.001uFにダイオードが搬送波を整流した直流電圧 +3mVが充電され、そのDC +3mVのオフセット電圧を中心として、変調波サイン波信号200[Hz] -3mV 〜+3mVが重畳され、振幅 0 〜 +6[mV]のサイン波が出力されていることを意味する。

すなわち、ダイオードの中では、搬送波信号と2つの変調波信号が貫通し、ダイオードの中で混合されて、キャリア成分がDCオフセット電圧+3mVとして充電され、サイン波の重ね合わせ、周波数変換現象が起こり、200[Hz] 変調信号のサイン波、振幅 0 〜 +6[mV]が、復調されたことを意味している。

6. この回路は、回路5.のダイオードを逆方向に接続したものである。












出力電圧は、低周波変調信号200[Hz]が、振幅 0 〜 -6[mV]のサイン波として現れている。
動作原理は、5.と矛盾せず、ダイオードの中では、搬送波信号と2つの変調波信号が貫通し、ダイオードの中で混合されて、キャリア成分がDCオフセット電圧 -3mVとして充電され、サイン波の重ね合わせ、周波数変換現象が起こり、200[Hz] 変調信号のサイン波、振幅 0 〜 -6[mV]が、復調されたことを意味している。

ダイオードの直流特性は良く知られ、専門書にもウェブ記事にも良く書かれているが、交流特性、特に高周波での挙動は、現在でも良く知られていないと考えられる。
残念ながら、現在でも誤ったままの文化が継承されている記述や説明しかみあたらない。

上記、ダイオード内部で高周波通過時に起こる周波数変換動作は、ダイオードの指数関数特性に強く関係して発生しており、2種類周波数以上の高周波電圧成分が入力された場合に、その差分周波数が現れる。これはダイオードの高周波特性の特徴であるが、何らかの不明の原因で、現在でも殆ど知られていないようである。

Noboru, Ji1NZL




2015年6月13日土曜日

Can 1 diode crystal radio transmit AM/RF signal to the air if we talk to crystal earphone ?

I read the story that told us "1 diode crystal radio can transmit AM RF signal if we talk to crystal earphone."

I tried to simulate to check if the story is correct or not.

The simulation outcome is in the negative.
See the following figures of outcome of LTspice simulation.

(1) When we talk to crystal earphone, RF/AM wave is not transmitted to antenna.
]]
  Look at the "ANT" voltage. There is AF (audio frequency) that derived from crystal   earphone but  there is no RF wave on "ANT" terminal side.
   
(2) When we use RF signal of carrier 600KHz from outside (antenna)

     We cannot modulate AM on the carrier 600KHz comes from outside (antenna).
     Voice from crystal earphone as audio frequency does not ride on 600KHz.
     

Note:
 Crystal earphone has very high sensitive performance.
It can sound audio signal even though it is very weak or very low voltage sound.
It also can be used as high sensitive performance microphone.
( But tone / audio characteristics is not always good.)

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2015年6月2日火曜日

I designed 1 shotkey diode crystal radio

I designed 1 shot-key diode crystal radio

This simulation result for 1 shot-key diode crystal radio does work by the latest theory of the spice technology.  Traditional 1 diode crystal radio invented in early 20 century and it worked on the different theory that called as "Envelope demodulator".
If this simulation here is correct, I'm afraid that there may be wrong understandings of 1 diode radio works so called "Germanium Radio" or "Crystal radio" for about a century since 1925.

Seeing is believing.

You can simulate it by LTspive IV( Linear Technology Inc.).
Here is .asc file for LTspice.

https://drive.google.com/file/d/0Bz_k52236Ymuc2RvNXZuVVRqRWs/view?usp=sharing

on my Google Drive.

Principle of 1 Diode AM radio (New Theory of how to work crystal radio)
(AM : Amplitude Modulation)

(1)AM broadcasting station sends Carrier 600 KHz Sine wave, modulated USB(Upper side band ) sine wave 600.2KHz and modulated LSB (Lower side band) sine wave 599.8KHz.
(2) This radio's LC circuit is tuned on 600KHz.
(3) These 3 frequency Sine waves are mixed on the shot-key diode BAT54 and modulated audio 200Hz Sine wave is generated.
(4) Carrier Sine wave 600KHz is converted to DC voltage and is charged on the 0.001uF condenser. This DC voltage is constant + offset voltage.
(5) Extracted 200Hz audio signal of Sine wave rides on the DC offset voltage of the condenser 0.001uF. This Sine wave 200Hz is never cut by the diode because it rides on DC offset of (4).
(6) Hence we can hear 200Hz Sine wave from crystal earphone that is written as 1Meg ohm register.



APPENDIX:

A. Crystal Radio simulation by LTspice IV / Transient analysis and FFT analysis

 Crystal Radio simulation by LTspice IV / Transient analysis and FFT analysis

Note; 
I" d like you to re-consider the difference of the works of traditional diode / peek detector theory, and I'm happy if you find out the true works of it.

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