2015年8月26日水曜日

【発見】ラジオのLC並列共振回路で発生し得る電波振動現象

Noboru , Ji1NZL

ラジオのLC並列共振回路で発生し得る電波振動現象とその解決方法を発見しました。


このように約600[kHz]のLC共振回路を、コイルのQを100以上と高めに構成すると、受信したAM放送の受信電圧がLC共振回路端子で歪む現象を発見しました。

従来まで『LC共振回路のコイルはQが高いほど良い。』と書籍、文献、ネット記事に書かれてきました。
このシミュレーション計算は、こうした従来のコイルのQは高いほど良い、という考えかたが必ずしも正しくないことを示しています。



暫定策として、LC共振回路への結合コンデンサを、10[pF]からその100倍の1000[pF]にしてみました。するとLC共振回路で発生した歪の電圧波形は、殆ど見えなくなりました。
(ただし、これは本質的解決策ではありません。)


回路の動作を外から見て、その伝達関数を推定する方法として、ステップ信号を入力し、その出力を見る方法が既に知られています。ここでは、最初の図での歪の発生したLC回路にステップ信号として、パルス波を入力してみました。

このように、LRC回路の過渡現象により、パルス波を入力しただけで、約600[KHz]の電圧振動が現れました。
受信したAM信号を歪ませたその正体を捕まえました


今度は、LC回路とAM放送電波の電圧源を結合するコンデンサを10[pF]から1000[pF]に変更した回路に、ステップ信号を入力してみます。

すると現れた過渡電圧の周波数は、受信周波数600[kHz]から大きく周波数の離れた約300[kHz]に電圧振動が現れました。
このため、受信電波600[kHz]へ歪が非常に少なくなることも分かりました。



従来は、高周波増幅回路が不安定で発振を起こしてしまう場合は、経験則としてコイルに並列に約10[kΩ]程度のダンピング抵抗を入れて実験的にその抵抗値を定めるという方法が取られてきました。

私は、今回本対策として、そうした経験則に頼らず、コイルのQを下げるために、それに直列接続する小さい値の抵抗で、理論的に完全に押さえ込む方法を考えました

新しい解法は次の通りです。

(1)RLC回路の過渡現象を解析するために、電荷qに対する二階線形微分方程式を立てます。
(2) (1)の微分方程式を解くための特性方程式の二次元方程式を立てます。
(3) (2)の特性方程式の解の判別方程式をDと置きます。
(4) D >0 が上記電圧振動を抑える条件式なので、D >0 となるRの条件を計算します。


D >0では、余分な電圧振動は起こらない、なめらかな減衰電圧の解が求まるはずです。


手計算はかなり複雑になりますが、解はDの条件に関して3種類の電圧式が求まるはずです。

追記:
・VHFのミニパワーアンプを製作すると、回路図通りに配線してもさっぱり増幅が起こらない、という現象を経験する一方で、HFのミニパワーアンプを製作すると、増幅しているが発振気味になる、増幅スプリアスが多いという経験をしています。

後者の発振現象に対し、従来は、経験的に次の解決方法が使われてきました。

(1)入力LC共振回路に並列に10kΩ程度の抵抗を接続してコイルのQをダンプする。
(Qを下げる。)
(2)トランジスタのベースに10〜20Ωの抵抗またはフェライトビーズ(FB-101)を直列に入れる。
(3)同調型アンプ方式に代わり、広帯域パワーアンプ方式にする。
 出力負荷には、フェライト素材の磁性体にキャンセル巻きのコイルを使用する。
(4)RFCは、パラスチックサンプレッサと呼ばれる100-200Ω程度の抵抗にコイルを巻いたものを使うか、フェライトビーズFB-225を使う。

現在のところ、方式(3)が最も安定な高周波パワーアンプの性能を引き出せています
一方、方式(1)(2)(4)の対策に対応する発振原因は、現在まで解明されていませんでした。

この記事で扱ったLC共振回路で過渡現象により発生するサイン波の発生現象は、不安定な増幅状態にあるアンプを発振させる、キック・引き金になっていることを示しています。

送信開始操作と同時に、高周波パワーアンプが発振を開始する場合は、こうしたLC同調回路で起こる電圧振動を、前述の方法で止めれば良いことがわかって来ました。
(Dec.5, 2015)



2015年8月25日火曜日

単電源動作対応 オペアンプによる位相シフト回路の設計 /単電源動作の課題提示

単電源動作対応 オペアンプによる位相シフト回路の設計
Noboru , Ji1NZL 

オペンプによる位相シフト回路をネット上で見つけました。
日本で既に特許申請されていました。

2電源式 オペアンプを使った90度位相シフト回路を構成し、LTspiceでシミュレーションしてみました。
ここでの過渡解析は、約16KHzのサイン波を入力し、90度位相をシフトした信号を出力させたものです。

オペアンプには、比較的高い周波数まで使える NJM4558 を採用しました。
このように、90度位相をシフトした信号が綺麗な歪の少ないサイン信号が得られることが確認されました。


この位相シフト回路の優れた点は、このように、非常に広い周波数帯域で、利得が0dBの平坦な利得が得られ、かつ、中心周波数 f=1/(2*π*R*C) [Hz] の周囲で、0度〜360度の位相シフトを得られることがあります。
SDRのMixerや、位相変調、位相復調等、様々な応用が考えられます。



この回路は、上記、位相シフト回路を単電源(+12Vのみ)で動作できるように構成したものです。(※1)
多くのオペアンプ応用回路は、単電源で利用されるので、便利に使えると思います。
ただし、単電源動作にすることで、利得が減るので、その利得を調整できるように抵抗による利得調整機能を加えて、構成しました。



これは、今後の課題になりますが、利得補正した分、広帯域で平坦だった利得特性が平坦でない周波数領域が現れます。
AGC機能を加えれば、この課題も解決できる可能性があります。
ちょっともったいない気持ちもあるのですが、公開しました。


※1: 
仮想グランドはVcc/2[V]であれば良いので、図のようにOPアンプ一個を使ってまでVcc/2[V]を得るのは得策ではないと思います。(単電源用に設計されたOPアンプ採用が賢明です。)
参照した教育記事(LTspiceを扱った国内のサイト)の案内に従った結果、こうした結果を招きました。

抵抗分割で仮想グランドはVcc/2[V]を得るほうがコスト的に有利ですし、教育サイトや高価な専門誌であっても、その教育案内を鵜呑みにすると、こうした設計ミスに近い結果を招くので十分にご注意願います。

またAC電圧だけでなく、DC電圧も増幅できるのがOPアンプの電気的特性の優位点ですので、元々±Vcc動作で設計されたOP アンプを単電源で動かすのは設計思想として適切ではないのではないか?、とも思います。
反省課題として、記事は修正せずにおきます。

ここで参照した教育サイトは、設計上の不具合や事実と異なるシミュレーション結果が、その後も次々に発見されています。
そうしたプロの技術者や先生方も、過去の誤った電子工学教育を受けたネガティブな影響もあると思われます。

現在出版されている専門書でも、多くの理論ミス、設計ミスが見られ、修正がなかなか難しい状況があるのかもしれません。

(学問としての基礎的見直しも必要かもしれません。特にDC特性だけで半導体特性を論じている書籍は、誤った知識を得る結果になる、と僕は考えています。
(例:BJTトランジスタの電位差は0.6〜0.7[V]として、DC計算だけで交流・低周波アンプを設計している場合などは、世界標準から外れたアバウトすぎる、実務には使えない設計法と考えています。)
AC/RF特性(過渡計算方法、AC位相利得計算)を数式で記述し、実計算できる理論書の出版や設計手法の確立が重要課題と思います。

1/11, 2017

2015年8月24日月曜日

Designed a traditional "Reflex Radio" by using LTspice (中学生 技術家庭科 レフレックス・ラジオ)

I designed a  traditional "Reflex Radio" by using LTspice.

I learned the radio so called "Reflex Radio" when I was a kid.
It worked well. It is very well-designed radio.

Fig.1 Reflex Radio (1BJT TR + 2 Diodes) for 9V work 

I tried to design it by using LTspice IV (developed by Linear Technology inc.).
The simulation is not always easy but I managed to design it.
It was proved this radio had very good performance even on LTspice.
Figure above is an example of successful work of the radio.


I tried to design the reflex radio which works using 1.5V battery.
It works OK with very low powered consumption.



Followings are failure examples of design.


---- > Output audio in the radio is unstable.


---> Abnormal oscillation occurs in this failed design. 


Following figure is an example of this reflex radio used in the education for junior high school student in 1977.
Copyright 1977 by the creator of the tutorial book. 
I found it by the Google image search. 


Noboru, Ji1NZL

---Revision---
0.1 May 24, 2016 Added a original schematic of the reflex radio.
0.2 Dec. 18, 2016 Added a new designed reflex radio for 1.5V battery work 

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Direct Digital Sampling Method ( ICOM IC-7300)

New method of transceiver are developed by ICOM company.


This transceiver uses "Direct Digital Sampling Method".
There is no frequency conversion mixer.
It can reduce noise generated in the mixer.

"Direct conversion Method" has been well known type of design used in latest cell- phone or pocket-bell since end of 20 century.

"KX3" is one of Software Defined Radio that uses DSP based on "Direct conversion Method".

IC-7300 is also one of Software Defined Radio that uses DSP based on "Direct Digital Sampling Method".

Noboru, Ji1NZL


2015年8月23日日曜日

トランジスタ使用のコルピッツ発振回路が発振しない原因

トランジスタを1石使ったコルピッツ発振回路が、LTspiceのシミュレーションで期待した発振ができず、発振がすぐに停止してしまう現象に悩まされました。

この問題は、LTspiceの".tran" Spice Directive に、計算の刻み値を指定しないと、
Endtime がデフォルトで計算の刻み値として計算されてしまい、発振が途中で短時間で止まってしまうように見える、(期待しない)計算結果
を得てしまうことがあることが判明しました。
このことは、LTspice Group のから教わり、初めてその原因がわかりました。
( Thank you, Andy.)

下の例のように、".tran" Spice Directive に、計算の刻み値を明示して指定すると、この不具合を解決できました。








2015年8月22日土曜日

ダイポールアンテナを集中定数 等価回路で過渡現象解析/7MHz DPは21MHzでは使えません!!

7MHz用逆V型ダイポールアンテナを集中定数の等価回路として考え、過渡現象解析してみました。


7MHz用逆V型ダイポールアンテナを7MHzで使用する場合の過渡解析です。
私は、サイン波電圧電源 V1が、給電点と考えています
 アンテナ中央の給電点で電流が最大になっていることが前回の検討でも判明しているので、その電流や電圧が時間的にどのように変動しているかを捉えてみたかったのです。




・・・7MHz用逆V型ダイポールアンテナを21MHzで使用する場合の過渡解析です。

今になって新たに発見したことは、21MHzで動作させると、このダイポールアンテナのコンデンサ成分は、3.6pFと非常に小さな値となり、インダクタンス成分と、高周波抵抗成分が合成インピーダンス成分の主流なものになる性質があるらしいことがわかって来ました。
3.6pFは、VHF以上では無視できない容量ですが、短波帯ではあまり影響の無いほど小さい値です。

謎:
アンテナにおける高周波抵抗成分が大きくなる現象は、定性的に何の意味を持つのかが新たな謎です。もちろん、デジタルテスタで図れる類いの性質のものではありません。

この抵抗成分は、現在でも私達が教え込まれた共振周波数 f=1/{2*π√(L*C)} [Hz]を離調させるほど大きな値です。

実は、RLC過渡解析を微分方程式を解く計算過程で、正確には、共振周波数 f=1/{2*π√(L*C)} [Hz]とはならない、別の式が存在するとわかっていますが、このことはあまり良く知られていないようです。

共振周波数 f=1/{2*π√(L*C)} [Hz]は、コイルの高周波抵抗成分が完全に0である時しか成立しないのですが、世の中では、未だに、共振周波数 f=1/{2*π√(L*C)} [Hz]の式しか教えられていない人が多いのではないでしょうか

訂正:(2020/11/14 )

アンテナ共振周波数 f=
1/{2*π√(L*C)} [Hz] は、アンテナ・インピーダンス中の抵抗成分R[Ω]により、共振周波数は変化しません。
しかし、入力される高周波信号に対する過渡現象として、直列RLC回路が 
f' =1/(2*π){1/√(L*C)-(R/2L)^2)} [Hz]  の正弦波振動波が現れ、入力される高周波信号とのビート現象が発生します。
この結果、受信機には濁った音のような不可解に感じる電波が受信される現象が起こります。
(無線機の実機で確認済の現象です。)

なお、「7MHz用1/2波長ダイポールアンテナは、3倍高調波関係にある21MHz でも使える」と僕は教わりましたが、21MHz ではSWRが上がり3.0を超え、送信用には使い物になりません。
上記解析のように、高周波抵抗成分Rが、約130Ωにもなるので、先輩方の教えは事実と異なるものでした。

9/6/2015
部品の大きさが、波長に対し大きい状態では、集中定数のインピーダンスとして解析ができなくなる。
(1)高い周波数 GHz などでは、部品が波長に対し大きくなってきて、部品の大きさを無視したインピーダンスでの解析はできない。
(2)低い周波数 MHz の場合、部品としてのアンテナは、波長に対し大きくなっており、アンテナの大きさを無視した集中インピーダンスとしての解析はできない。
従って、こうしたケースでは、進行波、反射波、一様ではない特性インピーダンスを扱える解析方法が必要で、これがSパラメータによる解析である。

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中波ラジオ (LED雷検出機能付き) の設計

今年(2015夏)は雷が多く、瞬間的停電(瞬断)が多いので、電気機器類等を守るため、LED雷検出機能のついたラジオで備える準備を始めました。


LM386 オーディオアンプICの出力に、LED電流を流し込む方法にしました。
雷検出器として動作させる時は、ラジオ周波数の受信をやめて、同調を空き周波数にずらして使います。

最初は、LED雷検出機能だけの回路でしたが、もったいないので、中波ラジオとしても使えるようにしました。

雷が近づけば、LEDがチカチカ光る設計としました。
この信号で雷接近時に、落雷、誘導雷から電気機器を事前に守る各種自動リモコン制御を考えています。

2015年8月17日月曜日

実在する虚数 その後 サイン関数の持つ新たなる顔

Maximaの利用環境を設定している途中で、Maximaのデモソフトの中に、サイン関数の立体構造を描いたものがあるのを偶然見つけました。新たに見えてきたサイン関数の今まで知らなかった姿が現れました。これは自分にはかなりのカルチャーショックです。


高校一年生で習ったサイン関数の一周期分をMaximaで描いてみました。これは良く見慣れたものです。



Maximaのデモソフト中にあったサイン関数の、実数部と、虚数部のグラフです。
サイン関数の変化は、実数部、虚数部、共に複雑な3次元構造をしています。

Maximaにより、自分が知らなかったサイン関数の別の顔が目の前に出現しました。


【発見!】アンテナは、使用する電波の周波数により、インダクタンス値、キャパシタンス値、(高周波)抵抗値が変化する。

7MHz用に製作したダイポールアンテナは、7MHzで送受信に使用でき、かつ3倍の周波数にあたる21MHzにも同調し使えると言われて来ました。
実測すると、約21mの長さの半波長ダイポールは、長さを調整することで、7MHz帯においてVSWR=1.0に近い値になりました。
一方、同じアンテナは、21MHz帯では、VSWR実測値は 2.0〜3.0を簡単に上回り、使えないことは無いのですが、反射電力が多く送信時には問題がありました。

この現象では何が起こっているのか? 私は、仮説として、『アンテナは、使用する電波の周波数により、インダクタンス値、キャパシタンス値が変化する。』と考え、モーメント法を使った著名なアンテナシミュレータMMANAと、電子回路シミュレータLTspiceで、この仮説が正しいかどうか、検証してみました。

その結果、この仮説はどうやら正しそうで、実測とも合うという結果を得ました。



これは、7MHz 逆V型ダイポールアンテナの全景と、その電流分布をMMANAで使用周波数=7.05MHzの条件でシミュレートして描かせたものです。このように、水平ダイポールのインピーダンス73Ω(理論値)は、逆V型に角度を持たせ、その角度を調整すると、インピーダンスを50Ωに整合でき、特性インピーダンス50Ωの5D2Vなどの同軸ケーブルを接続すると、VSWR≒1.0でほぼ理想的条件で大電力の送信アンテナにも使用できるようになります。これは実測と一致しました。




これは上と同じ7MHz 逆V型ダイポールアンテナの全景と、その電圧分布をMMANAで使用周波数=21.20MHzの条件でシミュレートして描かせたものです。青線の電流分布を見ると、アンテナ中央部で最大、アンテナ末端で最小となり、かなり良く同調している様子が見られます。




このグラフは、MMANAで計算した7MHz半波長ダイポールの7.05MHzでのインピーダンス抵抗成分R、リアクタンス成分jXです。同アンテナは、7.05MHzにて同調し、R=46.99823[Ω], jX=0[Ω], L=18.7[μH],C=27.2[pF]と計算結果が出ました。


このグラフは、MMANAで計算されたR,L,C直列回路を、5MHz〜9MHzの範囲で、利得値と位相値を描かせたものです。
MMANAで計算されたR,L,C値によるR,L,C直列回路は、7.05MHzにて最大利得0dBとなり、位相が大きく変化する位相グラフの変曲点を通過し、うまく同調していることがわかります。





このグラフは、MMANAで計算した7MHz半波長ダイポールの21.20MHzでのインピーダンス抵抗成分R、リアクタンス成分jXです。同アンテナは、同調周波数は約22MHzまで離調し、R=128.358[Ω], jX=0[Ω], L=14.4[μH],C=3.6[pF]と計算結果が出ました。

同調周波数が、約22MHzまで離調し、高周波抵抗成分R=128.358[Ω]では、同軸ケーブルの特性インピーダンス50[Ω]から大きくずれてしまいます。このため、インピーダンス整合回路を使わないとVSWR≒6と高く、大電力送信はできません。




このグラフは、MMANAで計算されたR,L,C直列回路を、15MHz〜30MHzの範囲で、利得値と位相値を描かせたものです。
MMANAで計算されたR,L,C値によるR,L,C直列回路は、21.987MHzにて最大利得 約-2dBとなり、位相が大きく変化する位相グラフの変曲点を通過し、21.200MHzからかなり離調していることがわかります。

実効利得は、MMANAにて約5dBと計算され利得は申し分ない値です。
しかし、同調周波数ずれと、抵抗成分が100Ω以上となるので、送信用にはインピーダンスマッチング回路は必須となる、という結果を得ました。

以上のように、従来言われてきた7MHz用半波ダイポールは、インピーダンスマッチング回路を使用するという条件付きで利用は可能であること。

『アンテナは、使用する電波の周波数により、インダクタンス値、キャパシタンス値が変化する。』という私の仮説は、それに加えて(高周波)抵抗値も変化するという結果を得ました。
(このアンテナの性質は、分布定数回路として公知のものですが、学校教育レベルでは扱われていない場合が多いようです。同じ問題は、非常に高い周波数SHF以上で、部品サイズが波長の長さに近づくときに起こるようです。詳細は分布定数回路を調査ください。)




Revision 

0.1 : 06/19/2017
 アンテナの共振周波数式の誤りを削除
誤り:f=1/(2*π)*√(1/LC)-(R/2L)^2) ...この式は、過渡現象でRLC回路から輻射される電波の周波数

正:アンテナの共振周波数: f=1/(2*π)*√(1/LC)

長波ダイレクトコンバージョン受信機 LF Receiver (135KHz) とコウモリ受信機(バットディテクタ)の設計

長波ダイレクトコンバージョン受信機 135KHz受信対応 を設計しました。
Noboru , Ji1NZL

LTC1799をVFOに用い受信周波数を調整でき、アナログスイッチHC4066でバランスト・ミキサーを構成しました。

参考資料:
(1) Cosy Mutoさん設計:バットディテクタ (こうもり受信機)
(2) Linear Technology company LTC1799 DataSheet
(3) LF(長波)受信用バーアンテナ資料(秋葉原のお店)
(4)インターネット上のSDR資料各種

謝辞:
本受信機設計について、次の皆様にはお世話になりました。ありがとうございます。
(1)バットディテクタ技術を公開提供されているCosy Muto様
(2)LTspic と LT1799データシート資料を提供されているLinear Technology社様


追記:9/5/2015


課題:

(1) この図は、シミュレーションで示されたスイッチング式Mixerから漏れるノイズが、前段にフィードバックされて、受信する長波へノイズを加えてしまう可能性を示すものです。
実際何がおこるかは製作しないとわからないところもありえます。

(大抵は大丈夫ですが、spice simulationと実機動作確認は車の両輪という例え話もあります。)

(2) スイッチング式Mixer段前に、TR+74HCU04 x2段のRFアンプが2組ペアが、それぞれ0度、180度反転で、同Mixerに加わっています。
このため、DBMでのキャンセル平衡が、利得ずれ、位相ずれのバランスを崩すことがあり得ます。(これは設計段階での予想です。)

対策としては、同Mixer前段は、増幅経路を2相から一相へと位相を一本化したRFアンプにしてDBMを構成すると、より洗練された回路性能が引き出せると考えられます。
(2016/11/26追記)


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バットディテクタ(コウモリ受信機の改造)

これは、Cosy Mutoさん設計のバットディテクタ(コウモリ受信機)を改造し、受信する超短波音を、受信周波数可変 VFO LTC1799 にしたものです。


これは、よほどのことがない限り動作すると思います。

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2016.4/19 追記

Cosy Muroさんオリジナル設計 バットディテクタ(コウモリ受信機)の動作をLTspice上で再現し、過渡解析しました。
LTspice上でも問題無く動作していた過渡解析結果を公開します。



上の過渡解析の時間軸を拡大し、ミキサーへ与える二相のクロック信号(180度反転した相互キャンセルする逆位相)が見えるようにしました。
モデルの写真は、エビちゃん(蛯原友里さん)です。

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コウモリと超音波

Wikipediaからから引用:

コウモリは、まわりの様子を知る際や、昆虫などの獲物を捕獲する際、あるいは仲間と呼び合う際に、強力な(110 - 120dB) パルス状(0.5 - 20ms)の超音波(30 - 110kHz)を発射する。


コウモリの種類によって、鳴き声の周波数や、鳴き方の変化の仕方が違うため、鳴き声で大まかにコウモリの種がわかる

一般的なコウモリの超音波の周波数帯の例示(単位は kHz)

コキクガシラコウモリ  
ピーク周波数 110、周波数の範囲 105 - 115

キクガシラコウモリ
- ピーク周波数 68、周波数の範囲 65 - 70


モモジロコウモリ - ピーク周波数 40 - 60、周波数の範囲 40 - 70 

アブラコウモリ - ピーク周波数 45 - 50、周波数の範囲 30 - 50

ヒナコウモリ  - ピーク周波数 20 - 25、周波数の範囲 20 - 40

ヤマコウモリ - ピーク周波数 20 - 25、周波数の範囲 20以下 - 30 

2016/3/4
コウモリの種類と発音する(超音波)周波数の情報追記

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2015年8月12日水曜日

バイポーラ型トランジスタによる終段コレクタAM変調方式によるAM変調信号の生成原理/AM変調理論の見直し

バイポーラ型トランジスタによる終段コレクタAM変調方式によるAM変調信号の生成原理
                                 Noboru , Ji1NZL Aug.12, 2015

バイポーラ型トランジスタによる終段コレクタAM変調方式によるAM変調信号が生成される原理と過程を、ブロックダイアグラム(図1)と、計算式により説明(証明)する。

図1 終段コレクタAM変調方式によるAM変調回路

1. バイポーラ型トランジスタによる終段コレクタAM変調器

終段コレクタAM変調器は、AM信号を生成する手段として知られている。
図1に示すように、終段コレクタAM変調器は、バイポーラ型トランジスタによる高周波終段アンプを1個の乗算器(ミキサー)として動作させることで構成することができる。

2. 計算式によるAM変調信号の生成過程と生成原理

音声信号は、マイクロフォン等により入力する。マイクロフォンが発生する信号電圧は、低周波数帯(20[Hz]〜20[KHz])に帯状に分布しているが、ここでは計算を易しくするために、周波数f0[Hz]の単一の周波数スペクトルとして、コサイン波低周波信号電圧

V3 = Va*cos(ω0*t) … 式(1)
(ここで角周波数 ω0は、ω0=2*π*f0 と定義する。)
が、低周波増幅アンプ A2 で増幅されると仮定する。

式(1)による音声入力電圧信号 Vin は、図1中、コレクタ端子の電源電圧 U0 と加算して乗算器動作させる終段トランジスタのコレクタへ入力する。

直流信電圧U0は、Vinのサイン波電圧を、直流電圧分 U0[V] だけ底上げするので、加算器への出力電圧 Vinは、

Vin = Va*cos(ω0*t)+U0 … 式(2)

を得る。

さて、図1の局部発信器の発生する信号電圧 V1は、サイン波なので、

V1=Vc*sin(ω1*t) …式(3)
(ここで角周波数ω1は、ω1=2*π*f1 と定義する。)

を得る。


次に、乗算器の出力信号電圧Voutを求める。Voutは、Vin(式(2)),V1(式(3))を乗算すれば良いので、

Vout = Vin*V1
   = (Va*cos(ω0*t)+U0) * Vc*sin(ω1*t)
   = U0*Vc*sin(ω1*t) + Va*Vc*cos(ω0*t)*sin(ω1*t)
   = U0*Vc*sin(ω1*t) + Va*Vc*(1/2)*( 2*cos(ω0*t)*sin(ω1*t) )
ここで、三角関数の積和公式から、
   = U0*Vc*sin(ω1*t) + Va*Vc*(1/2)*( sin(ω0*t+ω1*t)*sin(ω1*t-ω0*t) )
   = U0*Vc*sin(ω1*t) + Va*Vc*(1/2)*( sin((ω1+ω0)*t)+ sin((ω1-ω0)*t) )
   = U0*Vc*sin(ω1*t) + Va*Vc*(1/2)*sin((ω1+ω0)*t)+ Va*Vc*(1/2)*sin((ω1-ω0)*t)
     …式(4)

を得る。

式(4)を見ると、本AM変調器器の信号電圧Voutは、次の3つの周波数成分信号で構成されていることがわかる。

(1)局部発振器の周波数f1[Hz]と同一周波数成分のキャリア信号電圧 = U0*Vc*sin(ω1*t)
(2)USB(Upper Side Band)の周波数成分信号電圧 = (1/2)*Va*Vc*sin((ω1+ω0)*t)
(3)LSB(Lower Side Band)の周波数成分信号電圧 = (1/2)*Va*Vc*sin((ω1-ω0)*t)

一方、AM変調波Voutの変調度 m は、キャリア成分(1)の最大振幅電圧 = U0*Vc と、変調波であるUSB成分(2),LSB成分(3)の最大振幅電圧を加算した最大振幅電圧 = (1/2)*Va*Vc + (1/2)*Va*Vc = Va*Vc の比で表現して、

m = (Va*Vc) / (U0*Vc) = Va/U0 …式(5)
0≦m≦1.0

と表現できる。( m=1.0が変調度100%)

このようにして、本AM変調器からは、AM信号が生成される。

求めた式(4)による終段コレクタ変調回路の理論式は、低電力AM変調の計算式とも一致している。

QED

3. AM変調信号生成例

例えば音声信号としてマイクロフォン等から、周波数 f0=200Hを入力し、低周波電力アンプにより、最大振幅電圧 Va=12V のコサイン波を入力し、DC電圧U0=12V、局部発振周波数 f1=1MHz、最大振幅電圧 Vc=100mVを用いると、次の3つのサイン波電圧信号が生成される。

(1)キャリア信号電圧:
   周波数=1MHz 最大振幅電圧=U0*Vc=12V*100mV=1.2V
(2)USB(Upper Side Band)の周波数成分信号電圧:
   周波数=1,000,200 Hz 最大振幅電圧=Va*Vc/2=12V*100mV/2=0.6V
(3)LSB(Lower Side Band)の周波数成分信号電圧:
   周波数=999,800 Hz 最大振幅電圧=Va*Vc/2=12V*100mV/2=0.6V

一般の応用では、音声信号や音楽信号は、20Hz〜20KHzの可聴周波数領域に存在する全ての低周波信号が、AM信号として帯状に分布して電波として生成され得るが、通信機製品では、6KHz,AM放送用に5KHz〜9KHzの帯域の低周波を音声信号として利用されている。

4.課題

(1)ここの計算では、高周波終段トランジスタ電力アンプが、入力電圧をリニア増幅できることを仮定しているが、実際のトランジスタ動作では、高い出力電力になるほどリニア増幅が困難になり、増幅歪みを発生させやすい。

計算から導かれた結果として、高周波終段トランジスタ電力アンプが、入力電圧をリニア増幅できる必須の条件として、適切なバイアス電圧をトランジスタベース電圧に与え、出力電力が、電源電圧に比例して増加すること、また適正な(安定した)負荷インピーダンスを得るようにトランジスタ負荷回路を構成することになる。
(トランジスタ負荷回路にLC並列共振回路を利用すると共振周波数で極大のインピーダンスとなるため、増幅利得も極大になり異常増幅動作を起こしやすい。このため、実装上のノウハウとして、コイルLのセンタータップ点から電源電圧を与えることで負荷インピーダンスを下げる方法が使われてきているが、この方法は負荷インピーダンスがインダクタンス成分を含み周波数で変化するので、安定した負荷回路を構成するための本質的解決にはなっていないと考えられる。広帯域トランジスタアンプに見られるような高周波で抵抗成分が主流のインピーダンスになるフェライトコアのようなRFC利用(例えばFB225)が安定した高周波電力増幅にはるかに優れている実験結果が得られた。)

このため、高周波終段トランジスタ電力アンプには、A級、AB級増幅方式を使用することが必須となり、必然的にC級増幅方式の使用はできないという予想結果が導かれる。

(ただしC級増幅でも、交流と直流電圧が加算された小さいベース電圧で、コレクタ電圧の上昇に対し、コレクタ電流が増加する動作特性範囲部分に限定すると、リニア増幅に近い動作が得られる可能性があり、この場合、非常に小さな電力出力という条件で、AM変調が深くかかる可能性がある。しかし、ベース振幅電圧が少し大きくなるだけで、コレクタ電流の増加はすぐに飽和し、AM変調は正常にかからなくなることも予想される。※1)


(2)この計算では、変調用の入力される低周波信号はコサイン波と仮定し、局部発振周波数はサイン波を仮定しているが、これらの信号は、互いに独立な位相成分が存在する。従って、乗算器ではこれら乗算処理により、位相差が加算された位相歪みが発生することが予想される。

(3)AM放送、FM放送をラジオで受信すると、AMラジオの音質はFMラジオに大きく劣る。しかし、このAM変調の計算式上は歪みが現れていない。

このAM変調方式の音質がなぜ悪いのか、その原因を突き止めると、音質の良いAM送受信機が実現できる可能性がある。公知例では同期検波方式が知られている。(もし伝播経路上で電波の振幅が常に変動を受けている場合は、その振幅変動が直ちに音声復調の変化として現れると予想される。※2)

(4)乗算器の直線性の重要性が、電気電子業界、その専門書籍、インターネット上の記事等で理解されていないまま設計された回路や、回路図、説明文章に誤った記述が、現在でも大変多く見られる。

このトランジスタによる終段コレクタ変調回路の終段トランジスタアンプは、乗算器として動作させるためにはできるだけ良好なリニア増幅特性が必須であるが、AM変調の終段アンプにC級アンプが使えると書かれた文献すら今だに存在しているので、そうした記事や話は、たとえプロの設計した回路や専門家の記事でも、検討と設計をやり直す必要がある困難な現実が現在でもある。

前述の ”3. AM変調信号生成例” で述べたように、電源電圧U0=12Vの場合は、最大100%の変調度を 得るためオーディオパワーアンプには、12V±12Vの広い電圧振幅(0〜24V:電源電圧12Vにサイン波振幅電圧±12Vが加わる場合もあり得る。)を歪みなく実現しなければならない。(※3)
しかし、現実のバイポーラトランジスタではこのようなリニア増幅性能を出すことは極めて難しく、RF出力電力が大きくなるほどその実現が困難になる。

電源電圧が一定でなく、±12Vの広い電圧範囲(相対電圧範囲 24Vにもなる。)トランジスタアンプの動作点が動的に大きく移動せざるを得ないので、歪みが発生しやすい必然的結果が本計算からも理論的に導かれた。
 特にC級増幅アンプを用いれば、歪みは最も酷い状態になることが本計算からも予測できる。

また、昔から現在までずっと言われている終段トランジスタ前段に軽く変調をかけることで、マイナス変調を避けられる。”と説明されてきており、ナショナルのRJX-601にも採用されていたが、その方式の考え方は妖しい可能性が、ここの計算でも裏付けられたことになる。

真空管ではプレート終段変調がうまくかかるが、トランジスタには、終段コレクタ変調がかかりにくい性質があると昔から現在までずっと言われており、書籍等の文献に繰り返し書かれているが、”本当の原因”は、バイポーラトランジスタが理想的乗算器としての動作ができず、リニア増幅が非常に難しい性質にあったと言える。

また、ナショナルのRJX-601を出力1Wから3Wに大きくすると、マイナス変調と呼ばれる出力電圧が変調時に下がる実験結果での不具合原因の存在を、この計算結果が裏付けている。なお幸いにも、プロのAM放送局の送信機は、このような問題を犯していない。

こうした近代までの書籍等に書かれた設計情報を信じると正常なAM変調が実現できないままの状態に陥る。私はあまりにも長い間、この問題の本当の電気的回路動作原因を突き止められなかった。今回、自分で独自に計算した結果、初めてその原因わかったという経緯を経た。ただし私の記事も誤字入力、改行ミスなど編集ミス、論理ミスがあり得るので気づいた方はコメントして欲しい。

注意:(Oct.11, 2015 追記)

※1:C級増幅(ベースバイアス電圧=0V)でもコレクタ電圧が0Vからある一定の電圧までの狭い電圧領域で、コレクタ電圧が増加するトランジスタの動作範囲が存在する。しかしながらC級増幅では、ベース電圧(または電流)上昇に伴いすぐにコレクタ電流の増加が飽和してしまう。この結果、コレクタ電流が飽和した状態では、いくらコレクタ電圧の振幅を上げても、コレクタ電流は飽和したまま変化できない状態になる。

※2 FM変調では電波の強さの振幅変動があっても、周波数変化または位相変化を復調情報として利用するので、原理的に伝播経路上の信号強度の変化があっても、復調音声に歪みの変動は現れない。

※3 この部分は、もう少し検討を要す。コレクタ電流がほぼ直線動作として近似できる範囲の振幅条件では、ベースから入力される振幅電圧を一定の小さい範囲に抑えることで、100%近い深いAM変調がかかるかもしれない。

2016/10/10
図1改訂 わかりやすくするため加算回路(Adder)を追記
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