図1. 過渡解析結果(+高域FFT解析)
±18[mV]の1[KHz]の歪んだベースバンド変調信号が出てきたので音は復調はする。
しかし、二次、三次、4次の高調波が出てしまい音質はかなり悪くなると予想される。
図1.2 過渡解析結果(+狭帯域FFT解析)
図1.2では、(1) クワドラチュラ(Quadrature) FM 復調回路で検波した出力信号を図1.1の検波出力信号の周波数スペクトラムの周波数軸を広くして見た。
455[KHz]中心に多数の余分な周波数成分が広がり、結果は必ずしも思わしくない。
図2 AC解析結果
同回路のFrequency/Voltage変換、Phase/Voltage変換特性を見てみたところ、どちらもほぼ一定の値で期待する直線傾斜が出てこない。
この回路(図1)ではFM変調、PM変調の復調には向かないかもしれない。
この回路の復調特性を改善するには、LCコイルの共振周波数fo[Hz]を少しずらし、
fo-⊿f[Hz]または、fo+⊿f[Hz]にすることで、F/V変換器の中心周波数を、LC同調回路の
利得カーブの傾斜角度をスロープさせることで、歪みを少なく改善できる。
多くのラジオ関係の書籍では、こうしたLC共振周波数の中心周波数を、
FM変調波の中心周波数に合わせるという誤った解説がされているので、
従来の記事は同様のF/V変換についての理解と解説ミスが存在している。
図3. クワドラチュア検波用ICの構成例 NJM-2590 (引用 出典:Copyright by JRC inc.)
図3は、NJM2590 JRC社のQuadrature検波用ICの例。
図1と構成は似ているが、セラミック振動子 455[KHz]が利用されている。
FSK復調が取り出せる等の相違がある。
簡単な考察:
(1)原理1 (図1の動作)
PM(位相変調)信号波と、コンデンサで90度位相をずらしたPM波を乗算して、LPF(ローパフィルタ)で位相の変化を取り出す思想と考えられている。[1]
Vin(t) = Vc*sin(ωc+θ(t)) ...(1)
Vosc(t)=Vc*sin(ωc+θ(t)-π/2) = -Vc*cos(ωc+θ(t)) ...(2)
式(1),式(2)を乗算すると、
Vin(t)*Vosc(t)=Vc*sin(ωc+θ(t)) *{-Vc*cos(ωc+θ(t))} ...(3)
=-Vc^2*(1/2){sin(2ωc+2θ(t))+sin(0) }
= -Vc^2*(1/2){sin(2ωc+2θ(t))} ...(3)'
(3)'式にLPFを通過させると、高周波成分2ωc+2θ(t) [Hz]が除去されるので、
Vout = 0 ...(4)
困ったことに出力が何も出てこない計算結果になってしまう。
(2)原理2 (NJM2590)
前の計算方法では、出力が0で信号が出てこなくなるので、局部発振器では、セラミック振動子455[KHz]のOSC信号が乗算器に加わると仮定してみる。
Vin(t) = Vc*sin(ωc+θ(t)) ...(5)
Vosc(t)=Vc*sin(ωc-π/2) = -Vc*cos(ωc) ...(6)
式(5),式(6)を乗算すると、
Vin(t)*Vosc(t)=Vc*sin(ωc+θ(t)) *{-Vc*cos(ωc)} ...(7)
=-Vc^2*(1/2){sin(2ωc+θ(t))+sin(θ(t) }
= -Vc^2*(1/2){sin(2ωc+θ(t))+sin(θ(t))} ...(7)'
(7)'式にLPFを通過させると、高周波成分2ωc+θ(t) [Hz]が除去されるので、
Vout = -Vc^2(1/2)*sin(θ(t)) ...(8)
≒ -Vc^2(1/2)*θ(t) ...(9) (∵ θ(t)≒0 の時、sin(θ(t) = θ(t) で近似できる。 )
式(9)で前段にリミッターアンプで振幅を1[V]にすると仮定すると、
Vout ≒ (1/2)*θ(t) ...(10)
(10)式は、PM/FM変調波 Vin(t) (1)式の位相変化関数θ(t)の近似的に復調できることになる。
しかし、(10)式は、|θ(t)| >0 の時、sin(θ(t) = θ(t) で近似できなくなる。
この課題を解決するため、
式(8) で、
・リミッターアンプを検波前段に置き Vc=1=Vc^2 として
式(8)からの復調を考える。
Vout = -(1/2)*sin(θ(t)) ...(8)'
-2*Vout = sin(θ(t))
∴ θ(t) = arcsin(-2*Vout) ...(9)
式(9)で、位相変化成分θ(t)が歪みなく取り出せる。
これは位相変調(PM変調)が復調できたことを意味する。
ところが、FM変調では、音声信号(ベースバンド信号)が、時間での積分演算と係数倍(k)になっているので
θ(t)=∫k*x(t)dt ...(10) 定積分範囲:0〜t[s], kは定数
このため、ベースバンド信号 x(t) は、θ(t)を時間で微分して、
dθ(t)/dt=k*x(t) ...(11)
∴x(t)= (1/k)* dθ(t)/dt ...(12)
式(12)は、FM変調が復調できることを意味する。
しかし、Quadrature検波回路では、
sin()関数逆関数 arcsin()演算と微分演算機能が無いので、良好な音質のFM復調はできそうにない。
この課題を解決するには、AD変換器でLPFからの出力信号を数値に変換し、マイコンの数値演算で、arcsin()演算と微分演算を行い、演算終了後、DA変換器でアナログ電圧に戻すと、歪みの無いFM復調が実現できると考えられる。
Rev.1.0: 従来のクワドラチュア検波理論では、"Quadrature"の用語から、式(6)は、FM変調波の中心周波数から、位相が90度ずれた時間的に連続するRFキャリア信号電圧が出てくると仮定している、と考えられる。
ところが、FM/PM変調波は、周波数または位相が変化する単一の変化する周波数なので、式(6)の示すFM変調波の中心周波数から、位相が90度ずれた時間的に連続するRFキャリア信号電圧は取り出すことができないという、基礎的な論理ミスが見られる。
この論理ミスは、後述するクワドラチュア検波の理論修正の記事で修正した。2020/09/19
0 件のコメント:
コメントを投稿
現在コメント機能に不具合が出ています。お手数ですみません。
メッセージは、メールでお送り願います。