2017年7月22日土曜日

14MHz キュビカル・クワッド・アンテナの解析

2素子のキュビカル・クアッドは、立体構造になるため、短波帯では大変大型になり、その大きさから高性能への期待が高い。


図1. キュビカル・クワッドの形状

一波長アンテナで、14MHzで5mx5mのループが2個となり、大変巨大な構造になる。
それだけに、性能への心情的な期待感は大きくなる。
しかし、一方、風に弱く、よほど丈夫に作らないと、短期間に簡単に壊れてしまう。


図2, 利得とFB比

実効利得は、高さ10mで、約10dBi で十分に高いゲインが得られている。
この1/2波長の高さが、垂直面パタンの乱れが一番少ない。

心情的には、3素子八木の利得を超えて欲しいが、そうした大きな期待に反し、最新のアンテナ解析理論モーメント法での計算値は、2素子八木と同等となった。


図3. SWR特性

クワッド系のアンテナは、この計算では、アンテナインピーダンスが約100Ωでバンド中心でも、50Ω給電線ではミスマッチで、SWRは2を超え、またQも高いために、バンド幅は狭くなり、送信アンテナにはそのままでは使えない。
送信可能にするには、2:1(100Ω:50Ω)のインピーダンスマッチング用バランが必要になる。

巷の噂では、「同調の鋭さが高いことがアンテナ利得の高性能を意味する」という伝統的主張があるが、それは、事実と異なっている、と考えられる。
アンテナのゲインと、同調の鋭さ(Qの高さ)は、ここのブログの解析でも、直接的関連は見られていない。

反例:
例えば、ヘンテナはQが高く同調が狭く、利得は2素子八木よりかなり低くなり、かつQが低く広帯域の2素子八木のほうが利得が高い。


図4. 輻射パターン

良いFB比と、パターンが割れていない垂直面パタンが得られている。
クワッド・アンテナは、地上高が低くても、低い輻射角が得られ八木アンテナより高性能、と言われているが、計算結果は、言われてきた定説と異なってしまった。


図5. インピーダンス特性等

給電点のインピーダンスは100Ωと高いので、50Ω給電線の接続ではアンマッチで、SWRは2.0を超えてしまう。
ループ・アンテナは、Qが八木アンテナより一ずっと高くなり、送信可能なバンド幅は狭くなる。
バンド幅は狭くなるので、バンド幅が広いとする従来の定説と異なる結果となった。


図6. 最適化計算

SWRは2.0を超え、ゲインは3素子八木に及ばず、打ち上げ角も八木より優位という結果が得られていない。

図7. アンテナサイズ(最適化済)


構造的に機械的強度の高い八木アンテナのほうが、キュビカル・クワッドより長期使用に耐え、性能も八木アンテナのほうがバンド幅が広い。
これまで言われてきたほど、打ち上げ角が低い特性も得られなかった。


キュビカルクワッドは、3素子アンテナよりも利得が高く、打ち上げ角がずっと低いと言われてきており、そのため、海外との遠距離通信に優位である、との心情的な期待待感が高まってしまう。

実際に、キュビカル・クワッドを使うと海外と交信でき、ダイポールと比較すると、その性能は雲泥の差を実感する。

しかし、モーメント法の解析で、従来の経験的定説との整合性を見てみると、あまり良い結果ではなかった。

アンテナの巨大さに圧倒され、高性能への感情的な期待感の心情が高まってしまい、電気工学/電磁気学上の科学的検証主義の基礎的思考を失った思い込みに走らせるほど、キュビカル・クワッドへの期待感は大きいのもがあった、と感じた。


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2017年7月19日水曜日

50MHz 4種アンテナ(ダイポール、ヘンテナ、スカイドア、2素子八木)性能比較

1. 50MHz 4種アンテナ(ダイポール、ヘンテナ、スカイドア、2素子八木)性能比較


V型ダイポール・アンテナ(バンザイ・アンテナ)の実行利得は、ヘンテナやスカイドアに約-1dB程度の実効利得でかなりのハイゲインで、Qが低いので広帯域です。
高電力送信対応も容易です。

2素子八木は、ヘンテナやスカイドアの利得に勝り、Qが低いので広帯域です。
高電力送信対応も容易です。


2.  V型ダイポール(バンザイ・ダイポール) (オリジナル最適化)






Qが低いので、バンド幅が広くとれ、CW-SSB-AM-FMバンドまで無調整で送信可能。
インピーダンス・マッチングは、V型の角度で50Ωに近づけます。








3.   ヘンテナ (JH1FCZさん考案型+MMANAによる最適化型)


縦長さ=3mもあるので、高さ3mにあげると、大変巨大なアンテナになります。




3m高さ(1/2波長)で、最も垂直面パタンが割れずに素直な打ち上げ角になります。



Qが高いので、バンド幅が狭くなり、同調マッチングはむつかくなる特性が見られます。







4. 2素子八木アンテナ(八木アンテナの改良)




CW-SSB-AM-FMまで広い帯域でSWRが低く送信可能です。
Qが低いので、アンテナの調整はしやすくなる特性が見られます。


バックの混信を避けられます。






5. Skydoor アンテナ(JA1HWOさん考案)


ヘンテナより縦の長さが小さいので小型化されています。




この条件では、やや複雑なSWR変化が見られます。
帯域はヘンテナよりやや広くなっています。











2017年6月7日水曜日

EHアンテナの集中定数による特性計算結果

EHアンテナは、波長に対して十分に小さなアンテナ素子であるため、集中定数でその電気的特性は近似計算できるとの考え方により、AC特性と、過渡特性を、LTspiceで計算しました。

その結果、給電点のインピーダンスは大変高くなり、送信機からのRF電源の電力供給をほどんど受けつかない特性があることが分かりました。


図1. EHアンテナのAC特性 計算例 (7MHz)

給電点のインピーダンスが、同調周波数 7MHzで最も高くなるようにしたところ、著しくその値が高くなり、送信機側の高周波電力を殆ど受け付けない特性になりました。

21MHzにも同調点が現れ、こちらはインピーダンスが大変低くなるものの、70%程度の電力が高周波抵抗成分で発熱し、高周波電力が熱に変換されることが予想されます。


図2. EHアンテナの過渡特性 計算例 (7MHz)

この計算条件では、入力電圧の約4倍の電圧の昇圧が起こり、マグネッチック・ループに見られるバリコン同調部での空気放電は起こりにくい条件があることがわかりました。

現在のところ、性能がダイポールの90%に及ぶという計算結果は再現できていません。

この例は単に計算の一例に過ぎず、実動作性能は、アンテナの実装状況で大きく変化することは無いとは言えませんが、事前の予測計算により、長時間の実験をするか、しないか、概ねの判断ができるかもしれないと思われます。



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2017年6月2日金曜日

無調整型水晶発振回路の不安定発振動作、高調波歪み発生現象とその解決法

無調整型水晶発振回路は、従来より長い間知られたもので、無調整で発振するので、安定した周波数で当然のように安定して発振し、綺麗なサイン波(正弦波)を生成すると期待されており、不安定な発振動作や高調波歪みが発生する現象に言及された例を見ない。

ところが、条件によっては、以下のような不安定な発振動作が起こり得ること、また大変歪んだ発振波形で高調波歪みが多くなる現象が出る可能性が、LTspiceの計算により示された。

1. 無調整型水晶発振回路の不安定発振動作と高調波歪み発生現象

図1.1 無調整型水晶発振回路の不安定発振動作 発振開始タイミングから発振初期

5V側の波形は安定しているが、下側の波形がだいぶ振幅が乱れている。
FFT解析では、高調波歪みも多い。

このような現象は、LC共振回路を出力負荷に持たせる水晶発振回路では起こらないことをLTspiceと実機測定でも良く見てきた。

図1.2 無調整型水晶発振回路  発振中の不安定動作

発振開始後も、波形がところどころ発振がと切れるような割れる波形が見られる。

水晶モデルがおかしい、計算刻みが大きいのではないか、とも考えられたが、
計算刻みを細かくし、または水晶モデルを変更しても、現象が改善しない。


図1.3  無調整型水晶発振回路  発振中の拡大波形


このように、時間幅を大きくすると、正弦波のような丸みをもった波形ではなく、クロック波と正弦波の中間にあるような歪んだ波形で、高調波歪みの電圧成分レベルが高い。

この無調整型発振回路は、VXOと呼ばれる水晶発振回路にも多用されてきている。
このブログの過去記事で、その高調波歪みが発生する可能性を、計算で示した。


図1.4  水晶モデル
使用した水晶モデル。
ATカットモデルの適正なパラメータにしても、現象は改善されない。



2. 解決方法

現在、解決方法として、2つの方式が提案され、計算は成功した。

その解決方式では、大変優れた高純度の正弦波がLC共振回路無しで、かつ振幅電圧が無段階にレベル調整できて出力できることが判明した。

世界のブレインには驚かされることが多い。

水晶メーカでないと、水晶振動子のパラメータ測定は難しい。
スペアナは高価なので利用できる環境は用意できないことも多い。
このため、気をつけないと、スプリアスの多い発振に気づかない可能性がある。


関連記事:

 LC共振回路を負荷とする水晶発振回路では、上記のような発振電圧が乱れる現象は出にくい。VXO発振回路は、無調整型発振回路が使われることが多いので、発振の安定度とスプリアスに注意が必要という結果となったので、実測による歪み特性、波形測定は重要と思われる。

トランジスタによる水晶正弦波発振器の設計 (14MHz)


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2017年5月24日水曜日

BJTトランジスタを使ったAMコレクタ変調回路歪み特性の計算評価と 実験経験との比較検証

BJT トランジスタを使ったAMコレクタ変調回路歪み特性の計算評価と実験経験との比較検証

[概要]
従来式BJT トランジスタを使ったAMコレクタ変調回路は、マイナス変調や、変調が浅い
現象が発生しやすいことが実験的に知られている。

この課題を解決する手段として、「ファイナル・トランジスタ前段のドライバ段トラン
ジスタに浅く変調をかけ、終段トランジスタに深く、2段式に振幅変調をかけると良い。」
という設計法が、長い間言われて続けている。[※1][※2]

別記事では「2段式コレクタ変調」の計算式に従う場合、変調歪みの発生が避けられない
ことを示した。

この計算結果をより高精度に数値化するため、この設計法の再現性と、信頼性の度合い
について、LTspiceを用いた実際の回路モデルに適用し、解析計算結果を以下に評価した。

ここでは、同じ課題の存在と、同課題の現象発生の再現性が高いことが、LTspiceでの
数値計算でも再確認でき、数値計算上も裏付けられたことを記述する。

合わせて、計算結果と実験結果の整合の度合いを比較し、コレクタ変調方式の電気的特性
上の解決できない課題の存在を立証した。

1  一段式 終段コレクタ変調回路のAM変調特性と歪み特性の計算

図1.1  (一段式)終段コレクタ変調 広帯域FFT(対数表示)

振幅変調を浅く抑え、ベースバンド信号電圧を低めにスイングすると、AM変調波の包絡線

は1KHzのなめらかなサインカーブに見える。

広帯域で見たスプリアスは比較的少ない。

図1.2  (一段式)終段コレクタ変調 狭帯域FFT(対数表示)

一見奇麗に見える浅いAM変調波でも、キャリア近傍周波数を、対数表示でみると、

AM変調波の歪み成分の存在がよく見えてくる。

BJT TRが、理想的アナログ乗算器として動作すれば、これらのスプリアスは理論的に
皆無になるが、現実のBJT TRでは、そのような理想的アナログ乗算器は一個のTRでは
実現できない。

BJT TRの非直線増幅特性が、理想的アナログ乗算器の近似特性から外れるため、
こうした変調電圧の歪みを発生させる原因になっている。


図1.3  (一段式)終段コレクタ変調 狭帯域FFT(対数表示) 変調の深さとサイドバンドが広がり-1

図1.3のように、パラメットリック解析して、キャリア近傍の周波数のスペクトラムを見ると、
変調が深いほど、ベースバンド高調波のサイドバンドが広がるスプリアスの広がりと
歪みの電圧レベル上昇がわかる。

図1.4  (一段式)終段コレクタ変調 狭帯域FFT(対数表示) 変調の深さとサイドバンドが広がり-2
図1.4は、図1.3の周波数軸横軸を拡大して、ベースバンド1KHzの高調波の広がりを見たもの。


2  二段式 終段コレクタ変調回路のAM変調特性と歪み特性の計算

図2.1  2段式コレクタ変調 広帯域FFT(対数電圧表示)

AM変調波は、出力電圧変調波(緑)の谷が深くなり、一段式コレクタ変調(図1.1、図1.2)

より、見かけ上深い変調がかかる波形が見られる。

しかし、AM変調波電圧の包絡線は、1KHzサイン波の形が崩れ、歪んでいることがわかる。

ここで、さらに低周波ベースバンド信号の振幅電圧幅を大きくすると、変調波形の谷が
より深くなるが、包絡線はサイン波1KHzの形の崩れがさらに大きくなり、変調波形の
歪みが大きくなる。

この方式には、「アナログ乗算器を2段直結する」という基礎的な論理設計エラーが存在
する。

アナログ乗算器を2段直結すると、二段目のアナログ乗算器で、ベースバンド信号の2倍
高調波が発生し、その結果、AM変調波の包絡線に歪みが現れる。

このため、原理的に、この回路では変調波の歪みの発生を避けられない。

広帯域周波数で見たFFTでは、低周波領域の高調波が大きくなっているが、この低周波
成分はアンテナからはバンドパス特性により大きく減衰するので、送信されない。

図2.2  2段式コレクタ変調 狭帯域FFT(リニア電圧表示)

キャリア近傍のスプクトルをみると、ベースバンド1KHzに対する第二高調波2KHzが

見られ、変調信号が明らかに歪んでいることがわかる。

高調波歪み成分の存在は、リニアな電圧表示のFFTでは見えにくい。

図2.3  2段式コレクタ変調 狭帯域FFT(対数電圧表示)

図2.3は、前の図2.1、図2.2と同じ過渡解析で、出力信号キャリア信号近傍のスプリアス

電圧を、対数表示で見たものである。

キャリア近傍のスプクトルをみると、ベースバンド1KHzに対する高調波が多く見られ、
変調信号が歪んでいることが良くわかる。

対数表示により、高調波歪み成分の存在がよく見える。

第二高調波2KHzは、基本ベースバンド1KHzに対し、-20dB電圧レベルが低い。

FFTには、キャリア周波数周辺に、サイドバンドのスプリアスが広がる現象の発生が
見られる。

この歪み特性は、通信機や放送装置には許容されない特性かもしれない。

こうした歪みを許容できる簡易な用途、省電力の玩具等には応用可能性が残るかも
しれない。

この用途に適用できる判断は、個人の感性に依存する性質があるので、
判断結果は、人によりばらつくと考えられる。

従来までの二段式コレクタ変調は、基礎的な設計ミスを含んでいるので、
使う場合は、その欠陥特性を理解しておく必要があると考える。


3 実験による検証

実験によるシミュレーションの確からしさの確認には、上記の回路を製作してデータ測定
し、そのデータ一致が見られれば、上記コレクタ変調方式が不具合を起こし、変調を深く
するほどスプリアス歪みの増大特性を立証できる。

しかし、正常に期待動作できないことの立証に、コストと時間をかけるのは、これまであ
まりにも長期の(少なくとも1970年代ころから今まで)失敗経験を重ねている実績情報から
判断すると、もはや得策とは考えにくい。

(理屈でできると分かれば、実験をする価値があるが、理屈でできないとわかってしまう
と、実験を行うことへの産業上のメリットが失われる。)

妥協策として、ここでは、既に過去の実機実験で、経験的にわかっている事実と比較し
た。

・既に世の中の過去の実験例で、真空管ではうまくいっていたプレート変調を、単にトラ
ンジスタに置き換える発想による、トランジスタを使ったコレクタ終段変調回路では、
マイナス変調か、浅い変調になったという報告が、ネット記事にも多く書かれている。

・製品 RJX-601 では、1W送信モードではプラス変調になり、3W送信モードではマイナス
変調で変調信号が浅く聞こえる実験事実を確認した。

・実機実験: 2SC696 - 2SC517 C級バイアスアンプの実験では、すべてマイナス変調と
なり、最大出力は2Wを下回ることを確認した。

・実機実験: 2SC696 - 2SC517 でAB級バイアスアンプの実験では、極めて稀にプラス
変調となるが、最大出力は2Wを大きく下回り、0.2W程度でプラス変調となったことが
ある。

・AB級バイアス電流調整、実験中に過大なコレクタ電流が流れ、2SC517が多数、
恒久故障に至った。

・実験による損害金額が大きく、期待動作できる見込みが見えないので、実験を中止
した。

・代替方式として、真空管S-2001Aを終段菅とするプレート変調を構成した回路では、
問題なくAM変調がかけられることを実験で確認した。(リニアアンプ無しで出力5W)

・代替方式として、SN76514Nギルバートセル乗算器内蔵ICを利用した回路では、問題
なくAM変調とDSB変調がかけられることを実験で確認した。(リニアアンプを利用し出力9W)

・理論的に不可能と予測計算される方式は、電気回路の方程式の数式であらかじめ証明
できるので、そうした短時間のAM理論を理解するだけで、長期・長時間作業の迷宮から
脱出できる。
また、新しい設計文明への道が開ける、と考えた。[※3]

[※1]USでは、3~8石規模のギルバート乗算器が1968頃発明され、その後IC化された。
これは良好なアナログ乗算器特性があり、VHF程度まで使える。
SN76514N,SA612,NE602等は、ミキサーICとして知られているが、中身がギルバート乗算器
であることは、国内に説明する書籍例が見られず、ブラックボックス的理解の模様。

国内では東芝、JRCが同機能のICを製造しているが、US特許を使用しているかもしれない。

[※2]日本では家電メーカがRJX-601で同方式を採用、大ヒット商品で一世を風靡し、
他通信機メーカも一時期だけに限定し、同方式を採用。

TRIO/Kenwood社がTS-600で低電力変調方式を採用後、メーカ側の流れは大きく変わり、
終段コレクタ変調式の製品は無くなり、低電力変調方式へ移行した。
(通信機業界では、事実上、コレクタ終段変調式が採用は無くなった。)
家電メーカは通信機産業から撤退。一部の通信機メーカのみが長足の技術進歩を達成
した。

[※3]一方、国内の通信工学、専門書籍への設計手法伝達のフィードバックが行われない
まま、特定のメーカ外側にいる、一部のプロ、先生、出版社、その書籍、学生、生徒、
一般趣味人らが、技術発展からとり残されたが如く、過去の誤った設計書籍から得る
知識と先入観、言い伝えに不覚にも騙され、不具合発生の再現を繰り返す迷宮に入って
いる事例が続いている模様。


4  まとめ

・AMコレクタ変調について、国内でとられてきている終段コレクタ変調の設計法では、
出力されるAM送信波形に歪みの発生するが、歪の程度は異なるものの、BJT TRがアナロ
グ乗算器に近似できない非線形増幅領域について、この現象を避けることは不可能
である。

・500KWものAM中波放送用にも実用に使えた真空管のプレート変調を、単純にトランジスタ
に置き換えようとする設計思想は、変調がうまくかからない不具合現象が、実回路でも
再現性良く起こるので、この設計思想は、ずいぶん過去に破綻していたことが公知で
あったと推定される。

不運にも、インターネットでは、その不具合を起こすコレクタ変調回路を、現在でも沢山
参照できる。それらの記事と過去の書籍には、AM変調電圧式の記載と説明が無いこと、
変調の不具合現象発生の記載がないのが共通点として見られる。

・一段式コレクタ変調は、浅めの変調では歪みが少ないが、変調を深くするとトランジ
スタがアナログ乗算器に近似できない非線形増幅領域での歪みが増大して発生する。

・二段式コレクタ変調は、一段式コレクタ変調に比較し、変調がより深くなる特性が見
られるが、ベースバンド信号の2倍高調波歪みの発生により、包絡線がベースバンド信号
を線形に維持できない歪が見られ、これはこの方式上さけられない特性で、設計前に
予測し、回避可能な論理設計上の基礎的不具合がある。

・C級アンプがAM変調送信機に使えるという国内の定説は、実験およびspice計算に
ついて、どちらも定説が説明するAM変調動作を再現できなかった。

また、この定説は、
AM変調電圧の計算式 V(t)=Vc・sin(ωc*t)*{Vd+*x(t)}
に対し、論理的不具合を起こす考え方となっている。

なぜこの定説が繰り返されるのか、その原因は、現在でも解明されていない謎となって
いるが、学校の理科の実験教育で、理論計算値と測定値が合うかどうかを見る、合わなけ
れば、その原因を考察し、理論修正や測定誤差評価方法を考える、先進国に見られる実験
と測定による理論の立証主義が、現在でも教育されていないことが関係しているのかも
しれない。

Rev.0.1: May, 25, 2017
図1.3,図1.4 と説明追加:サイドバンド・スプリアスの広がりと変調度の関係説明

2017年4月23日日曜日

ヘンテナのSWR調整方法を計算で求める(ヘンテナの謎を解き明かす)

50MHz(6mバンド)用アンテナとして人気のある「ヘンテナ」を、「モーメント法」[1]に基づくアンテナ・シミュレータMMANA(Copyright by Mr.Mori/JE3HTT)を使い、その謎の解明を試みました。

課題:
(1)ヘンテナを作ったが、SWRが送信の実用範囲と言われている1.5以下に下がらない。
(2)給電エレメントをずらしても、SWRの下がる位置が現れない。
(3)そもそも、どの位置に給電エレメントを位置づけるのか、同調周波数と給電エレメントの配置場所があらかじめわからない。
(4)使える周波数の帯域幅がわからない。
(5)どうみても3〜5エレ八木と同等の利得が得られるという噂は本当なのか。

1. マッチング・エレメント位置とヘンテナの電気的特性の計算データ

「ヘンテナ」の特徴、優れている点に、長方形ループ(全体長=2λ)の形を変化させずに、給電エレメント位置をずらずだけで、SWRが1.5以下の送信用の実用範囲に入るというものがあります。
項番#4に示した、給電エレメントを、それぞれループ下側から、95cm,90cm,85cmと5cm間隔で3点を取り、その電気的特性を計算しました。
その結果は以下の通りです。

Hentena Tuning  
Stab   L     C     Q     f0         BW     SWR at 50.1MHz    Z(Ohm)
95cm 7.2uH 1.5pF 29.4 49.320MHz 1680.4KHz 3.15/50.1MHz   73.40+j69.46
90cm 7.0uH 1.4pF 28.7 50.036MHz 1742.4KHz 1.55/50.1MHz   76.95+j5.68
85cm 6.7uH 1.5pF 27.6 50.755MHz 1840.1KHz 2.63/50.1MHz   79.83-j56.06

この計算結果では、確かに同調周波数 50.036MHz に、SWR=1.55 の最小値が現れました。
Qが高いアンテナで、同調がシャープになる特徴が見られます。

5cmの給電エレメント移動でも700KHz〜800KHzくらい同調点が敏感に変化する特性が出ました。
インピーダンスの抵抗成分(インピーダンス実数成分)は77Ω前後で、インピーダンスの虚数部が、給電エレメントの位置で、インピーダンス変化は、主として、インダクタンス成分の変化として現れました。

給電用フィーダは、特性インピーダンス50Ωの5D2Vよりも、特性インピーダンス75Ωの5C2Vがマッチング結果が良好になることが分かりました。


2. マッチング・エレメント位置によるSWR特性の変化特性

図2.1  SWR (給電エレメント位置=85cm)

図2.1 のように、給電エレメント位置を、90cmから5cm上にずらすと、SWR同調点は、大きくずれ、750KHzくらいずれてしまい、SWR=3.15 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できない結果です。


図2.2  SWR (給電エレメント位置=90cm)

図2.1 のように、給電エレメント位置が、90cmで、SWR同調点は 50.036MHzで、SWR=1.55 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できそうな値になっています。



図2.3  SWR (給電エレメント位置=95cm)

図2.3 のように、給電エレメント位置を、90cmから5cm下にずらすと、SWR同調点は、大きく下側にずれ、750KHzくらい下がってしまい、50.1MHzで、SWR=3.15 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できない結果です。


以上の結果から、目的周波数に同調させるには、1cmくらいの精度で給電エレメント位置を調整する必要があり、5cm間隔では一挙に750KHzも同調がずれ、SWRは3.0を簡単に越えてしまう結果になりました。

この給電エレメントのスライド調整は、同調周波数がシャープで、スライド位置に約1cm精度の調整が必要となる大変センシティブな特性があるようです。


3. マッチング・エレメント位置によるインピーダンスの変化特性

項番#1に示したインピーダンス計算値に従った、インピーダンスの実部、虚部の変化を、図3.1〜図3.3に示しました。
インピーダンスの虚数部=0 になる周波数が、「ヘンテナ」の同調点です。

確かに、ヘンテナの同調周波数は給電エレメント位置に敏感に対応して大きく変化するという、同調点がシャープで送信可能な周波数帯域が狭くなる特性が見られます。


図3.1 インピーダンス特性 (給電エレメント位置=85cm)

図3.2 インピーダンス特性(給電エレメント位置=90cm)

図3.3 インピーダンス特性(給電エレメント位置=95cm)

4. マッチング・エレメント位置の図

図4.1〜図4.3は、それぞれ給電エレメント位置=85cm,90cm,95cmの時の、エレメント編集画面のショットを示しました。

図4.1 エレメントの編集(給電エレメント位置=85cm) 

図4.2 エレメントの編集(給電エレメント位置=90cm) 

図4.3 エレメントの編集(給電エレメント位置=95cm) 

5. 実験での検証

僕の実験では、横1m、縦3mの長方形ループで、SWRは3.0を越えてしまい、送信可能な特性は得られませんでした。
給電エレメントは、IV線3mmΦを使い、縦エレメントに5cm間隔でビニル被覆を向いた調整点を離散させてとったため、これでは、同調周波数が目的周波数に合わなくても仕方ない結果だったと思います。(屋根上での調整はこの精度でも限界で、調整作業は大変危険です。広場でマスト高を約1/2波長にするのが良さそうです。)

「ループアンテナは送信可能な周波数帯域が広い」と教わっていたので、「ヘンテナ」も50MHz〜54MHz全帯域で使える、と実験当時思ってましたが、間違って思い込んだ可能性があります。
(良い結果がでず申し訳ない気持ちがありますが、計算と、実験結果は矛盾していないと思います。)

別記事で、「ヘンテナ」のエレメント長を最適化したものでは、横エレメント=90cmで、CW/SSBバンド向けに好結果になり、やはり、75Ωの給電線5C2Vの利用が良い、という計算結果でした。


[ Reference ]
[1] R. F. Harrington: “Field Computation by Moment Methods”, IEEE Press, New York, 1993
(Recommended)


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