以前、このブログに公開したクワドラチュアFM復調回路について、復調されるベースバンド信号の特性が、ごく簡単な方法でできることが判りました。
改良方式:
455KHz IFT の同調周波数を、キャリア信号のセンター周波数455KHzから約3KHz 下げる。このことにより、F/V変換回路の傾斜(スロープ)が線形特性に近似できるようになり、音質が大きく改善できます。
モトローラ社IC MC3357 で採用され、通信機にも広く普及した回路ですが、その動作原理が、長年、何も説明されないまま、時代が経過していたと思います。
以下、改良したクワドラチュアFM復調回路の、過渡解析(図1)とAC解析結果(図2)を示します。
図1 クアドラチュアFM復調回路の過渡解析結果
説明:
中心周波数455KHz キャリア波の正弦波に、変調周波数1KHz (ベースバンド信号)のFM変調波を発生させ、10KΩの抵抗を通過した信号V1 と、コンデンサ10pFを通過して451KHz同調周波数とするLC共振回路に接続する信号V2 を乗算回路に入力。乗算されたアナログ電圧を、RC構成のローパスフィルタを通過した低周波信号V(OUT)を出力させます。
結果として、V(OUT)端子に、綺麗な形の1KHzの正弦波に近い復調信号が得られています。FFT解析結果は、復調信号に2次、3次・・・以上の高調波歪み信号が含まれていることを意味します。
図2 クアドラチュアFM復調回路のAC解析結果
説明:
端子V1, V2, V(OUT)の利得と位相ずれの量を、周波数軸400KHz〜500KHz帯域で見ています。
注目すべき点は、V2端子の利得の傾斜が455KHz中心にほぼ直線近似できる右肩上がりの傾斜(スロープ)特性を持っていることです。この直線近似される利得の傾斜特性から、入力されたFM変調波の周波数変化が、電圧の振幅変化に変換されることです。
このAC解析結果から、従来のクワドラチュアFM検波の説明では、クワドラチュア(quadrature)=直交の意味について、90度位相のずれた信号と、もともとのFM変調波を乗算させる、とされてきましたが、説明と命名に誤りがあったことがわかります。
参考文献
[1]モトローラ社 MC3357 FM復調IC データシート
[2]SANYO社 LA1800 AM/FM radio IC データシート
[3]SANYO社 LA1845 FM STEREO/ AM Radio IC データシート
[4]JRC社 NJM2550 データシート
https://www.njr.co.jp/products/semicon/communication_ic/fm_if?cat=4050
[5]JRC社 NJM2590/97 データシート
[6]東芝 TA7792F AM/FM radio IC データシート
[7]東芝 TA8164P AM/FM radio IC データシート
[8]TRIO/Kenwood社 TS-670回路図
[9]インターネット上のquadrature FM decoder 資料、位相変化を利用した復調器
[10]OP Ampを使った位相シフト回路{本ブログ内記事中}
[11]Si4734/4735 データシート
[12]NS-73 データシート
[13]MIT OCW 6.003 “Modulation 2”
[14]FM変調講座資料 高知大学
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