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2020年9月5日土曜日

ベッセル関数(第一種)の正体の謎を探ることと、FM復調理論の数学的基礎のレビュー結果

 ベッセル関数(第一種)の正体の謎を探ることと、FM復調理論の数学的基礎のレビュー結果

目的:

FM変調の技術解説に頻繁に登場する「ベッセル関数(第一種)」とは何者なのか、その正体について、数学的性質と電気的な定性的・本質的な意味を明らかにする。



解決しようとする課題:

(1)FM変調の技術的解説に現れる「ベッセル関数(第一種)」の数式を明示すること。

(2) #(1)に関する「ベッセル関数(第一種)」の持つ数学的性質と電気的意味とを明示すること。

(3) 各種の文献に見られる同関数の未定義状態や意味のわかりにくさに伴って発生するモヤモヤの正体を明らかにする。

(4)FM変調を数式で表現し、そこから「ベッセル関数(第一種)」を導出を試みる。


結論:

(1)入力する低周波信号を βsin(ωt) と、角周波数ωと振幅βのsin波と特殊化する時、

FM変調波は、位相変化量を βsin(ωt)[rad]とする位相変調の式として、

   Vfm(t)=Acos(Ωt+βsin(ωt)) , ここで加法定理より

             =A{cos(Ωt)*cos(βsin(ωt)) - sin(Ωt)*sin(βsin(ωt)) } 

と書ける。

この式の意味は、「互いに直交関係にある高周波キャリア信号 Acos(Ωt), Asin(Ωt) に、三角関数の入れ子構造になったところの、互いに直交関係にある 低周波FM変調信号 cos(βsin(ωt)), sin(βsin(ωt))のそれぞれを、三角関数に三角関数を入れ子にした関数とし、アナログ乗算して、電波電圧信号Vfm(t)を送信すること」、の意味と解釈できる。


ここにおいて、直交関係にある低周波 FM変調信号 cos(βsin(ωt)), sin(βsin(ωt))のそれぞれは、前者が、変調用基本波 βsin(ωt) に対して、偶数倍の高調波信号の無限級数となり、後者が、奇数倍の高調波信号の無限級数となって、FM変調波として周波数帯域が広がる特性を持つ。

それらの直交関係にある低周波 FM変調信号 cos(βsin(ωt)), sin(βsin(ωt))のそれぞれが、FM変調信号の振幅電圧最大値(係数)について、後述する第一種ベッセル関数(第一種) Jn(β) と呼ばれる関数値で表現できる、と考えられる。


もともとマイク等から入力する低周信号は、特殊化した一つの理想的sin波として、

 x(t) = βsin(ωt) 

と書ける。 {一般式は,x(t)=Σ(αi・sin ωit +βi・cos ωit) }

これを高周波キャリア信号波 Acos(Ωt) の位相 Ωt に加算して(位相変調として)載せると、

高周波のFM変調波は、次式で書け、

Vfm=Acos(Ωt+βsin(ωt)) 、加法定理により、

      =A{cos(Ωt)*cos(βsin(ωt)) - sin(Ωt)*sin(βsin(ωt)) } ・・・式(1)

と書ける。


この式(1)による高周波のFM変調波電圧式について、

sin関数の入れ子の式が現れている。

cos(βsin(ωt)) 、sin(βsin(ωt))

この2つの三角関数を入れ子構造にする式の演算値は、

低周波基本波 βsin(ωt) に対して、

 sin(βsin(ωt)) が、低周波基本波とその奇数倍の高調波成分の無限級数式、

 cos(βsin(ωt))   が、低周波基本波の偶数倍の高調波成分の無限級数式となる。

そして、それら振幅電圧値が、以下に示すベッセル関数( 第一種)Jn(β)の値となる。

 上の計算式の3行目の式  Jn(β)が、ベッセル関数( 第一種)の式、

その下の式、

cos(βsin(ωt)) の右辺が、低周波基本波の第二高調波以降の偶数次高調波の無限級数式。

さらにその下の式、

sin(βsin(ωt)) の右辺が、低周波基本波と、第三第高調波以降の奇数次高調波の無限級数式である。


(2) 「ベッセル関数(第一種)」の持つ電気的意味と数学的性質

前述の式のように、ベッセル関数Jn(β)の2Jn(β)が、FM変調波帯域内に存在する高調波成分の角周波数 2nω、または、(2n+1)ω に対する、振幅電圧最大値を意味する。


cos(βsin(ωt)) の右辺が、低周波基本波の第二高調波以上の偶数次高調波の無限級数式で、

さらにその下の式、sin(βsin(ωt)) の右辺が、低周波基本波と、第三第高調波以上の奇数次高調波の無限級数式を表現する。


よって、角周波数ωを横軸にとり、角周波数 2nω、または、(2n+1)ω に対する、振幅電圧最大値 2Jn(β) を縦軸にとりグラフを描くと、FM変調波に対するそれら高調波成分の分布状態とFM変調波の帯域幅を知ることができる。


(3) 各種の文献に見られる同関数の未定義状態、意味不明の記述、わかりにくさに伴って発生するモヤモヤの正体


おそらく、各種文献に、説明の論理や理解度にばらつきがあり、過去文献のコピペのような切り貼り編集方法で書いているので、読んだ側では意味不明の混乱した理解状態に陥り、何かがわからないが、何がわからないのかもわからない気分、と、モヤモヤと感じるのではないか(?)と思われる。


ここに、文献から読み取れないか、わかりにくいFM変調の性質を、次に列挙し明示する。


  1. ベッセル関数(第一種)が、突然、天下り的に文献に現れるが、ベッセル関数が持つFM変調電圧に関わる電気的意味が説明されていないので、文字通り、説明そのものが無いゆえに、その関数の意味と、使用する目的が全くわからない。

(理解するための説明が無い、結果だけが示される説明法になっている。)

=> ベッセル関数Jn(β)を用いた演算値である、 2Jn(β)の値が、角周波数 2nω、または、(2n+1)ω の正弦波に対する、振幅電圧である。


  1. FM変調波は、計算可能な周波数帯域幅を持つ。

その周波数帯域は、FM変調のために入力する低周波信号 βsinωt の奇数倍の高調波成分と、偶数倍の高調波成分により構成されている。

このFM変調電波の高調波成分の存在と、その周波数帯域の性質の説明がうまく伝わっていなかった。


  1. なぜ三角関数 sinx, cosx で、位相の変数 x が時刻 t の線形の式(直線の式 ωt+θ)の場合{ sin(ωt+θ), cos(ωt+θ) }は、単一角周波数ωのsin波またはcos波になるのに、三角関数sinを入れ子構造にすると、整数倍の高調波信号である歪み電圧成分が出てくるのか?


この理由は、数学的に三角関数 six, cosx が、マクローリン展開[5]できて、その式が、一次、二次、三次・・・の級数式が非線形となっている性質と、x:=sinωt として、非線形の性質を持ち、さらに、その マクローリン展開式によるべき乗の非線形演算の必然的な演算結果に従っていることが、FM変調に内在する原理的な本質的原因である。

    

   例えば、マクローリン展開式のx^2 の二次の項は、

   x^2=(βsin(ωt))^2 =β^2{sin(ωt))}^2 =β^2{(1/2){1-cos(2ωt)}} 

   ・・・このように2倍高調波成分と直流電圧成分となる。


同様にx^n=(βsin(ωt))^n ・・・これは、第n高調波以下の多重の周波数成分を含む。

この計算規則が、三角関数を入れ子構造にすると、無限の整数倍の高調波成分が現れる性質を、言葉による数学的な説明の曖昧さを完全に除去し、数式とその演算値で、明示的に説明できる。

  

  1. #(c)で書かれた低周波の高調波成分が実在するので、FM変調波をFMラジオで復調したら、高調波歪み成分が現れ、音質が悪くなるのではないか? というFM復調方式への心配の気持ちが起こる。

=>

FM変調波の復調方式は、入れ子構造の低周波信号sin(βsinωt)とcos(βsinωt)のどちらかの信号から、sin関数の逆関数 arcsin関数、またはcos関数の逆関数 arccos関数を用い、arcsin(sin(βsinωt))=βsinωt の演算か、arccos(cos(βsinωt))=βsinωt の演算を行えば、復調時の高調波歪みが数学的に完全に無い演算結果が βsinωt となる。

これは、もともと歪みの無い低周波信号そのものを数値演算でデジタル値の信号処理できることを意味する。

現代のマイコンやDSPを使った数値演算復調では、この歪みのないFM復調が実現可能になっていると推測できる。(現代のIC化されたFM/AMラジオ回路やソフトウェアはブラックボックスのため、内部論理/設計内容は全く見えなくなっている。)


一方、従来のアナログ式FM復調では、x ≒ sinx , x ≒ arcsinx のアナログ回路で近似演算する性質[1]を使っているため、x が0から大きく離れる振幅の大きな低周波信号を入力されたFM変調波の復調電圧には、マクローリン展開の一次式近似計算誤差による歪みが存在しているが、これまでは、暗黙の曖昧な理解度において、実用上微小な電圧歪みとして無視され、二次式以降の計算誤差は切り捨てられ、説明されてこなかった経緯があるようである。

(音質が良いと言われてきた従来のアナログ式FM復調ラジオは、復調音に、理論的に必ず二次以上の高調波歪み成分が残留している。)


ここにきてFM変調におけるベッセル関数の周辺で感じる、モヤモヤの霧が晴れて、目も前の視界がクリアに見えるようになった。


(4)FM変調を数式で表現し、そこから「ベッセル関数(第一種)」を導出を試みる。


調査した範囲では、この数学的導出を行っている計算例は、現在見つかっていない。

不完全ながら、ここでは前述のようにsin(x)関数、cos(x)関数をマクローリン展開してから、x=βsin(ωt) を代入すると、文献[1]にあるベッセル関数式(第一種)と非常に良く似た級数展開式が得られることが、以下の計算過程により判った。


関数 f(x)=sinx のマクローリン展開を行うと、

sinx=x -1/(3!)・x^3 +(1/(5!))・x^5+ … +(-1)^n/(2n+1)! ・x^(2n+1)+ …

       =  Σ(n=0 to ∞) (-1)^n/(2n+1)! ・x^(2n+1) ・・・式(2) を得る。


式(2) で、 x := βsinωt を代入すると、

sin(βsin(ωt))=Σ(n=0 to ∞) (-1)^n/(2n+1)! ・(βsinωt)^(2n+1)

                    =Σ(n=0 to ∞) (-1)^n・β^(2n+1)/(2n+1)! ・(sinωt)^(2n+1) ・・・式(3) を得る。


同様に 関数 g(x)=cosx のマクローリン展開を行うと、

cosx=1 -1/2! ・x^2 + 1/4!・x^4+ … +(-1)^n / (2n)! ・x^(2n)+ …

      =  Σ(n=0 to ∞) (-1)^n / (2n)! ・x^(2n) ・・・式(4) を得る。


式(4) で、 x := βsinωt を代入すると、

cos(βsin(ωt))=Σ(n=0 to ∞) (-1)^n/(2n)! ・(βsinωt)^(2n)

                     =Σ(n=0 to ∞) (-1)^n・β^(2n)/(2n)! ・(sinωt)^(2n) ・・・式(5) を得る。


式(3)は、低周波基本波 sinωt  の角周波数ωの奇数倍の高調波を含む電圧を加算した無限級数、式(5)は、低周波基本波 sinωt  の角周波数ωの偶数倍の高調波を含む電圧を加算した無限級数となる。


ここに、ベッセル関数( 第一種)[1]と完全に同型ではないが、 それと大変よく似た電圧係数と、βsinωt を基本波として、その奇数倍の高調波の無限級数と、偶数倍の高調波の無限級数が求まった。




残された課題:


1 式(3)、式(5)が、ベッセル関数(第一種)を係数とするβsinωt を低周波基本波として、その奇数倍高調波の無限級数と、偶数倍高調波の無限級数であることの数学的正しさを証明を要すること。

{式(3)(5)をベッセル関数(第一種)に変形する計算法が現在不明である。

このため文献[1]に記載されたベッセル関数が本当に正しい計算式になっているのか確証がとれていない。

ただし、ベッセル関数と式の形は異なるが、実用計算上は、式(3)、式(5)を使って、この式で、高調波成分と周波数帯域を数値計算可能である。}

 

2  Vfm(t) の式中、位相内の∫ x(t)dt は、なぜ、低周波入力信号x(t)を時間積分する必要があるのか明らかにする。


付録;

FM受信機(製品例)の受信動作例 (AOR社 AR-3000A)


参考文献/参考資料:

[1]アナログ回路 電子教科書 analog_sys.pdf 新原盛太郎様

[2]NI社様 FM変調資料

[3]FM変調解説資料 高知大学殿

[4]MIT OCW 6.003 Signals and Systems, “Modulation 2”

[5]高校数学教科書 数Ⅰ/ 数Ⅱ / ⅡB /Ⅲ (文科省認定済)

   三角関数,二項定理,三角関数の倍角の公式、テイラー展開、マクローリン展開 等




2020/09/05 ドラフトの暫定版投稿



2020年8月27日木曜日

VXO式水晶発振器を使ったFM変調器(TRIO/Kenwood TS-700)


図1. VXO式水晶発振器を使ったFM変調回路 10.7MHz VXO発振・変調部
(TRIO/Kenwood TS-700, copyright reserved by TRIO/Kenwood Co. Ltd.)

水晶発振器は、周波数または位相変化がほとんど無い安定した周波数で発振する特性があります。
このため、水晶発振器を使ったベクトル合成位相変調方式では、必要な周波数偏移
(40KH WFM zまたは20KHz NFM)を得るため、12MHz 近辺の小さな位相変調量を12逓倍して144-145MHz帯の必要な周波数偏移/位相偏移量を得るFM変調波を得る方式が、チャネル切り替え式自動車無線器(モービル無線)では多用されていました。

無線従事者国家試験でも、かつては、そうした水晶発振式ベクトル合成位相変調回路と逓倍回路が、FM変調方式出題の定番でありました。
しかし、例外的存在として、当時の人気機種と思われるTS-700(TRIO/Kenwood社)では、VXO方式の水晶発振回路について、水晶に直列するコイルとバリキャップ(可変容量ダイオード)によるFM変調方式が採用されていました。
発振周波数が10.7MHzと、こうした低い周波数でのFM変調は困難と考えられていました。

周波数偏移は、WFM/40KHz, NFM/20KHz と十分な周波数偏移が得られています。
前段のAFアンプは、TA7061 IC アンプによる、実に60dBという大変大きな電圧利得のハイゲイン・アンプになっています。[1]

その後、PLL式FM変調が主流になり、近代では、2000年を過ぎるころからDSPやマイコンによる数値演算式FM変調回路が主流となっています。

そうした数値演算式FM変調・復調を実現、理解するために必要となる、FM変調に関する計算式を図2.にまとめました。[2][3]
図2. FM変調関連の計算式

文献[2],[3]を参考にして、FM変調信号の電圧波形を時間の関数で書き、図2.にまとめました。




      図3. FM変調の計算波形    (Copyright reserved by MIT OCW 6.003, USA) 

MIT OCW 6.003を受講し、図3.に、FM信号電圧波形のアニメ画像を作りました。


     図4. FM変調の計算波形(自作オリジナル)

図4.は、Macbook Pro.(OSX Yosemite) で"Grapher"アプリを使い、図3.の計算を再現し、アニメ画像を作りました。


 図5. LTspice計算で再現した数値演算式FM変調波の過渡解析結果とFFT解析結果
(自作オリジナル)

図5.は、LTspice IV (Macbook pro. OSX Yosemite)にて、図3., 図4.と同じ数値計算を行い、
かつFFT解析で、周波数成分のスペクトルを見ました。
入力する低周波の変調周波数1KHzの偶数倍(2,4,6 倍,...)の周波数成分が見えています。
これはcos(βsinωt)によるサイン波をcos関数に入れ子にした演算結果によるものです。
sin(βsinωt)によるサイン波をsin関数に入れ子にした演算では、入力する低周波の変調周波数1KHzの奇数倍(1,3,5 倍,...)の周波数成分が現れます。これは、図2.計算式に従う結果です。

参考文献/参考資料:
[1] TS-700回路図 TRIO/Kenwood社
[2]MIT OCW 6.003 "Modulation2" , Apple iTunes, Youtube
[3]アナログ回路 電子書籍教科書 新原盛太郎さん

2020年8月17日月曜日

クワドラチュアFM復調回路の復調品質改良

以前、このブログに公開したクワドラチュアFM復調回路について、復調されるベースバンド信号の特性が、ごく簡単な方法でできることが判りました。

改良方式:

455KHz IFT の同調周波数を、キャリア信号のセンター周波数455KHzから約3KHz 下げる。このことにより、F/V変換回路の傾斜(スロープ)が線形特性に近似できるようになり、音質が大きく改善できます。

モトローラ社IC MC3357 で採用され、通信機にも広く普及した回路ですが、その動作原理が、長年、何も説明されないまま、時代が経過していたと思います。

以下、改良したクワドラチュアFM復調回路の、過渡解析(図1)とAC解析結果(図2)を示します。


        図1 クアドラチュアFM復調回路の過渡解析結果

説明:

中心周波数455KHz キャリア波の正弦波に、変調周波数1KHz (ベースバンド信号)のFM変調波を発生させ、10KΩの抵抗を通過した信号V1 と、コンデンサ10pFを通過して451KHz同調周波数とするLC共振回路に接続する信号V2 を乗算回路に入力。乗算されたアナログ電圧を、RC構成のローパスフィルタを通過した低周波信号V(OUT)を出力させます。

結果として、V(OUT)端子に、綺麗な形の1KHzの正弦波に近い復調信号が得られています。FFT解析結果は、復調信号に2次、3次・・・以上の高調波歪み信号が含まれていることを意味します。


図2 クアドラチュアFM復調回路のAC解析結果

説明:

端子V1, V2, V(OUT)の利得と位相ずれの量を、周波数軸400KHz〜500KHz帯域で見ています。

注目すべき点は、V2端子の利得の傾斜が455KHz中心にほぼ直線近似できる右肩上がりの傾斜(スロープ)特性を持っていることです。この直線近似される利得の傾斜特性から、入力されたFM変調波の周波数変化が、電圧の振幅変化に変換されることです。

このAC解析結果から、従来のクワドラチュアFM検波の説明では、クワドラチュア(quadrature)=直交の意味について、90度位相のずれた信号と、もともとのFM変調波を乗算させる、とされてきましたが、説明と命名に誤りがあったことがわかります。


参考文献

[1]モトローラ社 MC3357 FM復調IC データシート

[2]SANYO社 LA1800 AM/FM radio IC データシート

[3]SANYO社 LA1845 FM STEREO/ AM Radio IC データシート

[4]JRC社 NJM2550 データシート

https://www.njr.co.jp/products/semicon/communication_ic/fm_if?cat=4050

[5]JRC社 NJM2590/97 データシート 

[6]東芝 TA7792F AM/FM radio IC データシート

[7]東芝 TA8164P AM/FM radio IC データシート

[8]TRIO/Kenwood社 TS-670回路図

[9]インターネット上のquadrature FM decoder 資料、位相変化を利用した復調器

[10]OP Ampを使った位相シフト回路{本ブログ内記事中}

[11]Si4734/4735 データシート

[12]NS-73 データシート

[13]MIT OCW 6.003 “Modulation 2”

[14]FM変調講座資料 高知大学


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2017年10月8日日曜日

FM送受信機(トランシーバ)製作失敗の反省文

FM送受信機(トランシーバ)製作失敗の反省文
1  FM受信機
(1)スーパーヘテロダイン式FM受信機
図1. FM検波/復調回路の過渡解析結果 (LTspice(Linear Technology社開発)を利用しパソコンで計算。) 
(送信機から和音3重音を送信し、復調した和音の電気信号波形を見たところ)
シングルスーパーヘテロダイン式受信機の仕様
・VFO : 130MHz台 1TR LC共振発振回路[※1]
・受信周波数:145.00 MHz(コールチャンネル)、145.08MHz の2ch.[※2-1]
・OSC: 12MHz帯TR水晶発振器の12逓倍型 [※2-2]
・LNA: 3SK22[※3] x1
・Mixer: 2SC454 x1 ベース信号注入型 [※4]
・IFアンプ:10.7MHz 東芝IFアンプIC 7061P[※5] x2
・FM検波方式:レシオ検波(東光社10.7MHzディスクリミネータコイル使用)
・AFアンプ:NEC uPC20C[※6] 最大1W スピーカ駆動
・スケルチ回路:uPC20CのMute端子をアサート/ネゲート
現象:スーパーヘテロダイン式FM受信機を製作した。アンテナを接続し、電源オン後、144.08MHzを受信すると、近傍周波数の複数のFMチャネル通信が混信してしまう。
原因:「ラジオの製作」の製作記事では、セラミックフィルタ1個 10.7MHzの実装を指定していた。これはFM放送用帯域幅仕様でFMチャネル通過フィルタ帯域幅が広く、アマチュア無線144MHz帯 チャネル帯域幅20KHzよりずっと広すぎたため。
対策:不能。(基本設計からやり直しが必要となった。) 製作当時、水晶フィルタによる帯域エッジのキレの良いFM用高性能フィルタがあったが、高価で購入できなかった。(トランシーバ部品価格=数千円の数倍の価格) FM用水晶フィルタは部品サイズが大きく、製作済みの基板サイズ制約から実装できなかった。セラミックフィルタは安価だが、20KHz帯域幅に合う市販品はなかった。
145.08MHzの周波数は、3逓倍すると435.25MHzのATV(NTSC式テレビ)に対応できるので選定したが、実験途中にバンドプランの変更があり、1200MHz へATV帯が移動してしまった。
[※1] LC共振自励式VFOは、発振周波数が高いほど周波数安定度が悪くなる特性が見られる。市販のFMラジオではAFC制御で同調ずれを補正していた。FETのほうがTRより発振周波数が安定すると読んだ記憶がある。この説が正しいかどうか根拠は不明。本構成回路にはAFC回路がないので、時間的に受信局への同調がずれる現象が発生した。
[※2]こうしたVFO周波数が安定しない課題を、水晶発振器の周波数安定特性を使い解決しようとした考え方が読み取れる。水晶が144-145MHzのような高い周波数を直接発振できない課題を、逓倍回路で解決している。しかし、この逓倍により発生する高調波を減衰させるフィルタ性能が十分といえる工夫が見られない。
[※3]当時のデュアルゲートMOS FETの先端デバイスと思われる。これをRF段や、MIXER段、IF段に使用すると、高感度と混変調特性の改善が両立されると大きな広告が見られる。これは事実かどうか不明。
現在の通信機ではむしろRF段LNAは、大変高い周波数まで使えるBJT TRやICへ移行している。デュアルゲトートMOS FETはいつの間にか姿を見なくなった。IF段はICアンプへ、さらに受信機全体をワンチップICへ、最近ではデジタルIC製品も多種類出てきている。
メーカ側ではIC設計化、デジタル化信号処理の方向で進んでいるが、メーカ技術のノウハウが教育や書籍へフィードバックされず、設計内容がブラック・ボックス化し見えず、設計文化のギャップ拡大が見られる。
[※4] 書籍(1976年発行)の設計法では、TR一石でミキサー回路で構成している。しかし、書籍現本回路を再確認したところ、設計概念の根底に、ミキサー回路にはアナログ乗算機能が必要であることの理解の痕跡が見られない。(1968年がギルバート乗算器発明だから、これは周波数変換原理への理解が無い未熟な設計文化状況が存在していたと思われる。) 単に、一石のTRのベースに、受信RF信号とOSC信号が入力されており、これは加算回路なので乗算である周波数変換は不能になってしまう。OSC出力をC結合でエミッタへ接続する改造により、TRのスイッチング動作で、周波数変換動作をするように自分で考え改良した。[※b]
[※b]ごく近年の新刊:トランジスタ技術2015年1月号、情熱のFMラジオにも、TRスイッチンング動作式Mixer回路例がある。書籍の技術レベルは著者に依存し、こうした1970年代レベルの旧式設計から未だに21世紀を15年も過ぎても進歩の見られない回路採用が繰り返し掲載され続けている。これは、電子工学の学問や技術進歩が見られない、技術発展停止状態の印象を受けた。
近年の読者側の興味は小型マイコンボード/初歩のioTにあるが、アナログ回路は理解されにくいので、こうした入門者レベルに合わせないと書籍が売れない事情があるのかもしれない。
これは、おそらく素人より若干優秀なプロの記事が載るので、読者側では、進歩的業界の技術水準や技術動向がわからなくなってしまうのではあるまいか。世間では、日本の家電は世界一と未だに言う人を良く聞くが、海外のSNSを見ると海外在住日系人から見ても日本製家電の魅力は無いという見方が聞かれる。一方、アジア大陸生産の家電デジタル家電は安価だが、品質上の大きな課題、全く動作しない偽物の流通があることも聞かれる。そうした状況なので、努力のやりがいはあるかも。
2  FM送信機:
図2. FMワイヤレスマイクの変調動作の過渡解析オリジナル (2004年に発表したオリジナルの初期実験)

歪んではいますがひょっとして日本初の試みか? ネットで話題になりました。この回路図は、コイルの結合定数の指定が漏れています。L=L1+L2+M*√(L1*L2) こんなインダクタンス式だったと思います。
M=0.9くらいがモデルとして良い値です。
2.1 FMワイヤレスマイク
1200円で通信販売で購入した2石FMワイヤレスマイクを製作した。
現象:FMラジオ(ラジカセ)に電波が受信できない。コイルの巻き数、幅を変化させたが、どうしても電波が受信できない。
原因:平ラグ板の一箇所のはんだづけ配線が漏れていた。
対策の経緯:先生(家の近くの工業高校電気課の先生)が、ワイヤクリップケーブルで、その端子をショートすると、FMラジオからポワ〜ンとハウリング音が聞こえた。
先生がFMラジオの選局ダイヤルを回して、
「電波の子供(スプリアスのこと)が他にあるから、まだ調整が必要だね。」
と教えてくれた。これは、FMワイヤレスマイクのおそらくキット製品にもともとあった設計不良で、バイアス電圧が適切でないために、異常発振を起こしていた、と推定されるが、その現象を僕も先生も見抜けなかった。
この時代は、先生の給料でもオシロスコープは買えない。僕ら子供らは当然持ってないし、学校にある高価なものでも、76MHz〜90MHzのような高い周波数の電波を測定できるオシロスコープはない。世界にもあったかどうか。使えるのはテスター程度の全盲状態のような手探りと試行錯誤のエンジニアリング開拓期か。
・FMコイル幅を変化させたが、発振周波数を単一のものにすることはできなかった。
・コイルの巻き数や並列コンデンサの容量を変えたが、状態を改善できなかった。
・アンテナ線を、コイルタップにつけると、周波数が不安定に変化し、ラジオの同調から外れてしまうことに気づいた。
・コイルのタップ位置をずらしてアンテナ線をつけてみた。コイル巻線の1回巻き毎、全周についてタップ引き出しを試した。
アンテナの長さは78MHzに対する1/4λ=96cmのビニルリード線をつけた。長さを長くして、遠くに電波を飛ばそうと試みたが、失敗し、電波の伝達距離は5m程度が限界だった。
図3. バリキャップ式FM変調回路の過渡解析(FM変調波の品質が図2.よりずっと良い。)
このような測定器も、理論もない状況では、「試行錯誤法による解決法」がとられ、原因不明のまま、動作する回路の動作パターンを探した。[※a]
[※a]先進国では半導体・トランジスタ等価回路、発振理論などが科学者により理論構築がされていた古くからの歴史記録を見るが、国内には、そうした電気・電子・制御等、自然科学分野で、理論構築の研究記録や文献があまり見ない。見るのは八木宇多アンテナ、長岡半太郎さんのコイル(ソレノイド)の長岡係数、真空管ラジオの写真くらいで研究実績が非常に少ない感じ。おそらく日本は、江戸時代の鎖国以降、戦後になってようやく海外の電気工学、電子工学の書籍、文化の輸入が始まったらしい。
日本は文化の出発が既に出遅れ先進国に劣勢をとっていた。バブル景気の幻影の後、日本の真の実力の姿が見えてきたのかもしれない。技術の遅れは依然として解消されていないが、テレビでは何度も全く同じ古い昔の成功談を繰り返す放送が多い。こうした話を何度も聞いていると普通の人は耳にタコができていても気づかなくなる。
現在では、自動車用に交通取り締まりレーダー、気象降雨レーダが使われ、僕らもHRO FFT観測、干渉計を実験するまでになったが、僕らも所詮は、その程度。非力なんだと思う。
2.2「CQ Ham Radio誌」掲載 のハンディー型12逓倍式FM送信機
(1)現象:マイクへしゃべっても、音声がFM受信機から聞こえない。無変調状態となる。
(2)原因:記事の設計ミスというより、結果的にけして再現できない回路方式エラーによる記事だったことがわかった。(設計ミスで動作確認されていない回路が、そのまま書籍に載った。最近になってようやく「再現性」という言葉が使われ、その大切さが認識されるようになった。)
12MHz無調整型水晶発信機TRのエミッタ端子へ、1〜2石低周波アンプを接続した設計だったが、水晶発信器が固定した安定した周波数を発振する特性であるため、周波数偏移が全く発生せず無変調となった。(事実と異なる、再現性の無い記事が頻繁に専門的な書籍に良く載っていたが、僕ら一般の読者は、そのままそれらを本物と信じた。)
(3)対策:水晶発振回路を、リアクタンス管ベクトル合成位相変調回路(「ラジオの製作誌 50MHz FMトランシーバ」)に変更。バリキャップ容量を変化させることでLC発振周波数を変化させ、さらに12逓倍で、十分な周波数または位相変異を得るもの。対策後、FM受信機から音声が聞こえるようになった。(この記事は本物だった。)
(3)現象:1WのFM送信実験中、自宅UHFテレビに高調波による受信障害が発生した。ダミーロード50Ω (20W耐電力)を使用していたので、ビデオケース(シールド用小型鉄製ケース)をかぶせていないコイルから輻射される高調波がUHFチャネルと重なってしまったと思われる。
対策:不能。家族からのテレビ受信障害の苦情で、ただちに実験中止。
(4) PLL対応への遅れ
水晶発振チャネル式が主流の時代があり、水晶が大変高価であったため、144MHz全周波数帯のチャネル装備ができない人が多かったと聞いた。LC自励式VFOは、発振周波数が高くなるほど、周波数安定性がない特性が知られていて、144MHz VFOへの直接FM変調方式は使われていなかったと思う。低めの周波数のVFOをアップ・コンバージョンするプリミックス方式はあったかもしれない。
その後直ぐ、無線機メーカは、水晶チャネル逓倍式FM変調から、PLL VCOにFM変調をかける方式に移行した。
(課題:PLLは周波数また位相変動をキャンセルするように自動制御するので、VCO制御の時定数を遅くしないと、音声入力による周波数変化に追従して周波数変化が起こらなくなる。)
PLLはデジタル・マイコンでのデジタル式周波数制御に向いているため、デジタル技術を持つメーカがアナログ技術しか持たないメーカを次第に圧倒するようになっていた。
米国でCB無線が大流行し、その工場ゴミのPLLモジュールが、秋葉原で300円〜400円で買えた時期があった。メーカのPLL対応の流れに対抗し、FM変調送受信機も計画したが、実験途中で学校を卒業。
大学時代、学業は著しく思考負荷が重く、成績評価を得るのが厳しかったものの、比較的平和な心の安心感があった。就職・社会人になると、それどころではない地獄に突入した。巨人の星を信じていたのは人生戦略上の最大の誤りだったと、大変残念に思い、反省している。こうした精神論万能と超人的努力ですべてが実現可能と考える思想は、現代でも社会的文化構造に暗い影を落としたまま、大きな負の歪を生じさせたまま、改善されていないと心配するものです。
A. 時代とFM技術の推移
144MHzモービル無線(車載トランシーバ)花盛りの記事が1970後半の書籍に記載があり、430MHz運用はメーカ製品が無い、周波数が高く難しいと書いてある。水晶発振チャネル式が主流で、水晶が大変高価であったため、144MHz全周波数帯のチャネル装備ができない人が多かったと先輩から聞いた。TS-700も高価で、買える人は少なかった。水晶チャネルはオプションだったと思う。
空前の大BCLビームで、家電各社から10kHz機械式周波数読み取り短波受信ラジオがバカ売れした。しかし、その技術は未熟で、通信機メーカは既に1KHz周波数読み取りを実現済み。技術的に家電メーカの持たない潜在力を持っていたことがわかった。
その後、ラジカセがバカ売れする時代に入り、日本の家電は世界一と勘違いされる時代が来たのだと思う。その後、遅からずして、無線機メーカは、水晶チャネル逓倍式FM変調から、PLL VCOにFM変調をかける方式に移行した。
その後、430MHzハンディFMトランシーバがメーカから発売され、アマチュア無線人気は50MHzから430MHz FMへ移っていき、430MHz FMは入門バンドになり、土日は山岳移動運用が流行った。144,430は、朝、夕は、若い奥様が旦那様を呼び出す声が大変多く聞かれた。その後、一般市民用に、自動車移動電話が発売されたが、高価で普及はあまりしなかった。黒塗りの車の後部にオレンジ色キャップの黒いホイップアンテナが見られた。
ポケットベルの後、携帯電話が流行りだすと、無線機からは、若奥様方の声が聞かれなくなっていった。旦那さんを呼び出す奥様方は、携帯電話利用へ移行したと思われる。
1997年ごろカナダの携帯電話機会社 ノキア社で革命的発明があった。複素数信号処理による変復調方式の国際特許が取られた。時代は急激にSDR、デジタル通信へ進んだ。海外ではこうしたSDRラジオを熱心に研究する人々の情報交換が見られるが、日本では、ほとんどそうした動きが見られない。無線機には数値演算式変調方式と書かれたが、その方式はわからず、中身がブラックボックス化し、機密化していた。[※1]
現在では、小学生や中学生、高校生まで、スーマートフォン、携帯電話で、無資格・無免許でも、誰でも、そうした数値演算変調方式の無線通信ができるように表面的には恵まれた社会になった。しかし、買って使うだけという、全般的な文化低下の印象があり、インターネットには、大学の先生にも、必要水準に到達できていない講座や、大学生でも進歩性を感じない質問と回答が目立つように感じる。 スマホを使うと頭が悪くなるのは本当なのだろうか。
日本では、このスマホ普及の影響により、顧客層の主流が流れ、アマチュア無線局の局数が減少している。ところが、米国では逆に増加している。これは、社会に貢献する人材育成の考え方・国家戦略の差が表れている現象かもしれない。
[※1]: 僕は、そのブラックボックスと同機能の設計技術を、全くの空白状態から、独自に構築する努力をしています。長らく職人気質と聞く従来のハードウェア設計文化への違和感と、長期の誤認識設計結果の存在を見てからは、設計という学問の概念がそっくり抜け落ちているような疑問を感じました。こうした課題認識の元で、ソフトウェア設計で見られる従来からのトップダウン設計、段階的詳細化、構造化設計、物理・数学の概念を加えることにより、従来の課題が認識できない状態から、明確な課題を確実に短期に解決できる新しい設計文化構築、陳腐化し時代に合わなくなった、古すぎて使えない職人気質文化からの脱却ができたら、と願っています。

2015年9月19日土曜日

90MHz FM ワイヤレスマイクの実験

現在、FMワイヤレスマイク製品では、LC発振式FMワイヤレスマイクは見なれなくなり、マイコン制御PLL式FMのものが多いようです。

この記事のFMワイヤレスマイクは、バリッキャップと呼ばれる可変容量ダイオードを使ったLC発振式FMワイヤレスマイクで、電波の変調実験を安価に、短時間で、かなり容易に自作できるメリットがあります。

僕は中学時代に自分ではんだづけして自作した同一方式のワイヤレスマイクを現在も持っています。現在でも動くと思われます。

LTspiceで、こうした実験もパソコン上で再現できることが確認できました。
どの回路部分がどのように動いているか、パソコンで見られるということは凄いことだと思います。





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