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2017年3月5日日曜日

徹底解析:ダイオード検波回路 大振幅AM変調信号受信,DSB変調波受信,無変調キャリア受信,音質最適化

ダイオード検波回路の徹底解析:(暫定版)

大振幅AM変調信号受信動作,
DSB変調波受信動作,
無変調キャリア受信動作,
検波音質最適化の方式


1. 変調率100%以上の大振幅のAM変調波の検波特性

記事[1]で示したように、AM送信局/放送局の変調度が100%以上(変調指数が1.0以上)でも、変調波信号は歪み信号成分を含んでいない。

言い換えれば、通称「過変調」と呼ばれているAM変調波には、電気的関数として歪み信号成分は存在していない。

そうした過変調と呼ばれるAM変調波は、ダイオード検波回路による従来の「包絡線検波理論」によれば、AM変調波の包絡線が、電圧のマイナス側がカットされて、検波信号は歪むと現在でも言われている。[2]

では、実際にそうした「過変調」と呼ばれているAM変調波を、ダイオード検波回路はどのように検波動作するかをここで解析する。


図1.1 ,図1.2,図1.3 は、いずれも 変調率100%以上の大振幅のAM変調波を受信した場合の、ダイオード検波回路の出力電圧と、その周波数成分のスペクトルをFFT解析で見たものである。


図1.1  変調率200%以上の大振幅のAM変調波の検波特性

図1.1にて、従来の「包絡線検波理論」によれば、AM変調波の包絡線が、電圧のマイナス側がカットされて、検波信号は歪み、マイナス側の象限にある包絡線が、検波電圧に現れることになっているが、1KHz 変調率200%以上の検波信号には、そうした「マイナス側の包絡線が現れる現象」が出ていない。

すなわち、「過変調」現象は、ここのダイオード検波回路の動作条件では発生していない。

右側の周波数スペクトル解析に現れている1KHzの高調波成分 2KHz,3KHz・・・の整数倍の信号成分は、ダイオード電流の指数関数特性に由来して計算であらかじめ予測済の高調波歪みであるが[3]、この歪み成分は、前述の「マイナス側の包絡線」が存在しないために、その歪みは無いことになる。

図1.1では、「過変調」と呼ばれてきている受信入力電圧の信号形状がわかりやすいように、赤で変調度200%の信号を前面に表示させた。


図1.2  変調率100%以上の大振幅のAM変調波の検波特性 その2

図1.2では、最大の変調率と考えられてきている変調度100%の受信入力信号を水色で前面に表示し、「過変調」と呼ばれてきている受信入力電圧を背面に表示した。

いずれも、変調度が100%以上の信号を受信しているが、検波出力波形には、前述の「マイナス側の包絡線は現れていない。

すなわち、図1.1と同様に、「過変調」現象は、これら図1.2,図1.3のダイオード検波回路条件でも発生していない。

図1.3  変調率100%以上の大振幅のAM変調波の周波数スペクトル

図1.3には、受信されたAM変調波のスペクトル成分を、キャリアを中心にしてUSB側、LSB側にギャリア信号よりも大きな電圧が含まれていることをFFT解析にて表示したものである。

図1.3では、従来用語の意味において明らかに「過変調」の送信波が受信されているが、ダイオード検波の検波出力電圧には、前述の「マイナス側の包絡線は現れていない。
(すなわち、過変調の現象は発生していない。)


そうであれば、どのような条件ならば、「過変調」に見える(見間違う)現象が、検波回路出力に現れるだろうか? それについて、項番#4に説明する。



2. DSB変調波の検波動作

ダイオード検波回路をもったラジオや受信機で、DSB変調、またはSSB変調の電波を受信すると、「モガモガ」という音声が聞こえる現象は良く知られている。

その「モガモガ」の音が、どのような仕組みで発生しているかを、図2.1,図2.2を使って説明する。

図2.1 DSB変調波の検波動作

図1.1では、受信電波の電圧源として、キャリア信号=0[V]として、USB信号、USB信号として、1KHzのサイン波をベースバンド信号とするDSB変調波電圧源(疑似DSB変調送信機)を3個のサイン波の加算された電圧源で構成し、そのDSB変調信号を、ダイオード検波回路に入力している。
このようにDSB変調波では、キャリア信号成分が無い。

検波出力には、USB信号とUSB信号の周波数差分である2KHzと、その高調波が現れている。
この現象は、ダイオードの高周波特性である周波数変換動作と、ダイオード電流の指数関数特性により発生している。
このダイオードの周波数変換動作は、ダイオードミキサについての特性として既に良く知られている。

AM変調波の受信では、キャリア信号とUSB信号間、キャリア信号とLSB信号間のそれぞれの周波数変換で1KHzの検波信号が現れるが、DSB変調信号受信では、キャリア信号が存在しないために、このように変調波成分USB,LSB成分同士が、周波数変換動作を起こす。

キャリア信号が無いため、DSB変調波は、ダイオード検波回路ではベースバンド信号が復調されず、変調波成分USB,LSB成分同士が、周波数変換動作で、低周波領域に出力される。

図2.2 DSB変調波の検波動作と、検波信号のスペクトル成分 その1

図2.2は、図2.1の検波出力信号の時間軸を拡大し、また、ここでは存在しないキャリア周波数を中心にした、受信されたDSB変調波のLSB信号とUSB信号の周波数スペクトラム分布を、FFT解析にて周波数軸の周波数幅を狭帯域で見たものである。

赤線、青線、緑線の順で、それぞれUSB,LSB信号成分とその検波出力の電圧を上昇させている。
左下の回路図の下のグラフは、上側が、入力されるDSB変調信号、下側が検波電圧である。
検波電圧は、入力されるDSB信号電圧の上昇により、赤、青、緑の順番で上昇し、それぞれの検波信号のグラフ線は細かく振動しているのが見られる。
この検波信号の細かい振動は、次の図2.3に時間軸を拡大して表示し、その細かい振動を示した。


図2.3 DSB変調波の検波動作と、検波信号のRC回路での振動電圧波形

図2.3は、赤線の検波信号の時間軸を拡大して表示した。
このように細かく振動している周波数の実体は、FFT解析結果を見ると、LSB成分、USB成分の周波数と完全に一致している。

すなわち、検波出力電圧は、ベースバンド1kHzに対し、2KHzの低周波の太い線に見えていたものが、時間軸を拡大すると、LSB/USB周波数成分の細かい高周波変調波の正弦波で構成されていることがわかる。

実際の音声や音楽のベースバンド信号は、多数の正弦波の多重周波数バンドを形成している。このため、多重周波数成分のDSB変調波の変調波信号同士が複雑に絡み合った周波数変換動作がダイオード内部で起こるので、モガモガと聞こえる。


3. 無変調AM波(キャリア)の検波動作

ダイオード検波回路をもったラジオや受信機で、アナウンサが何もしゃべっていない、音楽も流していない無変調状態のキャリア波を受信すると、雑音が少なくなり、無音になる現象を、図3.1,図3.2 を使って説明する。

図3.1  無変調AM波(キャリア)の検波動作 その1

一見して、キャリア信号は、単なるDC電圧に変換されているので、この検波動作は、商用交流電源の整流回路の動作と同じと見間違えてしまう。
ところが、この検波回路で起こっているのは、そうした交流の整流とは全く性質の異なる電気現象が起こっている。

別記事で書いたように、検波回路負荷のRC並列回路からコンデンサを除くと、負荷抵抗両端には、同じ電圧で、プラスとマイナス両方の高周波電圧が現れる。

これは、ダイオードの高周波特性の特徴で、ダイオードでは高周波周波数領域では、高周波電圧に対する利得が上昇し、殆ど貫通するような性質が見られる。
(この特性は交流の整流では周波数が低いために出てこない。)
この性質を利用したのが高周波ダイオードスイッチとして知られている。
[3]

検波回路の負荷を抵抗にコンデンサを加え、RC並列回路にすると回路動作は激変し、キャリア信号等の高周波がコンデンサを通過してグランドに落ち、入力される高周波電圧より大きくドロップしたDC電圧がRC並列回路に現れる。[4]


図3.2  無変調AM波(キャリア)の検波動作 その2

このDC電圧が現れる現象は、一見すると交流の整流に見えるが、上の緑、青、赤線のDC電圧は細かいキャリア周波数によるなめらかな波打つサイン波の信号で形成されている。
そのキャリア周波数の存在は、FFT解析上のキャリア周波数点で、鋭いピークに現れている。
このように検波動作は整流動作とは全く異なる電気現象である。
RC並列回路はローパスフィルタとしての性質を持ち、そのRC並列回路の過度現象として、AM変調波、DSB変調波の高周波信号成分で、細かい高周波電圧振動を起こしている。[5]


4. 過変調と見間違う検波動作現象の再現とダイオード検波の高音質最適化方式

過変調と見間違う現象を再現したものを図4.1に示し、変調率が100%以下で、最も検波歪みが少なくする音質を最適化する方法を図4.2に示す。

4.1 過変調と見間違う検波動作現象の再現

図4.1で、変調度40%の赤線は、なめらかな1KHzのベースバンド信号のサイン波として検波され、その周波数スペクトラムは、高調波歪み成分が大変少ない。

赤線に対して、変調度を大きくして100%を超えると、包絡線のマイナス側に現れていたものが、プラス側の象限に顔を出す現象が見られる。
この現象が、歪みの無いはずの送信波が、あたかも送信波が歪んでいるような錯覚(「過変調=音が歪む」)を与える。



図4.2 ダイオード検波の高音質最適化方式

このような過変調に錯覚する現象が現れる条件は、図4.2のように、RC並列回路の遮断周波数を5KHz程度の高めの音声周波数上端に移動させるものであることがわかった。

図4.2では、検波回路の利得は0Hzから3KHz程度までフラットで、AM変調での上限と考えられる4.5KHzでも利得差は非常に小さく回路構成できる。

このため、結果的にこうした音声の高域を通過させるようなローパスフィルタ特性を持たせると、ダイオード検波回路の音質は高域まで綺麗に出て良い音質に感じて聞こえるようになると考えられる。


5. RC型LPF(ローパスフィルタ)を負荷にしたダイオード検波回路の動作

ダイオード検波回路の負荷には、ローパスフィルタ特性を持つRC並列回路が使用される。
この負荷を、RC直列回路のローパスフィルタで交替できるか否かを判断する計算を行った。


図5. RC型LPF(ローパスフィルタ)を負荷にしたダイオード検波回路の動作

ダイオード検波回路の負荷に、RC直列回路のローパスフィルタを使用すると、受信感度が大きく下がってしまうことが分かった。
原因は、Rが大きいので直列RC回路では、R両端の電圧降下が大きいため、その分、出力になるC両端電圧が下がってしまうことによる。

このようにRC直列回路のローパスフィルタで交替すると受信特性が劣化してしまう。

引用記事
現在、ここを編集中(暫定公開のため)


2017年2月4日土曜日

LTspiceによるダイオード検波回路の等価回路計算とモデリング評価

既にLTspiceには、トランジスタやダイオードの最新理論による等価回路が実装され、精度の高い回路動作の計算が大変高い周波数VHF,UHFまでできているらしい。

身近な非線形素子として最も基礎的なダイオードの検波回路動作が、従来から久しく知られている指数関数によるダイオードの直流電流式 i(t)=Is*{exp(v(t)/Vt)-1}と、それを基礎にしたダイオードのDC等価回路で、どこまでLTspiceに近づけるのか試算してみた。

結果は、まだまだLTspiceの計算精度には届けないが、ある程度のダイオードの電気的特性についておおまかな定性的理解と、数値計算上の計算値近似が可能になる感触を得た。

最初に、一番良い計算結果となったダイオードのDC等価回路による計算結果と、BAT54ダイオードの計算結果を図1.で比較する。

(現在、高周波のダイオード等価回路モデルの資料が無いので、今回の計算アプローチはここまでに留まります。)

図1. ダイオードのDC等価回路モデルによるダイオード検波回路の動作

図1.に、DC等価回路モデルによるダイオードBAT54計算モデルと、LTspice実装のBAT計算モデルのAM検波電圧の過渡計算結果を示す。

青線:AM変調電圧 変調指数1.0, ベースバンド 1KHz 100mV ピーク電圧の入力信号
緑線:DC等価回路モデルによるダイオードBAT54計算モデルによるAM検波電圧出力 1KHz
赤線:LTspice実装のBAT計算モデルのAM検波電圧 1KHz

結果:
(1) 緑線、赤線ともにPeak Detector/Envelope Detector理論によるAM変調波電圧のピーク電圧(青線)をホールドする動作は再現していない。

(2) 緑線のDC等価回路計算モデルでも、LTspiceの計算結果に類似した波形と、電圧数値が出てきた。

緑線のDC等価回路は、理想ダイオードの計算式に基づく電流源へ、接合容量12PFのコンデンサを並列に接続し、かつ直列抵抗をかまし、かつ電圧Vtの値を、赤線に近づく様に一種の現物合わせ込みの調整をした。

図2. 小電圧入力 DC sweep計算結果

DC sweep計算は、高周波であるラジオ電波電圧に対しては、殆ど計算の意味をなさないが、試しに0〜100mVのDC電圧を入力し、理想ダイオードの計算式と、LTspiceのBAT54モデルの出力電圧を比較した。
(国内の書籍は、現在でもDC電圧でのみAM検波理論を論じている。すなわち100mV以下のDC電圧で、順方向電流が良く流れるか否かだけに気をとられ、肝心の中波放送/RF領域のゲイン・位相特性をとらえる考え方に気づいていない検討・製作・解説事例が多い。)

理想ダイオード電流値を見ると、指数関数の持つ曲線の特徴が見えるが、LTspiceのBAT54モデルでは、指数関数というよりも直線近似できるような計算結果となった。

DC sweep電圧を上げてゆくと、指数関数の計算値がぐんぐん上昇するので、両者の計算の誤差は大変大きくなるので、やはり理想ダイオード計算式ではDC特性であっても、近似計算は到底できない、という結果になった

表現が不適当になるが、基本的には、AM検波回路の計算に、理想ダイオード式を使うのは無理そうである。

図3. 理想ダイオードモデルとLTspice BAT54モデルの検波動作比較

FFT結果を見ると、理想ダイオードの指数関数から予測される周波数変換特性は、LTspiceのBAT54計算値と類似した特性が見られる。
しかし、ダイオードに流れる電流値を比較すると、理想ダイオードでは計算式通りに、マイナス側の電流がカットされてしまい、ダイオードの高周波特性である貫通動作が見られず、結果、検波電圧値も大きく外れてしまう。

どちらにしても、AM検波モデルの両者とも、従来のPeak Detector/Envelope Detector理論によるAM変調波電圧のピーク電圧をホールドする動作は再現できない。

両者とも計算値は、AM変調電圧ピーク値をホールドしておらず、どちらにしても実際のダイオード検波回路は、従来検波理論に従っていない、それとは異なる動作をしている。


図4. 過渡解析とFFT計算結果 周波数レンジ最大幅

図5. 過渡解析とFFT計算結果 周波数レンジ キャリア周波数近傍

図4, 図5に周波数変換動作がどうなっているか、理想ダイオードモデルと、LTspice BAT54モデルを比較した。
検波動作の基本原理として僕がこれまで書いてきた周波数変換特性により、ダイオードの低周波検波電圧が出るという考えは、定性的な特徴は再現した。

LTspiceの計算結果と実測データをオシロスコープで観測で比較すると、この課題は、よりはっきりすると思います。

(現在、震災の影響で僕の実験室が使えない状態のため、お読みになられた方は、ぜひ、オシロスコープで検波回路の出力波形を見て欲しく、よろしくお願いします。)



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Revision
-0.1-(Jun.27,2017)
図1.の出力信号電圧の変化は、次の講座で説明されている f(t)=cos(t)+C, g(t)=exp(αt)
の畳み込み積分の結果 f*g の波形にとても良くにています。

 Exploration of the Convolution Accumulation Applet

(Copyright by MIT/US and Mr.Youtube)

三角関数電圧にDC電圧を加えた関数を、重み関数が指数関数で減衰する特性にも見えます。
RC並列回路が、重み関数 g(t)=exp(-αt) 、その入力 f(t)=cos(t)+C がダイオードによる周波数変換後の低周波信号電圧に対応できそうに思える。

すなわち、
f(t)=cos(ωs*t)+Vdc
g(t)=exp((-1/RC)*t)
の畳み込み積分で、ダイオード検波回路の出力電圧が求まるのではないかと思う。
{どなかたかチャレンジ願います。おそらくまだ誰もできていないと思います。}
(July.21, 2017)

Sep.22,2017 :図4(ダイオードの周波数変換効果特性を見る図)画像ファイル挿入ミスを差し替え

Jan.23, 2018 :一部分、文章遂行



2017年1月30日月曜日

ダイオードAM検波回路に見られる広帯域周波数上の複数放送局の同時受信検波特性

ダイオードの持つ周波数変換特性を使い、広い帯域の周波数に出現するAM送信局が、同調操作無しで、バンド帯域内の全てを一度に受信する機能が動作するかどうか確認しました。
NHK,TBS,IBSの周波数のAM放送局を想定し、受信動作させたところ、全ての放送局が同時に復調されました。

このアイディアは、エアーバンド受信機のYoutube動画をみてひらめきました。
おそらく同じ原理と思います。
この同時の周波数変換動作も、従来のEnvelop Detector/Peak Detector理論では説明できないと思います。

図1. ダイオードAM検波回路に見られる広帯域周波数上の複数放送局の同時受信検波特性


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