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2017年4月20日木曜日

キャリア周波数・アナログ乗算式ベースAM変調方式(仮名称)の基礎計算実験

キャリア周波数・アナログ乗算式ベースAM変調方式(仮名称)の基礎計算実験

従来方式によるベース変調方式では、出力電圧が無変調になる不具合現象が出ることは、
・実機
・LTspice計算
・数式による計算
について既に示した。

ここでは、こうした従来方式によるベース変調方式をどこまで変調動作特性を改良できるか、BJTトランジスタ1石に条件を限定してアナログ乗算器の特性を引き出せるか、LTspiceのシミュレーション計算で見積もった。

方式の変更:
・TRのベース側に、DC電圧源で底上げしたベースバンドAF信号を入力する。
・TR側のコレクタ側に、キャリア周波数となるRFサイン波を入力する。
・両者の信号をTRに入力し、アナログ乗算機能が出せるかどうか確認する。
ベースには定電流源500[uA]を入力し、TRがコレクタ電流Icが飽和しない動作領域で動かす。


結果:
入力するAF電圧が制限されるが、AM変調自体はかかる。
変調度が浅いため、実用にはならないと思われる。
近接スプリアスの発生があり、歪み信号の電圧レベルは低いが、アナログ乗算器としては歪みが伴い、けして綺麗な音質は得られない。
(BJTトランジスタ単独でのアナログ乗算動作は実用的ではない。ギルバートセル型BJT TR乗算器の特性よりも、性能は大きく劣る。)


図1. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+広帯域FFT解析

図1.に示すように、浅くAM変調はかかっており、AF信号電圧の振幅変化に対するそれほど歪んでいないAM変調波の波形が見られる。
高帯域周波数でのスプリアス発生は、それほど酷いものでは無いが、けして良い特性とは言えない。


図2. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+狭帯域FFT解析(V単位)


図2.で示すように、[V]単位で見ると、キャリア周辺のLSB,USB 1KHzのピーク電圧が見える。
これ以上、深い変調を与えると歪みが多くなってしまう。


図3. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+狭帯域FFT解析(dB単位)

図3.で示すように、[dB]単位で見ると、キャリア周辺のLSB,USB 1KHzのピーク電圧周辺に沢山のベースバンド高調波歪みがの存在が見える。
アナログ乗算器としての特性を良くは出せていない。


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2017年4月6日木曜日

従来式2段コレクタ変調によるAM変調信号の歪み現象を数式で表現する

従来式2段コレクタ変調によるAM変調信号の歪み現象を数式で表現する

ドライバ段TRの出力電圧式:V1(t)[V]
V1(t)=Vc*sin(ωc*t)*{Vdc+A*x(t)} …(1)


Vdc=12[V]
A=ドライバ段TRアンプの利得[倍]
ωc=2*π*fc ; 搬送波(キャリア)の角周波数[rad・Hz]
fc=50x10^6[Hz]
x(t)=Σ bi*cos(ωi*t) , here { i=1,2,3,・・・N; N≧1} ベースバンド信号


図1.  2段式コレクタ変調によるAM変調回路のブロックダイアグラム
(2段目の乗算器で歪みが発生する。)


ファイナル段TRの出力電圧式:V2(t)[V]
V2(t)= V1(t)*{Vdc+B*x(t)}
       = Vc*sin(ωc*t)*{Vdc+A*x(t)}*{Vdc+B*x(t)}
       = Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*B*x(t) +Vdc*A*x(t)+A*B*x(t)^2}
       = Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*(A+B)*x(t)+A*B*x(t)^2} …(2)

変調トランスの中間タップと終端タップで、
AF信号電圧は、トランスのコイル巻数に比例すると仮定すると、
B=2*A …(3)
x(t)を特殊化し、単一サイン波と仮定する。
x(t)=Vs*cos(ωs*t) …(4)


式(3),式(4)を、式(2)に代入すると、
V2(t)=Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*(A+2*A)*Vs*cos(ωs*t)+2A^2*Vs*cos(ωs*t)^2}
       =Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*3A*Vs*cos(ωs*t)+2A^2*Vs^2*cos(ωs*t)^2}    
=Vdc^2*Vc*sin(ωc*t)
+Vdc*3A*Vc*Vs*sin(ωc*t)cos(ωs*t)
+2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t)cos(ωs*t)^2


ここで、
Vdc^2*Vc*sin(ωc*t) は一定振幅のキャリア波,
Vdc*3A*Vc*Vs*sin(ωc*t)cos(ωs*t) = Vdc*3A*Vc*Vs*(1/2)*{sin((ωc+ωs)*t)+sin((ωc-ωs)*t)
これらは、それぞれ AF信号 ωsのUSB波電圧とLSB電圧


2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t)cos(ωs*t)^2 は歪み変調波で、
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){ 1-sin(ωs*t)^2}
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){ 1-(-1/2)*{cos(2ωs*t)-cos(0)} }
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){ 1+(1/2)*{cos(2ωs*t)-1}}
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){1+(1/2)*cos(2ωs*t) -1/2 }
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){1/2+(1/2)*cos(2ωs*t)}
=A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){1+cos(2ωs*t)}
=A^2*Vc*Vs^2*{sin(ωc*t)+sin(ωc*t)*cos(2ωs*t)}
=A^2*Vc*Vs^2*{sin(ωc*t)+(1/2)*sin((ωc+2ωs)*t)+sin(ωc-2ωs)*t)} ....(5)


式(5)は、AF信号の2倍高調波歪みであるところの、
A^2*Vc*Vs^2*(1/2)*{sin((ωc+2ωs)*t)+sin(ωc-2ωs)*t)}  ...(6)
式(6)の電圧歪みが発生したことを意味する。


式(6)は、理想乗算器が2段接続された場合なので、
C級アンプでは、式(6)は、さらに大きく歪む。


おおまかには、AFの2倍高調波歪み波と、
振幅電圧が変化するキャリア変化成分
A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t)
が加算されて現れる。

すなわち、(困ったことに)キャリア周波数の振幅もベースバンド信号電圧の2乗に比例した電圧成分で揺れる。


しかし、実際のファイナル段で、コレクタ電流 Icが飽和してしまうと、その揺れが見えなくなり、変調が浅い現象が出るかもしれない。


ここでの計算は、電圧式のみを計算しており、コレクタのRFC負荷=不明値の抵抗成分で3W出力を仮定した電圧降下を計算する必要がある。


設計の基本思想として、アナログ乗算器を2段にするという発想は、本来は、あってはならない設計ミスである。
ベースバンド信号の2倍高調波成分が、変調帯域内に現れることになり、音質は劣化してしまう結果を招く。


改善策として、ドライバ段TRにだけにコレクタ変調をかけ、ファイナル段は、リニアアンプ動作させるのなら、問題は少なくなる。
しかしそれでも、コレクタ変調方式自体が、アナログ乗算動作特性品質が良くないので、製品レベル品質として、いかがなものか、十分納得のいく不具合となる。

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Rev 0.1: Apr.10, 2017 図1. 従来式2段コレクタ変調方式のブロックダイアグラム追加