無調整型水晶発振回路は、従来より長い間知られたもので、無調整で発振するので、安定した周波数で当然のように安定して発振し、綺麗なサイン波(正弦波)を生成すると期待されており、不安定な発振動作や高調波歪みが発生する現象に言及された例を見ない。
ところが、条件によっては、以下のような不安定な発振動作が起こり得ること、また大変歪んだ発振波形で高調波歪みが多くなる現象が出る可能性が、LTspiceの計算により示された。
1. 無調整型水晶発振回路の不安定発振動作と高調波歪み発生現象
図1.1 無調整型水晶発振回路の不安定発振動作 発振開始タイミングから発振初期 |
5V側の波形は安定しているが、下側の波形がだいぶ振幅が乱れている。
FFT解析では、高調波歪みも多い。
このような現象は、LC共振回路を出力負荷に持たせる水晶発振回路では起こらないことをLTspiceと実機測定でも良く見てきた。
図1.2 無調整型水晶発振回路 発振中の不安定動作 |
発振開始後も、波形がところどころ発振がと切れるような割れる波形が見られる。
水晶モデルがおかしい、計算刻みが大きいのではないか、とも考えられたが、
計算刻みを細かくし、または水晶モデルを変更しても、現象が改善しない。
図1.3 無調整型水晶発振回路 発振中の拡大波形 |
この無調整型発振回路は、VXOと呼ばれる水晶発振回路にも多用されてきている。
このブログの過去記事で、その高調波歪みが発生する可能性を、計算で示した。
図1.4 水晶モデル |
ATカットモデルの適正なパラメータにしても、現象は改善されない。
2. 解決方法
現在、解決方法として、2つの方式が提案され、計算は成功した。
その解決方式では、大変優れた高純度の正弦波がLC共振回路無しで、かつ振幅電圧が無段階にレベル調整できて出力できることが判明した。
世界のブレインには驚かされることが多い。
水晶メーカでないと、水晶振動子のパラメータ測定は難しい。
スペアナは高価なので利用できる環境は用意できないことも多い。
このため、気をつけないと、スプリアスの多い発振に気づかない可能性がある。
関連記事:
LC共振回路を負荷とする水晶発振回路では、上記のような発振電圧が乱れる現象は出にくい。VXO発振回路は、無調整型発振回路が使われることが多いので、発振の安定度とスプリアスに注意が必要という結果となったので、実測による歪み特性、波形測定は重要と思われる。
トランジスタによる水晶正弦波発振器の設計 (14MHz)
0 件のコメント:
コメントを投稿
現在コメント機能に不具合が出ています。お手数ですみません。
メッセージは、メールでお送り願います。