2017年4月23日日曜日

ヘンテナのSWR調整方法を計算で求める(ヘンテナの謎を解き明かす)

50MHz(6mバンド)用アンテナとして人気のある「ヘンテナ」を、「モーメント法」[1]に基づくアンテナ・シミュレータMMANA(Copyright by Mr.Mori/JE3HTT)を使い、その謎の解明を試みました。

課題:
(1)ヘンテナを作ったが、SWRが送信の実用範囲と言われている1.5以下に下がらない。
(2)給電エレメントをずらしても、SWRの下がる位置が現れない。
(3)そもそも、どの位置に給電エレメントを位置づけるのか、同調周波数と給電エレメントの配置場所があらかじめわからない。
(4)使える周波数の帯域幅がわからない。
(5)どうみても3〜5エレ八木と同等の利得が得られるという噂は本当なのか。

1. マッチング・エレメント位置とヘンテナの電気的特性の計算データ

「ヘンテナ」の特徴、優れている点に、長方形ループ(全体長=2λ)の形を変化させずに、給電エレメント位置をずらずだけで、SWRが1.5以下の送信用の実用範囲に入るというものがあります。
項番#4に示した、給電エレメントを、それぞれループ下側から、95cm,90cm,85cmと5cm間隔で3点を取り、その電気的特性を計算しました。
その結果は以下の通りです。

Hentena Tuning  
Stab   L     C     Q     f0         BW     SWR at 50.1MHz    Z(Ohm)
95cm 7.2uH 1.5pF 29.4 49.320MHz 1680.4KHz 3.15/50.1MHz   73.40+j69.46
90cm 7.0uH 1.4pF 28.7 50.036MHz 1742.4KHz 1.55/50.1MHz   76.95+j5.68
85cm 6.7uH 1.5pF 27.6 50.755MHz 1840.1KHz 2.63/50.1MHz   79.83-j56.06

この計算結果では、確かに同調周波数 50.036MHz に、SWR=1.55 の最小値が現れました。
Qが高いアンテナで、同調がシャープになる特徴が見られます。

5cmの給電エレメント移動でも700KHz〜800KHzくらい同調点が敏感に変化する特性が出ました。
インピーダンスの抵抗成分(インピーダンス実数成分)は77Ω前後で、インピーダンスの虚数部が、給電エレメントの位置で、インピーダンス変化は、主として、インダクタンス成分の変化として現れました。

給電用フィーダは、特性インピーダンス50Ωの5D2Vよりも、特性インピーダンス75Ωの5C2Vがマッチング結果が良好になることが分かりました。


2. マッチング・エレメント位置によるSWR特性の変化特性

図2.1  SWR (給電エレメント位置=85cm)

図2.1 のように、給電エレメント位置を、90cmから5cm上にずらすと、SWR同調点は、大きくずれ、750KHzくらいずれてしまい、SWR=3.15 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できない結果です。


図2.2  SWR (給電エレメント位置=90cm)

図2.1 のように、給電エレメント位置が、90cmで、SWR同調点は 50.036MHzで、SWR=1.55 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できそうな値になっています。



図2.3  SWR (給電エレメント位置=95cm)

図2.3 のように、給電エレメント位置を、90cmから5cm下にずらすと、SWR同調点は、大きく下側にずれ、750KHzくらい下がってしまい、50.1MHzで、SWR=3.15 で、これは、CW/SSB利用帯域では利用できない結果です。


以上の結果から、目的周波数に同調させるには、1cmくらいの精度で給電エレメント位置を調整する必要があり、5cm間隔では一挙に750KHzも同調がずれ、SWRは3.0を簡単に越えてしまう結果になりました。

この給電エレメントのスライド調整は、同調周波数がシャープで、スライド位置に約1cm精度の調整が必要となる大変センシティブな特性があるようです。


3. マッチング・エレメント位置によるインピーダンスの変化特性

項番#1に示したインピーダンス計算値に従った、インピーダンスの実部、虚部の変化を、図3.1〜図3.3に示しました。
インピーダンスの虚数部=0 になる周波数が、「ヘンテナ」の同調点です。

確かに、ヘンテナの同調周波数は給電エレメント位置に敏感に対応して大きく変化するという、同調点がシャープで送信可能な周波数帯域が狭くなる特性が見られます。


図3.1 インピーダンス特性 (給電エレメント位置=85cm)

図3.2 インピーダンス特性(給電エレメント位置=90cm)

図3.3 インピーダンス特性(給電エレメント位置=95cm)

4. マッチング・エレメント位置の図

図4.1〜図4.3は、それぞれ給電エレメント位置=85cm,90cm,95cmの時の、エレメント編集画面のショットを示しました。

図4.1 エレメントの編集(給電エレメント位置=85cm) 

図4.2 エレメントの編集(給電エレメント位置=90cm) 

図4.3 エレメントの編集(給電エレメント位置=95cm) 

5. 実験での検証

僕の実験では、横1m、縦3mの長方形ループで、SWRは3.0を越えてしまい、送信可能な特性は得られませんでした。
給電エレメントは、IV線3mmΦを使い、縦エレメントに5cm間隔でビニル被覆を向いた調整点を離散させてとったため、これでは、同調周波数が目的周波数に合わなくても仕方ない結果だったと思います。(屋根上での調整はこの精度でも限界で、調整作業は大変危険です。広場でマスト高を約1/2波長にするのが良さそうです。)

「ループアンテナは送信可能な周波数帯域が広い」と教わっていたので、「ヘンテナ」も50MHz〜54MHz全帯域で使える、と実験当時思ってましたが、間違って思い込んだ可能性があります。
(良い結果がでず申し訳ない気持ちがありますが、計算と、実験結果は矛盾していないと思います。)

別記事で、「ヘンテナ」のエレメント長を最適化したものでは、横エレメント=90cmで、CW/SSBバンド向けに好結果になり、やはり、75Ωの給電線5C2Vの利用が良い、という計算結果でした。


[ Reference ]
[1] R. F. Harrington: “Field Computation by Moment Methods”, IEEE Press, New York, 1993
(Recommended)


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2017年4月22日土曜日

BJTトランジスタ1石によるAMコレクタ変調特性の基礎計算実験

BJTトランジスタ1石によるAMコレクタ変調特性の基礎計算実験

従来から良く知られているBJTトランジスタを使ったAMコレクタ変調の電気的特性について、アナログ乗算器としての特性が1石のトランジスタ構成で、どこまで出せるか、その性能限界を見極めるため、LTspiceを用いて性能評価を行った。
その結果、浅めのAM変調では、ある程度のアナログ乗算器としての性能が出せるものの、その性能や特性には限界が見られ、デバイス技術の発展した現時点でも、ギルバートセル乗算器や真空管より優位となるような性能を引き出すことは、困難かもしれないことが判明した。

1.1 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1

トランジスタ式小信号電圧増幅リニアアンプでは、トランジスタのIc(コレクタ電流)の飽和領域で、Vbe(ベース電圧)またはIb(ベース電流)の振幅をリニア増幅し、トランジスタのコレクタに接続された負荷抵抗両端に発生する電圧を出力として取り出すことで、電圧増幅を行う「負荷線を使った低周波アンプの設計法」[1]が基礎となり、その後、トランジスタ等価回路を用いた設計法、spiceに最新のトランジスタ等価回路を組み込んだ設計とSパラメータ設計へ進んだと推定される。

こうしたBJTトランジスタ小信号リニアアンプでは、コレクタ電流を飽和させた状態の負荷線(Load Line)上をバイアスポイントを中心に入力電圧/電流信号をスイング移動させる。この時、コレクタ電流 Icが飽和していることが原因となり、アナログ乗算器として、入力電圧に比例した電圧変化をコレクタ側負荷抵抗R1に発生させることが、原理的にできなくなる。

これに対し、トランジスタのベースに定電流を流すと、ベース電圧を一定に固定した時、Vce電圧に比例したコレクタ電流が流れる特性になり、その直線比例関係のVce変化幅のダイナミックレンジが広がる特性が現れる。

このDC電圧でのVbe:VceまたはVce:Icの直線的比例関係が、高周波領域の電圧スイング状態でも維持され、かつ、VbeとVceの電圧周波数が三角関数の乗算結果であるところの、角周波数での加算、または減算の関係になれば、トランジスタは、アナログ乗算器として動作できることになる。

図1.1.1 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1 過渡解析結果

図1.1.1は、このようなアナログ乗算特性が出せるか、高周波キャリア 1MHz ±1[V]のサイン波をベースから入力、低周波変調信号 1KHz, 12+( 0~±1.0)[V]をコレクタ側負荷抵抗100Ωを介してコレクタへ入力し、コレクタ端子MOD-OUTから、コレクタ抵抗間に現れる電圧変化出力の特性を見たものである。

v(MOD-OUT)の電圧は、高周波キャリア 1MHz, ±1[V]のサイン波がスイングされ、3.6V以上の象限と、3.6V未満のAM変調波に類似した信号が見られる。

しかし、よく見ると、3.6V以上の象限と、3.6V未満の象限の包絡線は、それぞれ位相が90度ずれており、これは、コレクタ電圧との加算増幅または作動増幅が起こっていることを意味するので、AM変調波は生成されていないことがわかる。

図1.1.2 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1 キャリア周波数1MHz近傍のFFT解析結果

この現象は、図1.1.2.のFFT解析結果を見ても、キャリア周波数1MHz近傍には、999KHz, 1001KHzの変調波は、ほぼ0Vに近く、やはり、無変調状態であることがわかる。

このように、ベース定電流方式-方式1では、三角関数による電圧の乗算による位相または周波数変換動作がおこらない特性があるために、アナログ乗算器の特性は出せず、よってAM変調は不可能であることが判明した。


1.2 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式2 過渡解析

前述の1.1ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1のベース定電流源をVcc側から2mAベースへ流しこむ方式にすると、変調出力電圧に変化が現れる。図1.2のように、6~10.5V側の象限にAM変調波とよく似た波形が現れ、-2V~-3V近辺にAM振幅が抑圧されたようなマイナス電圧が現れている。

図1.2 ベース定電流制御式コレクタ変調-方式2 キャリア周波数近傍 FFT解析

この変調波のFFT解析を見るとキャリア周波数近傍のスペクトルで、変調度 30~40%程度のAM変調がかかるように改善しているようにも見える。


1.3 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調

前述の1.1及び1.2について、ベース定電流制御式コレクタ変調-方式1/方式2のそれぞれに、Vcc=12Vを抵抗R5, R6で一定のバイアス電圧を与え、コレクタ電流のアイドリング時の値を、コレクタ電流の飽和してない動作領域に設定する。

図1.3 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調 過渡解析とキャリア周波数近傍のFFT解析

この方法では、前述1.2ベース定電流制御式コレクタ変調-方式2と類似した波形が現れる。
この方式でも、変調波のFFT解析を見るとキャリア周波数近傍のスペクトルをみると変調度30~40%程度近くのAM変調がかかるように変調動作の特性改善が見られる。


1.4 ベース定電圧制御式コレクタ変調-共振LCコイル負荷式

前述1.3 ベース定電圧制御式コレクタ変調の抵抗によるコレクタ負荷を、455KHz IFT 同調コイルに交替し、同コイルの2次側から出力電圧を取り出すと、プラス電圧とマイナス電圧の象限が0Vの軸に対して、対称な形となるAM変調波が得られる。

図1.4 ベース定電圧制御式コレクタ変調-共振LCコイル負荷式 過渡解析

波形が歪まない程度のAM変調波形にするには、コレクタに与える電圧振幅を一定以下に抑える必要があるので深い変調はかけられない。このため、放送、通信機用途の実用性には無理があるが、回路構成が簡素で安価であるため、おもちゃの小型トランシーバや教育用送信機実験等の簡易な用途にはある程度の実用性があるかもしれない。


1.5 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調-ダイオード通過式

前述1.3 ベース定電圧制御式コレクタ変調の抵抗によるコレクタ負荷から、0.1uF シリコン・ダイオード1N4148からR4=1MΩで出力を取り出しても、プラスの電圧とマイナス電圧の象限が0Vの軸に対して、対称の形となるAM変調波が得られる。

図1.5 ベース定電圧バイアス制御式コレクタ変調-ダイオード通過式 過渡解析とFFT解析

図1.5では、波形が歪まない程度のAM変調波形にするには、コレクタに与える電圧振幅を一定以下に抑える必要があるので深い変調はかけられない。

この方式は、コイルを使わずに、OPアンプによるBPFを追加構成できるので、IC集積化に向いた構成となれるメリットがある。放送、通信機用途の実用性には無理があるが、回路構成が簡素で安価であるため、おもちゃの小型トランシーバや教育用送信機実験等の簡易な用途にはある程度の実用性があるかもしれない。

(ただし、IC集積化は既にギルバートセル乗算器で随分昔に実現済みで、かつ電気的特性もそれがずっと優位であるため、1.5の方式が特に優れているわけではない。あくまで簡易用途の制限が伴う。)


以上の結果から、汎用小信号用BJT トランジスタ一石だけで、どこまでアナログ乗算器として動作できるか、2N3904を実例に計算した結果、その限界が見えてきたようにも考えられる。

現在の半導体技術でも、BJTトランジスタ一石だけで、真空管やギルバートセル乗算器を上回る性能を出すことはその電気的特性からみて難しいかもしれない。
デバイス製造技術の向上で、将来は、よりダイナミックレンジの広いリニアリティのアナログ乗算器特性をもつデバイスがでてくるかもしれないが、現在のデジタル化の時代流れでは、各種変調方式は、ADコンバータ、DAコンバータとDSP演算による各種変調方式が、汎用性、機能性、性能面で優位な情勢に見える。
しかし一方、これらも通信用途の大敵であるスイッチング・ノイズ、量子化ノイズ等、ノイズが発生するデメリットがあり、それらを抑圧するのが課題として現在も解決が進んでいると思われる。


[※1]通常、小信号電圧アンプでは、コレクタ電流が飽和した領域で、負荷線上にアイドリング時のバイアス中心ポイントを設定し、リニア電圧増幅動作をさせる。

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2017年4月20日木曜日

キャリア周波数・アナログ乗算式ベースAM変調方式(仮名称)の基礎計算実験

キャリア周波数・アナログ乗算式ベースAM変調方式(仮名称)の基礎計算実験

従来方式によるベース変調方式では、出力電圧が無変調になる不具合現象が出ることは、
・実機
・LTspice計算
・数式による計算
について既に示した。

ここでは、こうした従来方式によるベース変調方式をどこまで変調動作特性を改良できるか、BJTトランジスタ1石に条件を限定してアナログ乗算器の特性を引き出せるか、LTspiceのシミュレーション計算で見積もった。

方式の変更:
・TRのベース側に、DC電圧源で底上げしたベースバンドAF信号を入力する。
・TR側のコレクタ側に、キャリア周波数となるRFサイン波を入力する。
・両者の信号をTRに入力し、アナログ乗算機能が出せるかどうか確認する。
ベースには定電流源500[uA]を入力し、TRがコレクタ電流Icが飽和しない動作領域で動かす。


結果:
入力するAF電圧が制限されるが、AM変調自体はかかる。
変調度が浅いため、実用にはならないと思われる。
近接スプリアスの発生があり、歪み信号の電圧レベルは低いが、アナログ乗算器としては歪みが伴い、けして綺麗な音質は得られない。
(BJTトランジスタ単独でのアナログ乗算動作は実用的ではない。ギルバートセル型BJT TR乗算器の特性よりも、性能は大きく劣る。)


図1. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+広帯域FFT解析

図1.に示すように、浅くAM変調はかかっており、AF信号電圧の振幅変化に対するそれほど歪んでいないAM変調波の波形が見られる。
高帯域周波数でのスプリアス発生は、それほど酷いものでは無いが、けして良い特性とは言えない。


図2. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+狭帯域FFT解析(V単位)


図2.で示すように、[V]単位で見ると、キャリア周辺のLSB,USB 1KHzのピーク電圧が見える。
これ以上、深い変調を与えると歪みが多くなってしまう。


図3. キャリア周波数スイッチング式ベースAM変調方式(仮名称)の過渡解析+狭帯域FFT解析(dB単位)

図3.で示すように、[dB]単位で見ると、キャリア周辺のLSB,USB 1KHzのピーク電圧周辺に沢山のベースバンド高調波歪みがの存在が見える。
アナログ乗算器としての特性を良くは出せていない。


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2017年4月9日日曜日

ヘンテナと長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) 50MHz/6m Band 対応

1. ヘンテナ 50MHz/6m Band 対応

図1.1  ヘンテナの外観


図1.2  ヘンテナの最適化計算結果


図1.3  最適化されたヘンテナのエレメント・サイズ


図1.4  最適化されたヘンテナのSWR特性 


図1.5  最適化されたヘンテナの実効利得特性



図1.6  最適化されたヘンテナのインピーダンス特性


2. 長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) 50MHz/6m Band 対応

図2.1 長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) 外観


図2.2 長方形ループアンテナ(マッチングスタブ・レス型) エレメント・サイズ(最適化計算済)


2017年4月6日木曜日

従来式2段コレクタ変調によるAM変調信号の歪み現象を数式で表現する

従来式2段コレクタ変調によるAM変調信号の歪み現象を数式で表現する

ドライバ段TRの出力電圧式:V1(t)[V]
V1(t)=Vc*sin(ωc*t)*{Vdc+A*x(t)} …(1)


Vdc=12[V]
A=ドライバ段TRアンプの利得[倍]
ωc=2*π*fc ; 搬送波(キャリア)の角周波数[rad・Hz]
fc=50x10^6[Hz]
x(t)=Σ bi*cos(ωi*t) , here { i=1,2,3,・・・N; N≧1} ベースバンド信号


図1.  2段式コレクタ変調によるAM変調回路のブロックダイアグラム
(2段目の乗算器で歪みが発生する。)


ファイナル段TRの出力電圧式:V2(t)[V]
V2(t)= V1(t)*{Vdc+B*x(t)}
       = Vc*sin(ωc*t)*{Vdc+A*x(t)}*{Vdc+B*x(t)}
       = Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*B*x(t) +Vdc*A*x(t)+A*B*x(t)^2}
       = Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*(A+B)*x(t)+A*B*x(t)^2} …(2)

変調トランスの中間タップと終端タップで、
AF信号電圧は、トランスのコイル巻数に比例すると仮定すると、
B=2*A …(3)
x(t)を特殊化し、単一サイン波と仮定する。
x(t)=Vs*cos(ωs*t) …(4)


式(3),式(4)を、式(2)に代入すると、
V2(t)=Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*(A+2*A)*Vs*cos(ωs*t)+2A^2*Vs*cos(ωs*t)^2}
       =Vc*sin(ωc*t)*{Vdc^2+Vdc*3A*Vs*cos(ωs*t)+2A^2*Vs^2*cos(ωs*t)^2}    
=Vdc^2*Vc*sin(ωc*t)
+Vdc*3A*Vc*Vs*sin(ωc*t)cos(ωs*t)
+2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t)cos(ωs*t)^2


ここで、
Vdc^2*Vc*sin(ωc*t) は一定振幅のキャリア波,
Vdc*3A*Vc*Vs*sin(ωc*t)cos(ωs*t) = Vdc*3A*Vc*Vs*(1/2)*{sin((ωc+ωs)*t)+sin((ωc-ωs)*t)
これらは、それぞれ AF信号 ωsのUSB波電圧とLSB電圧


2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t)cos(ωs*t)^2 は歪み変調波で、
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){ 1-sin(ωs*t)^2}
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){ 1-(-1/2)*{cos(2ωs*t)-cos(0)} }
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){ 1+(1/2)*{cos(2ωs*t)-1}}
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){1+(1/2)*cos(2ωs*t) -1/2 }
=2A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){1/2+(1/2)*cos(2ωs*t)}
=A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t){1+cos(2ωs*t)}
=A^2*Vc*Vs^2*{sin(ωc*t)+sin(ωc*t)*cos(2ωs*t)}
=A^2*Vc*Vs^2*{sin(ωc*t)+(1/2)*sin((ωc+2ωs)*t)+sin(ωc-2ωs)*t)} ....(5)


式(5)は、AF信号の2倍高調波歪みであるところの、
A^2*Vc*Vs^2*(1/2)*{sin((ωc+2ωs)*t)+sin(ωc-2ωs)*t)}  ...(6)
式(6)の電圧歪みが発生したことを意味する。


式(6)は、理想乗算器が2段接続された場合なので、
C級アンプでは、式(6)は、さらに大きく歪む。


おおまかには、AFの2倍高調波歪み波と、
振幅電圧が変化するキャリア変化成分
A^2*Vc*Vs^2*sin(ωc*t)
が加算されて現れる。

すなわち、(困ったことに)キャリア周波数の振幅もベースバンド信号電圧の2乗に比例した電圧成分で揺れる。


しかし、実際のファイナル段で、コレクタ電流 Icが飽和してしまうと、その揺れが見えなくなり、変調が浅い現象が出るかもしれない。


ここでの計算は、電圧式のみを計算しており、コレクタのRFC負荷=不明値の抵抗成分で3W出力を仮定した電圧降下を計算する必要がある。


設計の基本思想として、アナログ乗算器を2段にするという発想は、本来は、あってはならない設計ミスである。
ベースバンド信号の2倍高調波成分が、変調帯域内に現れることになり、音質は劣化してしまう結果を招く。


改善策として、ドライバ段TRにだけにコレクタ変調をかけ、ファイナル段は、リニアアンプ動作させるのなら、問題は少なくなる。
しかしそれでも、コレクタ変調方式自体が、アナログ乗算動作特性品質が良くないので、製品レベル品質として、いかがなものか、十分納得のいく不具合となる。

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Rev 0.1: Apr.10, 2017 図1. 従来式2段コレクタ変調方式のブロックダイアグラム追加

2017年4月1日土曜日

Scilab 5.5.2.1 for Mac OSX Yosemite/ Macbook Pro. 2013 Late インストール方法・メモ

Mac OSX Yosemite/Macbook Pro. 2013 LateへScilab インストールが成功。
gcc コンパイラが無いので、コンパイルを伴う計算はできないが、他の多くの機能が実行できた。Xcodeはscilabと連携しては使えないかもしれない。

インストール方法:
http://www.scilab.org/download/previous
にある
(1) OS X 10.10 & 10.11 (Yosemite & El Capitan)のファイル:
scilab-5.5.2.1-x86-yosemite.dmg
をダウンロードする。
(2) Java6 をダウンロードする。ファイル名:
,JavaForOSX2014-001.dmg
Appleのサイトにある。(最新のものを使うようにと注意書きあり)
(3)JavaForOSX2014-001.dmgをダブルクリックすると、ダンボールの箱が開いたアイコンが表示されるので、そのアイコンをダブルクリックするとインストール終了のメッセージが表示される。
(4)scilab-5.5.2.1-x86-yosemite.dmgをダブルクリックすると"鳥のアイコン"と"Application Folderのアイコン"が表示される。
ここで"鳥のアイコン"を"Application Folderのアイコン"へマウスでドラッグするとインストールが開始され、終了メッセージが出る。

参考にしたサイト:
MacでのScilabの導入 (2015-5-24)
http://tomokop.hatenablog.com/entry/2015/05/24/020215

図1. インストール後のデモ実行結果の一例 "3Dシミュレーション Sphere"