2017年3月31日金曜日

ダイオード4本のリングモジュレータを使った低電力式AM変調器の設計

ダイオード4本のリングモジュレータを使った低電力式AM変調器の設計

[概要]
リングモジュレータによる低電力式AM変調回路の性能をLTspiceで再現し、動作と性能検証した。
リングモジュレータは長年・長期に製品に採用された実績もあり、音質が良いとの評価があった。

その性能の高さは、LTspiceの計算でも再現し、DSB/AM変調に好適で、美しい変調波が得られ、スプリアス成分も十分除去できる回路構成がとれることが確認できた。

計算でも、製品実績の示すと同様に、スプリアス抑制には、BPFが必要なこともわかった。

さらなる性能向上には、ギルバートセル乗算器によるDBM回路、またはDBM ICを使うことで、より品質の高い変調波の発生/復調と、スプリアス低減が可能である。

LTspiceによるシミュレーション計算で、リング変調回路も、回路試作前にその電気的特性を事前に精度良く知り、回路方式の事前改良、最適化が可能、開発時間とコスト削減も可能となる。


1. LTspiceによるリング変調回路の過渡解析とFFT解析

図1.リングモジュレータ低電力式AM変調器と過渡解析,FFT解析結果(0~10mS)

図1.に、リングモジュレータを使用した低電力式AM変調器を、中心キャリア周波数5MHzに設計した回路と、その時刻 0~10mS 間の過渡解析結果を示した。

V(DSB-OUT) 緑色波形には、変調率 100%の綺麗なAM変調波電圧が得られている。


2. 回路動作

図1.のリングモジュレータ低電力式AM変調器の回路がどのように動くかを、以下に説明する。

2.1 リング変調器

アナログ乗算器としてその近似的乗算動作ができるショットキー・ダイオードBAT54を4本でリング変調器を構成する。
(ダイオードは、1N60、ショットキーダイオード,BAT54,1S106等、特定のものが利用できる。)

2.2 リング変調器は、次の入力ポートと出力ポートを持つ。

    入力ポート:

 (1) キャリア信号(サイン波/正弦波): Vosc
         周波数5MHz, ピーク最大/最小電圧±1[V]のサイン波/正弦波電圧

   (2) 音声信号+直流電圧信号: VAF
   ここでは、
   音声周波数 1KHz, ピーク最大/最小電圧±100[mV]のサイン波/正弦波電圧
        に、直流電圧 100[mV]を加算した信号を仮定した。
   コンデンサ C5=1uF は、DSB変調動作時に、DC電圧をカットするためのもので、C5 をショートすることで、音声のAC信号にDC電圧を加算した信号を入力できるようになる
  (C5に並列にスイッチを入れると、AM変調/DSB変調の切り替えができるようになる。
   スイッチオン:AM変調動作、スイッチオフ:DSB変調動作)

 出力ポート:

  (3) AM変調信号:DSB-OUT
        リングモジュレータで近似的アナログ乗算を行った信号を、LC共振回路(5MHzに同調)
   の2次コイル側から取り出す。出力信号として、AM変調波電圧が得られる。

2.3 ダイオードDBMのバランスの取り方

  (1) R3=50Ω, R4=50Ωのどちらかを100Ω程度の半固定抵抗とする。
  (2) C1=22pF, C2=22pFのどちらかを40pF程度の半固定コンデンサとする。
  (3)音声信号端子の入力信号をオープン状態(VAF端子を解放状態)にする。
  (4)5MHz 発振器の信号を注入する。
  (5)これらの半固定抵抗と半固定コンデンサの値を調整し、DSB-OUT端子の端子電圧が最小、0Vに近くなるようにする。
  (6)音声信号端子 VAFに、DC電圧100m[V]を底上げ(加算)した信号を入力する。
  (7)DSB-OUT端子の電圧をオシロスコープまたは、AM受信機(キャリア周波数に同調)でモニターし、変調の具合を見て、VAFの音声信号レベルと、DC電圧値を適切な変調状態になるように調整する。


3. 変調の品質と、スプリアスの計算評価

図3.1 リングモジュレータ低電力式AM変調器と過渡解析,FFT解析結果(0~4.4mS)

図3.2 リングモジュレータ低電力式AM変調器と過渡解析,FFT解析結果(0~4.4mS)

図3.1, 図3.2 に、リングモジュレータを使用した低電力式AM変調器を、
中心キャリア周波数5MHzに設計した回路、その時刻 0~4.4mS 間の過渡解析結果、FFT解析結果を示した。

ここのFFT解析結果は、リングモジュレータの広帯域周波数のスプリアス発生状態と、目的信号となる5MHz AM変調信号の電圧レベルを見るためのものである。

5MHz AM変調波は、周波数5MHzのピークにその存在が見える。

リングモジュレータは、回路上では、入力される電圧が完全に平衡しているような印象を受けるが、バランスの崩れは存在し、このように広帯域のスプリアス信号が発生する。

大部分のスプリアスは基本波に対し-40dBの基準を性能よくクリアしているが、いくつかの周波数スポットで、基準をオーバするスプリアスの存在が見える。

特に問題となるのが、このケースでは100KHzのスプリアスとなっているが、5MHzより大きく離れた周波数なので、BFP(Band Pass Filter)で容易に除去できる。

過去の製品回路実績、自作品実績でも、クリスタルフィルタならば、変調周波数帯域外は、-60dBは楽にクリアできている。

図3.3 リングモジュレータ低電力式AM変調器の近傍周波数FFT解析結

図3.3は、
リングモジュレータを使用した低電力式AM変調器を、中心キャリア周波数5MHzに設計した回路と、その時刻 0~4.4mS 間の過渡解析結果と、中心キャリア周波数5MH近傍のFFT解析結果を示した。

周波数近傍のスプリアスは少なく、リング変調器特性の良さがわかる。

しかし、ところどころ、-40dB基準をクリアできない周波数スポットが見られる。
既に述べたように、これらのスプリアスは水晶フィルタで、容易に-60dBの減衰が可能である。

図3.4 リングモジュレータ低電力式AM変調器のキャリア周波数近傍のFFT解析結果

図3.4 は、リングモジュレータを使用した低電力式AM変調器を、
中心キャリア周波数5MHzに設計した回路と、その時刻 0~4.4mS 間の過渡解析結果と、中心キャリア周波数5MH近傍のFFT解析結果を、図3.3よりさらに周波数幅を狭くして示した。

キャリア周波数5MHzのピーク電圧の右側に、5.001MHzのUSB電圧波成分、左側に4.999MHzのLSB成分が綺麗に見られ近傍にスプリアスは見られない。


4. リングモジュレータの動作条件等について

4.1 リングモジュレータに使用するダイオード特性の条件

リングモジュレータに使用するダイオードは、音声周波数~キャリア周波数近傍まで、高周波領域での利得が十分にあることが必要となる。
この目的にあったものとして、1N60が広く採用された実績がある。

現在は、ショットキーダイオードの中から1N60に代替できるものがある。(BAT54, 1SS-106 等)

シリコンダイオードは低周波領域での利得が下がるため、この応用には向いていないが、1N4148,1S-1588, 1S-1555などのスイッチング用ダイオードでも、小さな直流バイアス電流を流すことで、低周波領域の利得が改善する特性が知られている。


4.2 リングモジュレータとでモジュレータの関係

図1~図3.4に示したリングモジュレータは、DSB-OUT端子にAM変調/DSB変調/SSB変調信号を入力し、低周波発生器 V1のかわりに低周波アンプを接続すれば、プロダクト検波が可能で、実際に製品、自作品にも利用されてきている。


5. まとめ

(1)ダイオード4本を使用したリングモジュレータは、高品位の音質の良いAM変調、DSB変調波の電圧発生が可能でる。

(2)そのスプリアスは多くないが、スプリアス基準を満たすには、通信機製品がとってきたと同様にBPF実装によりクリーンな電波が生成できる。

(3)こうしたリング変調器による綺麗なAM変調波の発生方式の電気的特性は、トランジスタのコレクタ変調よりも、はるかに優れている。

(4)ダイオード4本を使用したリングモジュレータは、高品位の音質の良いAM変調、DSB変調波の電圧発生が可能であるが、ギルバートセル乗算器またはそのDBM ICを使うと、さらなる高性能化が可能で、スプリアス低減も可能である。

(5)リングモジュレータは、DSB-OUT端子にAM変調/DSB変調/SSB変調信号を入力し、低周波発生器 V1のかわりに低周波アンプを接続すれば、プロダクト検波によるAM変調/DSB変調/SSB変調信号の復調が可能である。


付録:

A.製品実績
リングモジュレータは、世界中のヒット商品となった通信機 TS-520, TS-820, TS-830 (TRIO/Kenwood社)等で採用された。
これらの通信機ではSSB変調回路が実装されたが、AM変調機能は省略された。

これらの通信機では、リングモジュレータでDSB変調後、約3KHz帯域幅の水晶フィルタ(通過周波数帯は約4MHz)を通過させ、LSB側波帯、またはUSB側波帯をカットする方式がとられた。
これらの製品の回路構成は、水晶フィルタを交換すれば、AM変調も可能になっている。

日本国内では、AM変調送信機の自作品は、終段コレクタ変調方式が多いが、終段コレクタ変調ではマイナス変調等不具合がおこる回路設計事例が今でも多く見られ、問題発生が継続しているように見られる.
この記事のリング変調器を使うだけで問題の解決が可能となる。

※※特記すべき注意情報※※

日本国内に拡散され、定着した常識
「リング変調器に直流を流すとバランスが崩れ、キャリア信号が出力される。」
・・・これは誤った理解による情報です。

正しくは、AM変調の電圧式 Vam(t)

Vam(t)={Vdc+x(t)}*sin(ωc(t)) ...式(1)

式(1)中の直流電圧 Vdc[V] をリング変調器へ与えることで、Vdc*sin(ωc(t))[V]のキャリア電圧信号が発生する・・・これが正確な理解です
(大変困ったことに、思い込みにより広く広がった誤った常識が、無駄な時間とコストを発生させている例と思われます。)



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Maxima for OSX Yosemite /Macbook 2013 Late インストール メモ How to install

Maxima for OSX Yosemite /Macbook 2013 Late インストール メモ How to install

図1. wxMaximaで二次元方程式(複素数解)を解いた実行例

Maxima ご本家のダウンロードサイトからオリジナルの次の.dmgファイルをダウンロードし、SDD/HDDのどこかのフォールダにsaveする。
Maxima.5.36.1.dmg
このファイルをダブルクリックする。

readme.txt ファイルがあるので、その指示に従い、

Maxima,
wXMaxima,
'jsMath TeX fonts'
GNUPLOT

の順にインストールする。
(readme.txtの指示に従うだけでよく、特別なカスタマイズやコンパイルは何も必要ない。)

トラブルシュート

(1) GNU Plotからサイン関数を描こうとして
set term qt
plot sin(x)
を実行すると、Maximaが見つからないという意味のエラーとなり、グラフが表示されない。

原因:
GNU Plot が、maxima を呼び出すが、その実行パスが、.maxima パスのmaxima-init.mac 設定ファイルに書かれていない。

対策:
readme.txt に書かれている指示通りに、OSXのコマンドプロンプト画面を開き、次のコマンドを実行すると、グラフが描けるようになる。

mkdir .maxima
cd .maxima
echo 'gnuplot_command:"/Applications/Gnuplot.app/Contents/Resources/bin/gnuplot"$' >> maxima-init.mac
echo 'set_plot_option([gnuplot_term, qt])$’ >> maxima-init.mac

図2. GNU Plotにより描かれたサイン関数のグラフ


(2)maximaは起動し、コマンドを受け付け実行もするが、wxMaximaから、
コマンド
1+1 Shit+Enter
を実行すると、maxima が見つからない意味のエラーになる。

原因:wxMaxima が、maximaの実行パス名が設定されていないため、maximaを読み出せずエラーになる。

対策:

wxMaxima -> “設定” -> “Maxima” とメニューを選択
Maximaの実行パス名
/Applications/Maxima.app
を”参照”ボタンで選択。
一旦、wxMaximaを終了する。



再度、wxMaximaを起動し、
案内ヘルプ画面を閉じる。
1+1 Shift+Enter
と入力すると、画面に 計算結果 2 が表示される。
以降、maxima と同じ操作で、同じコマンドを受け付け、見やすい表示で計算結果が見られるようになる。(例:図1.参照)

(3)maxima で、run testsuite(); を実行すると、エラーで実行できない。
(他のコマンドは問題ない。)

原因: 不明 調査中。

run the test suite by enterning 'run_testsuite();'. No unexpected errors should occur.


以下、Maxima 5.36.1.dmg をダブルクリックした後、自動的に開かれる窓内のreadme.txt内容から引用:

readme.txt の内容(2017/3/30現在)

1. Installing Maxima

        •       Drag 'Maxima.app' into your Applications folder.
        •       To test it: run Maxima.app from your Applications folder by double-clicking on it. A Terminal should pop up with a working Maxima program. You can try some simple calculations like '1+1;' or run the test suite by enterning 'run_testsuite();'. No unexpected errors should occur.
        •       Quit Maxima by entering 'quit();'.

2. Installing wxMaxima

        •       Drag 'wxMaxima.app' into your Applications folder.
        •       Install jsMath fonts by double clicking on all the fonts in the 'jsMath TeX fonts' folder in the dmg and clicking on 'Install Font'.
        •       Configure wxMaxima by running it from your Applications folder and opening the wxMaxima->Preferences... dialog. Make sure that the 'Maxima program' field points to your copy of the Maxima.app.
        •       If the 'Use jsMath fonts' checkbox is grayed out even though you've installed the fonts, you can try restarting your computer. jsMath fonts are used for nicer (TeX-like) integral signs, summation signs and other symbols.
        •       If wxMaxima found Maxima.app, then you should be able to run calculations (enter '1+1' and press shit-enter). Plotting requires GNUPLOT.

3. Installing GNUPLOT

        •       Drag 'Gnuplot.app' into your Applications folder.
        •       To test Gnuplot: double-click on your copy located in Applications folder. A Terminal should pop up with the Gnuplot's prompt. Test gnuplot by entering the following commands.

                set term qt
                plot sin(x)
                splot sin(x*y)

        •       Maxima needs to know where Gnuplot is located in order to use it for plotting. If you already have a 'maxima-init.mac', edit it, otherwise enter these commands into the Terminal:

                mkdir .maxima
                cd .maxima
                echo 'gnuplot_command:"/Applications/Gnuplot.app/Contents/Resources/bin/gnuplot"$' >> maxima-init.mac
                echo 'set_plot_option([gnuplot_term, qt])$’ >> maxima-init.mac


//END

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2017年3月20日月曜日

2SK125 spice model パラメータの評価テスト

2SK125は、SONY社のFETで、RF小信号増幅用、高周波ミキサー用途として性能に定評があり、人気がありました。現在でも入手できるようです。

しかし、古めのデバイスはspiceが使われていない時代のもので、spice modelの入手に困難が伴います。

海外サイトから、2SK125の実測データと思しきモデルを見つけ、spice model データの信頼性を確かめるため、その特性を見てみました。


図1. 2SK125のDC特性
図1.に電源電圧 V2=12V 固定とし、負荷抵抗 VarRL = 100〜10kΩ に変化させたときの、ドレイン電圧 V(out), 負荷電流 I(R1)を見たものです。

2SK125の特徴は、スレッショルド電圧が Vth = −3.8V より低い、大変低い負電圧のところにあります。
他のJFETのVthは、もっと高めのVthでマイナス電圧領域にあるので、2SK125はちょっと変わっているようです。

この結果からは、ゲート電圧のバイアス電圧は、相対的に絶対値の大きなマイナス電圧で動かす必要がありそうです。

(このためマイナス電源を用意するか、または、図中の抵抗VarRLをソース端子側へ移動し、ゲート電圧Vgsをソース端子から見た相対ゲート電圧Vgsをマイナス電圧

 Vgs=−Ids*VarRL (<0 p="">

とする方法が考えられます。)

Vds-Vgsグラフの傾きの大きさ(δVds/δVgs)が利得の大きさを示し、かなりゆるいカーブで、Vgsの変化できる入力電圧範囲が広いので、確かに、大信号入力のダイナミックレンジの広いミキサに使える特性がありそうです。[1]


図2. 2SK125のAC特性
図2.は、ゲートバイアス電圧をマイナス3Vにした場合の負荷抵抗を変化させたたAC特性です。
この利得特性は、ゲートバイアス電圧設定で大きく変化します。

マイナスになるカーブは増幅せず減衰するので、その負荷抵抗ではアンプ動作できないので、プラスの利得になる負荷抵抗を選びます。

負荷抵抗に関係し、利得は最大20dB、利得はかなり落ちますが、周波数は50MHz程度までアンプとして使えそうです。



図3. 過渡解析結果
適正なマイナス電位のゲートバイアス電圧を与えて過渡解析すると、高周波信号電圧入力での増幅の様子が見られます。


以上の結果は、参考程度の信頼度としてご覧願います。


参考資料:
[1] MIT OCW 8.002 "MOS-FET amplifier, Large Signal Analysis"

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74HCU04を使用したRC定数クロック発振器 (低周波〜超音波周波数領域 矩形波)


図1. 74HCU04を使用したRC定数クロック発振器

図1.は、74HCU04を使用したRC定数クロック発振器の動作で、低周波〜超音波周波数領域のクロック矩形波を発振できます。

発振周波数 f = 1/(2.2*R*C) [Hz]
R=7.5kΩ, C=1000pF にて 60KHz
図1. の発振周波数の読み取り値=57KHz
計算誤差 -3KHz


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74HCU04を使った微小電力パワーアンプの性能見積もり{出力 1mW〜2mW(小さな音量)}

74HCU04をパラレル接続してパワーアンプを構成すると、大変小さな音を8Ωのイヤホンで聞ける・・・という動作をLTspiceで再現できるか試したところ、確かに1mW〜2mWの微小な低周波パワーアンプができることがわかりました。

しかし、これでは実用性は疑問が残るので、600Ω以上のスピーカ、またはハイインピーダンスのピエゾ素子スピーカを駆動すると実用になるかもしれません。

図1. 74HCU04 x6並列接続パワーアンプの過渡解析結果
図1.は、76HCU04を6本並列接続して600Ωのダミースピーカを1KHz 100mV入力で増幅動作させたものです。
入力側はLPFで高周波を切っています。

1〜2mWの微小なパワーアンプになっていますが、音は大変小さいので、聞こえにくいと思います。
高調波も出ており、音質に優れた特性は見られません。


図2. 74HCU04 x6並列接続パワーアンプのAC解析結果
図2.を見ると、周波数特性は良く、パワーアンプとしては出力が殆どとれませんが、トランジスタ1石程度の利得の小信号電圧アンプくらいの性能が出ています。


図3. 74HCU04 x6並列接続パワーアンプのAC解析結果
(パワー利得、電圧利得の比較)
図3.を見ると、小信号電圧アンプとして600Ω負荷なら動きます。
しかし、パワーアンプとしては利得がマイナスで、実用的ではないようです。
8Ω負荷では、大変厳しい状況のようです。


図4. LPF無しの過渡解析
74HCU04は低めの高周波(中波)を増幅できる高周波特性があるので、入力側にはLPF無しよりも図1.のようにあったほうが良いと思います。
動きますが出力は微小1mW未満で実用的ではないようです。


図5. LPF無しの過渡解析明 その2
8Ω負荷になると、600Ω負荷よりもさらに出力は小さくなり、聞き取りはなかなか難しいようです。
このように微小パワーアンプ動作現象は、期待値通りにLTspiceで再現しています。

ただし、実用的にはパワーアンプとしてはこの構成は向かないので、スピーカを鳴らすためのパワーアンプICの採用が得策と思います。


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LM386 ICパワーアンプ(600mW)と、外付けパワーブースト用コンデンサの効果

LM386は生産開始からすいぶん年数を経ていると思いますが、現在でも生産され、LM386-4など3〜5Vの低電圧でも使えるものが新たに出てきているようです。

LM-386は高音質を要求されないラジオ等の用途が向いていると思います。
(音楽プレーヤ、スマートフォンなどの高音質アンプは、現在デジタルアンプが主流になっているようです。)

600mWのオーディオパワーアンプがIC一個だけで出来るお手軽な用途、マイコン制御が不要なので、アナログ回路実験用にも向いていると思います。


図1. LM386低周波パワーアンプの過渡解析結果

図1.は、入力部にLPF(Low Pass Filter)を追加し、455KHzの中間周波数の応用が多い、ラジオの高周波電圧を増幅しないように若干の工夫を入れました。

アンプ前段で、ラジオの検波段の高周波成分を切らないと、ラジオではビート音が聞こえたり、耳に聞こえない高い周波数成分の増幅に、ICの消費電力が無駄に消費されてしまうことが考えられます。

FFT解析には高調波成分が見えますが、簡易用途には問題ないレベルです。
(高音質オーディオ用途には要求仕様上の課題があるかもしれません。)

このLM386モデルは, US. Yahoo.com LTspice Groupにあるものを使用しました。
このモデルでは、3V〜6Vの低電圧動作は対応していないので、9〜12Vの電源電圧で使用しています。


図2. LM386低周波パワーアンプのAC解析結果
図2.は、図1.のAC解析結果。
C6=10uF コンデンサを追加することで、利得がブーストされ十分な音量でスピーカ(8Ωマグネットコイル型)から鳴らすことができます。

コンデンサ 10uFの追加で利得は大きくなる一方で、100Hz以下の重低音の利得が落ちてしまいます。
この特性は返って、ラジオや通信機用途では、高音に張りがある聞きとり易い音、了解度が良いになります。
(こうした通信機器の用途では、男性の低い太い音声が聞きとりにくい音に聞こえ、女性の高い声が聞きやすい音に聞こえます。)


図2. LM386低周波パワーアンプのAC解析結果
(ブースト用10uF無し)
図2.は、利得ブースト用コンデンサ 10uFを除き、かつ入力のLPFを除いたものです。
利得はかなり下がりますが、音声周波数帯を低域から高域までフラットな利得と位相特性で増幅できます。
音質はこちらのほうが良いようですが、ラジオ用途には向かない特性かもしれません。


図3. LM386低周波パワーアンプの過渡解析結果
(ブースト用10uF無し)
図3.は、図2.の利得ブースト用コンデンサ 10uFを除いたLM356アンプの増幅の様子を見たものです。
高調波成分が見えますが、実際に聞く音質は、そこそこ良い音になります。

ただし、近年の音楽プレーヤやスマートフォン、パソコン内蔵のアンプには、音質では勝負にならず、完敗するかもしれません。

課題:
(1)無信号時に「シャー」というノイズが小さく聞こえます。
 (ラジオ用途では入力信号のノイズレベルが高いので全く問題ありません。)
(2)電源ON時に、「ボッコ」という音が鳴ってしまいます。
 通信機では送信動作時にミュートする工夫を入れると良いと思います。
 (ポップ音を抑制する回路例があります。)
(3)古い型のLM386は3〜5V低電圧で動作できないので最新型番LM386-4等に交替が必要。

こうした課題もありますが、簡易用用途には便利で使いやすいICと思います。

日本国内では、既に3〜5V低電圧動作の、他のオーディオパワーアンプICが出ており、代替部品として使える状態です。

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水晶クロック発振器の設計: 周波数 1MHz TTL/CMOSレベル (74HCU04使用)

74HCU04を使用した1MHzクロック発振器を設計した。
特に問題なくクロック発振が得られる計算予想結果を得た。

図1. 74HCU04を使用した1MHzクロック発振器の過渡解析+FFT結果
(発振開始後の発振状態:時間軸拡大)

図1.には、水晶発振器が発振開始後、振幅が安定した後の発振波形と、そのFFT解析を行い周波数スペクトラム成分を見たもの。特に問題なくクロック発振波形が得られている。


図2. 74HCU04を使用した1MHzクロック発振器の過渡解析+FFT結果
(発振開始時の過渡解析)
図2.は、発振開始のタイミングの様子。発振起動のキックは入れていないので発振開始までに若干の時間がかかる。


図3. 水晶振動子 1MHzの定義例

図3. は、LTspice添付の教育用回路例中にある1MHz水晶発振器のspiceモデルを使用した。
この水晶特性のパラメータは使用する水晶により異なるので、水晶メーカのspiceモデルを使うか、実測して各パラメータを決める。
発振品質に関わる需要なポイントの様です。


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2017年3月18日土曜日

74HCU04を使ったホモダイン検波/引き込み線式同期検波/プロダクト検波/ダイオード検波ラジオをパソコン計算/LTspiceで再現する

1. ホモダイン検波式74HCU04ラジオ

1.1 方式の概要:

(1)受信したAM変調波からRC回路と74HCUゲート2個により局部発振器に似た動作で、発振信号を生成する機能を構成し、局部発振信号としてのクロック信号を生成する。

(2)アナログスイッチをミキサー回路として、クロック信号のスイッチング信号で入力信号ON/OFFして周波数変換を行う。キャリア波に同期する動作に近くなることを意図する近似的な同期プロダクト検波を実行する。

(3)プロダクト検波信号を、RC並列回路のLPFからベースバンド信号を取り出し受信する。

1.2 構成:

(1)AM変調信号源:
 サイン波電圧源:V2,V3,V4と擬似アンテナ50オーム上に、TBSラジオ954KHz,ピーク電圧 キャリア10mV、変調波 USB 955KHz, LSB 953KHzとして、ベースバンド信号1KHz,変調率=40%のAM変調波を生成する。


(2)並列共振回路:
 L1, C1, R1により並列共振回路を構成する。
 同調周波数 f は、 f=1/(2π√(L1*C1)) =954KHz
  Qは、Q=2πfL1/R1=59 とした。

(3)RF増幅回路:
 74HCU04は、本来デジタル回路用NOTゲートの一種であるが、その構成上、フィードバック抵抗を使うと、利得のある小信号FETアンプとして代用できる。
ここではRFアンプを74HCU04 2段構成として利得を稼いでいる。


(4)ホモダイン検波回路:
ミキサー回路を74VHC4066アナログスイッチと、ホモダイン式局部発振回路(U3,U4)で構成する。

1.3 動作説明:

図1.1に受信動作を過度解析、FFT解析した結果を示す。

図1.1 ホモダイン式検波受信動作の過度解析、FFT解析結果

この例では、一応はAM放送局(ここではTBSラジオ)が復調された。

しかし、入力されるAM変調波の変調度が高いほど、SW-CTRL信号の信号レベルが減衰し、一定以上の変調度を越えると、SW-CTRL信号が0Vになる瞬間が繰り返される動作の特性がある。
このため、キャリアに同期した正常な局部発振電圧は生成できないという、方式上の基礎的課題が見られる。
検波信号DET-OUTの波形は、1KHzのサイン波に近似されたような形をしているが、受信信号波形は歪んでいる。
RF 2段目の出力 OUT2は、U3, U4のホモダイン検波用の擬似局部発振器の信号が漏れてフィードバックされ、受信ラジオの変調信号OUT2に歪みが加わってしまう。

図1.2 ホモダイン式検波受信動作の過度解析結果(時間軸拡大)
図1.2に図1.1の時間軸を拡大した過渡解析結果を示す。
高周波増幅されたAM電波のキャリア信号に同期するが如く、細かく高い周波数歪み成分を含んだ SW-CTRL信号が見られる。
利点:
放送局の変調度が低ければ、一般のAM放送局が一応は受信できる。
ホモダイン検波は、非常に変わった検波方式で、市販製品も無く、自作したらどのような奇妙な音が聞こえるのか謎の雰囲気があり、好奇心を誘う。謎めいたUFOのような魅力がある。

課題:
ホモダイン検波では、受信電波の変調率が一定上高くなると、74HC04(U3,U4)による局部発振電圧としてのクロック信号が生成されなくなるので、適正なプロダクト検波動作ができなくなる。その結果、AM検波動作ができなくなる問題がある。
また検波信号の歪みが少ないとは言えず、受信音は、もしかしたら、良い音質は期待できないかもしれない。

ホモダイン検波方式では、キャリア同期に近いような歪みを含む局部発振信号電圧が見られるが、局部発振器が同期に近い動作はしても、音質はなんらかの歪んだ音質になる、と予測計算された。(図1.1の歪んだ検波信号波形を参照)

AGCが無いので、夜間の遠距離の電離層反射した放送局の受信時に、受信信号が強くなったり弱くなったりするフェージング現象を軽減できない。


2. 引き込み線式同期検波74HCU04ラジオ

2.1 方式の概要:

引き込み線式同期検波は、水晶(またはセラミック)局部発振器の発振開始をキックする信号として、受信波のキャリア信号を利用し、そのキャリア信号に同期した局部発振電圧を発生させて、同期検波に近い動作をさせたいという意図が見られる。

2.2 動作説明:

図2.参照。
図2  引き込み線式同期検波回路の過渡解析とFFT解析結果
利点:
引き込み線同期検波の回路構成は、ラジオの中間周波増幅段から、周波数が一定(455KHzが多い。ここでは水晶振動子のモデルの都合で中間周波数1MHzで計算した。)
中間周波信号を取りやすい構成となっている。

局部発振信号が、受信し増幅されたAM変調成分で変調されて歪むので、その結果、検波出力にも歪みが現れ、この歪みを避けられないが、放送局の受信音は、そこそこの音質で鳴りそうに予測計算された。(図2.参照)
この引き込み線同期検波方式では、局部発振信号が、受信AM変調成分で変調されて歪むため、原理的に歪みの無い同期検波はできないが、どの程度歪んだ音が出るのか、あるいはどの程度歪まない音が出るのか謎であるため、そうした謎への好奇心が、このラジオがどのように聞こえるか試してみたいという魅力に感じる。

課題:
局部発振器の発振開始のキック信号を受信中のAM信号で生成しているが、局部発振信号が、AM変調成分で変調されて歪むので、その結果、検波出力にも歪みが現れる。
回路の設計思想には、局部発振周波数と、受信するAM信号のキャリアを同期させたい、という意図は見られるが、この回路構成では、原理的に、同期検波は無理そうである。

AGCが無いので、夜間の遠距離の電離層反射した放送局の受信時に、受信信号が強くなったり弱くなったりするフェージング現象を軽減できない。


3. クロック局部発振波を利用したプロダクト検波74HCU04ラジオ

3.1 方式の概要:

引き込み線式同期検波回路から、同期用キック信号発生部を除いた。
キャリア信号と同じ周波数で、位相合わせのないクロック信号で、プロダクト検波を行わせたいとする方式。

3.2 動作説明:
図3.参照。
図3. クロック局部発振波を利用したプロダクト検波回路の過渡解析,FFT解析
利点:
得に利点は見当たらないが、この計算結果だけで、このラジオが聞こえない、とは断言できない謎があり、その謎が魅力になっている。

課題:
なんらかの不明な原因で、このシミュレーション条件では、正常に検波ができていない。


4. ストレート式RF増幅ダイオード検波74HCU04ラジオ

4.1 方式の概要:

74HCU04 2段のRF増幅回路の後に、ダイオード2本により構成された「倍電圧検波回路」と、(事実と異なる)「言い伝え」として信じられているダイオード検波回路で構成される。
安価な市販ラジオと同等の標準的音質で、高感度でも、混信には弱いラジオになると予測計算された。

4.2 動作説明:

図4.1, 図4.2参照。

図4.1 ストレート式RF増幅ダイオード検波 過渡解析,FFT解析結果

図4.1 ストレート式RF増幅ダイオード検波 AC解析結果

利点:

簡単な構成で、感度と再現性が良く、作りやすい、確実に正常に動作できる、素直なラジオ構成になっている。教材としても使いやすい。
課題:
同調回路が一個しかないので、混信に弱いと思われる。

ダイオード2本により構成された「倍電圧検波回路」は、2倍の電圧利得は得られない事実が過去の実験で既に知られているが、spice以外の数学的アプローチで、数学の計算式でこの倍電圧にはならない「倍電圧検波回路」の検波動作を説明できる理論は現在でも確立できていないと思われる。
ネット記事を検索すると、「倍電圧検波回路」では、ダイオード一本の検波回路に対し、2倍の検波電圧が得られるという過去の(事実と異なる)「言い伝え」を現在でも信じている人が多いことが良くわかる。

AGCが無いので、夜間の遠距離の電離層反射した放送局の受信時に、受信信号が強くなったり弱くなったりするフェージング現象を軽減できない。

参考記事:
「デジタルICで作るラジオ」 (Copyright by the author as respected knowledge)

関連文書:
本ブログの同期検波に関わる記事



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