2017年11月11日土曜日

ミュー同調式手作りゲルマニウム・ラジオで放送が聞こえない現象の原因解明

Why "Boy scout radio" (Crystal Radio 1997 US) cannot stay tuned on AM/MW ?

1997 ARRL式「ボーイスカウト・ラジオ」(日本語名:ゲルマニウム・ラジオ)は、中波AM放送局にうまく同調できる場合と、同調が非常に難しい場合があるという異なる現象が報告されています。
こうしたほぼ同じ設計のクリスタル・ラジオが、作る人により、中波AM放送を、うまく受信できる場合と、受信できない場合と、異なる動作となる現象が出る原因を解析しました。

その結果、ダイオード内部のPN接合部にある小容量のコンデンサ成分C1[F]と、クリスタル・イヤホンの等価容量C2 = 0.02[uF] が高周波特性上、C = 1/(1/C1+1/C2) の合成直列容量を構成し、この合成容量Cが大変小さい容量になるため、共振周波数 f=1/(2π√(LC)[Hz]  が、市販のバーアンテナを使った場合より、非常に高い短波帯の周波数に同調するため、目的の中波AM放送が受信できない現象が出ることがわかりました。

目的の中波AM放送を受信するには、コイルの巻数を大幅に増やし、5000[uH]のように大変大きくして、LC共振周波数を下げ、中波放送局の周波数に同調させることで問題が解決できることがわかりました。

図1

図1は、大変大きな巻数のコイル5000[uH] (=5[mH])を使用した場合の、RF同調利得と、出力されるベースバンド信号1[KHz]とその高調波成分を示したものです。
この回路の特徴は、ミュー同調と呼ばれるコイルのインダクタンスを変化させることで放送局を選曲しますが、並列LC共振回路にみられるコンデンサがない構成になっています。

こうした一見コイルだけに見えるラジオが、なぜ、ラジオ放送に同調できるのか、非常に不思議に見えます。
この構成では、LC同調コイルに無いように見えるコンデンサが、ダイオード内部のPN接合容量C1[F]と、クリスタル・イヤホンの等価コンデンサ容量C2[F]が直列接続され、大変小さい容量の直列型合成コンデンサ C=1/(1/C1+1/C2)[F] を構成するため、一般のバリコンの容量より相当に小さなコンデンサ容量になり、その分だけ、大きなインダクタンス 例: 5000[uF]になるよう、たくさんの回数コイルを巻いた大きなコイルが必要になることがわかりました。

一般の市販バリコンを使用する場合は、バーアンテナなど  例 : 600[uH] と、約一桁分小さなインダクタンス値のコイルを使用すれば、目的の中波放送に同調できそうです。

図2

図2.は、手作りの大きなコイル 5000[uH]を一個使い、同調用コンデンサを使わない構成のラジオが、1KHzの放送局のベースバンド信号を復調できている状態を再現したものです。
このラジオは一見すると、並列LC共振による同調コンデンサが見当たらないため、不思議な構成になっていますが、これが中波放送局に同調できる秘密は、巻数の大変多い大きなインダクタンス値のコイルを使っていることに、その謎が隠されていました。

図3
図3は、クリスタル・イヤホンC3の等価容量 0.02[uF]を 抵抗1m[Ω] でほぼショート状態にしたものです。
図3では、図1で見られた中波放送の周波数領域に同調する特性が失われ、放送が全く受信できない同調特性になってしまっています。
ここでは、ダイオードD1のPN接合容量が大変微小であるため、このような共振現象が見られない特性になっています。

図4
図4は、ダイオードD1をショートして、ラジオの同調特性を見たものです。
並列LC共振コイルは、クリスタル・イヤホンの等価容量が0.02[uF]と、通常のバリコンとは桁違いに大きな静電容量になるため、同調周波数は約17KHzと、中波帯放送局の周波数から大きく離調しています。

図5

図5は、図4と同じ状態で、ダイオードをショートしているので、検波動作がおこらず、緑色の信号は、検波されていない信号が、クリスタル・イヤホンに現れています。

日本国内でも、同じミュー同調方式で、共振用LC同調回路のコンデンサを省略した手作りゲルマニウム・ラジオが見られ、放送受信に成功している自作例を見ると、一般のバーアンテナよりかなり大型で、たくさんの巻線によるコイルが使われているのがわかりました。
手作りで、5000[uH]という大きなコイルを作るのは、インダクタンスメータ等の測定器がないと、大変困難で、相当に苦労しても中波放送が受信できない、という事例が起こっているようです。