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2024年6月14日金曜日

複素数演算によるSSB変調方式(PSN方式SSB変調)

IQ直交変調器を使っても良いが、その(乗算と加算等の)演算をCPU内の演算として実装すれば、AD変換器とCPU/DSPによる複素数の数値演算とDA変換器により、USB波、LSB波 それぞれの電波・電圧がダイレクトに生成できることがわかった。

https://www.youtube.com/watch?v=Z0VQ_QQp5TA

複素数演算によるSSB変調方式 (PSN方式SSB変調)

実数部にUSB電圧と、虚数部にLSB電圧が、それぞれプログラムによる数値演算で求まるので、その値をDA変換器へ出力すれば良い。この方式では、IQ変調器を使っても良いが、これをプログラムによる数値演算方式に置き換えてしまうと、キャリア漏れやサイドバンド漏れが原理的に皆無になる大きなメリットが得られる。

「虚数が存在しない」という過去の教育誤りの先入観は完全に否定してかまわないです。

またSSB変調でのPSN方式は、大変長年、水晶フィルタが無くて良いのが魅力に見えたものの、アナログ式回路の実現方式は、産業上も工学的学問上も、メリットが見当たりませんでした。

さらに別方式として、乗算器+IIRフィルタ構成では、ヒルベルト変換に苦労せずとも、マイコンによるプログラム数値演算式でSSB波が変調できます. 😅

2016年6月28日火曜日

IQ変調器(直交変調器)を使ったPSN法によるSSB信号の生成方式 (日本語版)

IQ変調器(直交変調器)を使ったPSN法によるSSB信号の生成方式 (日本語版)


概要


現在は、PSN方式がDSP信号処理で実現されている。
PSN方式の動作説明は、これまで長い間、回路信号の図と難解な長い文章で表現されてきた。
このため、その動作原理の理解が難しく、曖昧であった。


ここでは、PSN方式が、IQ変調器を使って構成できることを図解し、SSB(USB/LSB)が生成される動作原理を、数式で表現する方法を用いる。
そうすることで、原理説明の曖昧さを無くし、シンプルでやさしく理解できるようにした。


また数式で変調方式を表現することで、SDR(ソフトウェアラジオ・無線)のソフトウェア実現方式(数値演算変調方式)を明確にした。


1. 構成


IQ直交変調器を使用したPSN変調器を図1に示す。

図1 IQ直交変調器を使用したPSN変調器

以下、図1中の構成要素について説明する。


ベースバンド信号電圧入力源 V1(例:マイクロフォンをアンプで電圧増幅した電圧信号源)
(2) -90度位相シフト回路1: 信号V1の位相を-90度シフトする回路
(3) 局部発振器 Vosc : キャリア周波数 fc[Hz]の発振電圧を発生する回路
(4) -90度位相シフト回路2: 局部発振器電圧 Voscの位相を-90度シフトする回路
(5) 乗算器1: (1)の電圧V1と、(4)の-90度位相シフト電圧信号を入力し、乗算し、V4へ出力
 ie. V4 := V1*V3
(6) 乗算器2: (2)の-90度位相シフトした電圧V2と、(3)の局部発振器Voscを乗算し、V5へ出力
(7) 加算器または減算器:乗算器1の出力電圧V4と、乗算器2の出力電圧を加算または減算し、Voutへ出力
 ie. Vout := V5 + V4  (USB生成時)
   または
     Vout := V5 - V4 (LSB生成時)


以上の要素で構成する。
このうち、IQ直交変調器は、(3)(4)(5)(6)(7)の各要素を接続して構成する。
PSN方式SSB変調器は、この直交変調器(3)(4)(5)(6)に、(1)(2)の構成で生成するI信号、Q信号生成器を接続したものとなる。


2. 処理方式


2.1 要素別の処理説明


(a)局部発振器Voscを発振させ、出力電圧を乗算器2と、-90度位相シフト回路2の入力とする。
(b)-90度位相シフト回路2により、Vosc信号の位相を-90度シフトし、乗算器1の入力とする。
(c)ベースバンド信号電圧入力源 V1を入力し、乗算器1の入力とし、かつ、-90度位相シフト回路1の入力とする。
(d)乗算器1は、 V4 := V1*V3    を実行する。
(e)乗算器2は、 V5 := V2*Vosc を実行する。
(f)加算器は、 Vout := V5 +V4 を実行する。または、減算器は、 Vout := V5-V4 を実行する。


(a)~(f)を並列処理すれば、SSB信号(USBまたはLSB)が、Voutに生成される。


2.2 計算式による説明


The principle to generate SSB modulated signal by using IQ modulator (PSN method)


Assume V1 is “baseband signal” to be input as audio signal.
(eg. we can use microphone to input V1.)
V1 = Vs*sin(ωs*t) …(1)
 here ωs = 2πfs  …(2)
         fs [Hz] is 0 to 20KHz Frequency of baseband signal on Audio frequency


Shift V1 signal to be -90 deg. by “-90 deg. Shifter”.
V2 = Vs*sin(ωs*t-π/2) = -Vs*cos(ωs*t) …(3)


OSC generates ωc[rad*Hz] sin wave voltage.
Vosc = Vr*sin(ωc*t) …(4)
here ωc = 2πfc …(5)
         fc [Hz] is set to RF frequency such as 9MHz so called “Carrier frequency”.


Shift Vosc signal (4) to be -90 deg. by “-90 deg. Shifter” and get V3.
V3 = Vr*sin(ωc*t-π/2) = -Vr*cos(ωc*t) …(6)


Get V4 by multiplying V1 and V3.
V4= V1*V3 = Vs*sin(ωs*t) * (-Vr*cos(ωc*t)) = -Vs*Vr*sin(ωs*t) * cos(ωc*t) …(7)


Get V5 by multiplying V2 and Vosc.
V5 = V2*Vosc = -Vs*cos(ωs*t) * Vr*sin(ωc*t) = -Vs*Vr*cos(ωs*t) *sin(ωc*t) …(8)


When “Adder” used before Vout,
Vout = V4+V5 = -Vs*Vr*sin(ωs*t) * cos(ωc*t) -Vs*Vr*cos(ωs*t) *sin(ωc*t)
       = -Vs*Vr* (sin(ωs*t) * cos(ωc*t)+cos(ωs*t) *sin(ωc*t))
       = -Vs*Vr* (sin(ωs*t+ωc*t) ) = -Vs*Vr*sin((ωs+ωc)*t)  …(9)
       … This (9) means USB generated as output signal Vout.
           (9) is USB signal and Carrier ωc signal voltage is removed here.


When “Subtracter” used before Vout,
Vout = V5-V4 = -Vs*Vr*sin(ωs*t) * cos(ωc*t) + Vs*Vr*cos(ωs*t) *sin(ωc*t)
       = -Vs*Vr* (sin(ωs*t) * cos(ωc*t) - cos(ωs*t) *sin(ωc*t))
       = -Vs*Vr* (sin(ωc*t-ωs*t ) = -Vs*Vr* sin((ωc-ωs)*t)  …(10)
       … This (10) means LSB generated as output signal Vout.
         (10) is LSB signal and Carrier ωc signal voltage is removed here.


“PSN method” by using “IQ modulator” is proved to generate SSB modulated signal
( USB or LSB).


(C) Noboru, Ji1NZL, Jun.21, 2016


付録


A. SSB変調信号とは


中波ラジオ、短波ラジオ、航空無線では、AM変調(振幅変調)による電波が、音声通信・ラジオ放送に使用されている。
AM信号は、キャリア周波数を中心にして、LSB帯域の変調信号、USB帯域の変調信号で構成されている。
SSB信号は、AM信号から、キャリア信号と、USB帯域またはLSB帯域のどちらかの変調信号のみを利用する。
SSB信号は、送信機ではAM信号中の、キャリア信号と片側のUSBまたはLSB帯域信号を増幅すれば良いので、変調波信号の送信回路で消費される送信機の消費電流を大幅に省電力化できる。
また、受信時は、SSB信号は、受信信号が微弱でも、非常に良好な了解度が得られるメリットもある。
こうしたSSB変調信号は、省電力で遠距離通信に向いているので広く普及している。

B. SSB変調回路開発の歴史


従来技術として次のものがある。


(1)リング変調回路+水晶フィルタによるSSB変調方式 : 
送受信機回路は、リング変調回路のDSB信号出力を、3KHz帯域ほどの水晶フィルタでDSB信号の必要なUSB帯域成分または、LSB帯域成分を通過させ、余分なUSB帯域、LSB帯域を除去し、そのSSB信号をリニア増幅して送信する方式。
1970年~1990年に普及。
製品例: TS-520X/D, TS-820X/D, TS-830X/D


(2) アナログPSN方式:
アナログ回路構成によるPSN(Phase Shift Network)方式が知られていたが、90度位相シフト回路の電気的特性で、利用周波数帯域内で利得が変化してしまう等の課題があり、あまり普及しなかった。


(3) デジタル数値演算変調方式:

現在主流の方式。無線機に実装されているSSB変調は、数値演算変調方式という言葉で表現されたDSP信号プログラム処理により、変調・復調ができる。

(4)携帯電話のノキア社が、1997年にIQ変調器・復調器の特許を出願していることが分かった。
I/Q modulator and demodulator EP 0546719 B1
実施例では、乗算器にダイオード・リング変調器/復調器を使用しており、最新型ではないが、複素数信号処理の概念が明らかになった世界初または初期の発明かもしれない。

C. LTspice によるSSB変調信号生成の計算実験

LTspice によるSSB変調信号生成の計算実験



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2015年8月11日火曜日

PSN方式によるSSB変調信号の生成原理

PSN方式によるSSB変調信号の生成原理
                                Noboru , Ji1NZL Aug.11, 2015

PSN(Phase Shift Network)方式によりSSB変調信号が生成される原理と過程を、ブロックダイアグラム(図1)と、計算式により説明(証明)する。

図1 PSN方式によりSSB変調回路のブロックダイアグラム


1. PSN方式SSB変調器

PSN方式SSB変調器は、キャリア信号及び片側のSSB側波帯の周波数成分を除去するためのクリスタルフィルタ等を必要とせずに、SSB信号を生成する手段として知られている。

図1に示すように、PSN方式SSB変調器は、2個の90度位相シフト器、2個の乗算器(ミキサー)、1個の加算器により構成することができる。

2. 計算式によるSSB変調信号の生成過程と生成原理

音声信号は、マイクロフォン等により入力する。マイクロフォンが発生する信号電圧は、低周波数帯(20[Hz]〜20[KHz])に帯状に分布しているが、ここでは計算を易しくするために、周波数f0[Hz]の単一の周波数スペクトルとして、サイン波低周波信号電圧 

Vin = Va*sin(ω0*t) [V] … 式(1)
(ここで角周波数ω0は、ω0=2*π*f0 と定義する。)

が、入力されると仮定する。

式(1)による音声入力電圧信号 Vin は、乗算器2と、図1中、左側の90度位相シフト器へ入力する。

90度位相シフト器から出力される信号電圧V3は、Vinの位相を-90度シフトさせたものなので、

V3=Va*sin(ω0*t-π/2)
 = -Va*cos(ω0*t) … 式(2) 

を得る。


さて、図1下の局部発信器の発生する信号電圧 V1は、サイン波なので、

V1=Vr*sin(ω1*t) [V] …式(3)
(ここで角周波数ω1は、ω0=2*π*f1 と定義する。)

を得る。

次に、乗算器1の出力信号電圧V4を求める。V4は、式(2),式(3)を乗算すれば良いので、

V4 = V3*V1     
  = -Va*cos(ω0*t)*Vr*sin(ω1*t)
  = -Va*Vr*cos(ω0*t)*sin(ω1*t) …式(4)

を得る。

次に、右側の90度位相シフト回器の信号電圧V5を求める。
V5は、局部発信器信号電圧V1(式)の位相を-90度シフトすれば良いので、

V5=Vr*sin(ω1*t-π/2)
 = -Vr*cos(ω1*t) … 式(5)

を得る。

次に、乗算器2の信号電圧V6を求める。
V6は、Vin (式(1)) と、V5 (式(5))を乗算すれば良いので、

V6= Va*sin(ω0*t) * (-Vr*cos(ω1*t))
= -Va*Vr*sin(ω0*t)*cos(ω1*t) … 式(6)

を得る。

加算回路(Adder)の信号出力電圧Voutは、V6(式(6)),V4(式(4))を加算すれば良いので、

Vout = -Va*Vr*sin(ω0*t)*cos(ω1*t) -Va*Vr*sin(ω0*t)*cos(ω1*t)
   = -Va*Vr*( sin(ω0*t)*cos(ω1*t) + sin(ω0*t)*cos(ω1*t) )

ここで、三角関数の積和公式から、

Vout = -Va*Vr*sin( (ω0*t)+(ω1*t) )
    = -Va*Vr*sin( (ω1+ω0)*t ) … 式(7)

を得る。

式(7)を見ると、本PSN信号発生器の信号電圧Voutは、局部発振器の周波数f1に、入力された音声信号の周波数f0の加算された周波数のサイン波の式になっていることから、AM変調波のUSB (Upper Side Band)信号そのものであることがわかる。このようにして、本PSN信号発生器からは、SSB(USB)信号が生成される。

QED

3. SSB(USB)信号生成例

例えば音声信号としてマイクロフォン等から、周波数 f0=200Hz、最大振幅電圧 Va=10mV のサイン波を入力し、局部発振周波数 f1=10MHz、最大振幅電圧 Vr=100mVを用いると、

Vout=-10mV*100mV*sin(2*π*(10MHz+200Hz)*t)

の単一周波数スペクトルのサイン波が生成される。

一般の応用では、音声信号や音楽信号は、20Hz〜20KHzの可聴周波数領域に存在する全ての低周波信号が、SSB信号として帯状に分布して電波として生成され得るが、通信機製品では、2.4KHz〜3.0KHzの帯域の低周波を音声信号として利用している。

PSN式SSB変調電圧の生成 計算実験例(LTspice IV)


4.課題

(1)入力される低周波音声信号の全域(20Hz〜20KHz)について、90度位相シフト器を抵抗とコンデンサの集合体で形成する方法が知られているが、この90度位相シフト器は、信号処理する低周波音声信号の全域では、90度位相シフトを実現できず、対象の周波数範囲が制限される。その結果、90度位相シフト器の90度位相シフトの領域外の音声信号がおかしな音調に聞こえる現象が発生すると予想される。

(2)90度位相シフト器を抵抗とコンデンサの集合体で形成する方法では、90度位相シフトの領域内の信号の利得が一定にならず、最大-7dBまで連続的に利得が変化する。このため、音声の大きさの情報が正しく伝送できない問題(大きな声なのに小さく聞こえる等)の発生が予想される。

(3) これら(1)(2)の課題を解決する手段としてウェーバーPSN方式が考案されており、ここのPSN方式より優れた特性のSSB変調が可能になると期待される。

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