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2017年3月4日土曜日

VXO式/Super VXO式 周波数可変型 水晶発振器の設計

発振周波数がほぼ一定で安定した水晶発振器の発振周波数を、わずかだけ可変させられるVXO回路は局部発振器のVFO代わりに使われることがある。
通信機メーカでもTR-1300(50MHz SSB, TRIO/Kenwood社)が製品に採用したことがある。

LTspiceでVXO発振回路が再現できるか確認したところ、容易に再現できることがわかった。

また、通信実験ファンに人気のある水晶を2個並列にして可変周波数を大きくするSuper VXO回路も再現したが、発振回路の特性に課題があることもわかってきた。


図1. 水晶14.145MHz VXOのAC特性

図1.では、14.145MHz共振用に定義した水晶に、直列にコイル L1= 15[uH]、バリコン xC=20[pF]〜140[pF]を接続してAC特性を見た。

この例では最大8KHzの共振周波数を下に下げられることがわかった。
バリコン容量はこれ上大きくしても共振周波数は変化せず、変化幅に上限値があるようです。
インピーダンスが極大になりNULL周波数に変化は見られない。


図2.1  VXO発振器の過渡解析とFFT解析(狭帯域)


無調整型水晶発振器と呼ばれる回路で、図1.のVXOを適用し、発振特性をシミュレートした。
たしかに発振しているが、波形が正弦波からかなり波形が崩れ、クロック波に近いような歪みが見られる。
発振回路との関係からか、予定の14.145MHzでは発振せず、かなり発振周波数がずれてしまった。(後日解析予定)

図2.2  VXO発振器の過渡解析とFFT解析(広い帯域)

図2.1の周波数スペクトラムを広帯域で見ると、やはり高調波成分が多いので、BPF/LPFを使わないと通信機応用では、スプリアス抑圧基準を満たせないかもしれない。


図3. 水晶14.145MHz並列2個のVXO AC特性

図1.と同じ水晶を2個並列にしてSuper VXOのAC特性を見た。(図3.)
言われているように、共振周波数の可変範囲が広がり、34kHz幅までとかなり広い共振周波数の変化幅が得られた。
NULL周波数は図1.と同様に変化していない。


図4.1 Super VXO発振器 動作例(狭帯域)


図4.2 Super VXO発振器 動作例(広帯域)

図3.のSuper VXO水晶で無調整型発振回路を構成した。(図4.1, 図4.2)
大変広い周波数可変範囲になったが、水晶の基本同調周波数から大きくずれた周波数で発振してしまった。
使用する水晶の特性パラメータでこの結果は大きく変化するかもしれない。

発振周波数の歪みが多く、高調波成分が多い。
やはり、BPF,LPFが必要そうに思える予期せぬ結果となった。

課題:
・水晶もVXOもRLC線形素子なので、単体での計算は容易と思われる。
・発振回路の発振周波数の式は、後日求める予定。


22MHz水晶でのVXO発振実験結果:
・発振器として実用になるが、スプリアスが多い可能性が高い。
(これは測定器がないとわからない。)
・バリコンを回転中に周波数がブルブルと振動して変化する違和感を感じた。
 回転をやめると振動は止まる。



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色々な水晶クロック発振器と正弦波生成方式

LTspiceに教育用発振器実例が、ファイル添付されて実装されている。

クロック発振器をLC同調回路を使わずに構成し、OPアンプのフィルタで、正弦波を得る方式が紹介されていた。
この方式では回路実装上、LC同調回路を使わずにすむので集積化に有利になる有用な方式になっている

図1. 時計用クロック発振器 32.768KHz (Copyright by Linear Technology inc.)

図1.の時計用32.768KHzのクロック発振器は、CPU内部の逓倍機能で数十MHzクロックを得るなど、時計以外の用途でも多く見られる。



図2. クロック発振器 100KHz (Copyright by Linear Technology inc.)


図3. クロック発振器 1MHz (Copyright by Linear Technology inc.)


図3.1 クロック発振器と正弦波変換器 1MHz (Copyright by Linear Technology inc.)


図3.2 クロック発振器と正弦波変換器 1MHz スタートアップ過渡解析(Copyright by Linear Technology inc.)

図3.2, 図3.2 は同調用LCコイルを使わず、クロック波と正弦波(サイン波)の両方が得られる便利な回路。

図4.1 ダイオードを使った2逓倍回路 発振開始の過渡解析
(Copyright by Linear Technology inc.)


図4.2 ダイオードを使った2逓倍回路 発振後の過渡解析とFFT解析
(Copyright by Linear Technology inc.)

図4.1,図4.2 は、ダイオードの周波数変換効果を応用した(?要確認)と思われるJFETの正弦波発振器周波数が2逓倍される。変わった回路ではじめて見た。
振幅はすこし揺れてしまうので必要により波形整形またはフィルター追加が必要かもしれない。
(この水晶のspice modelは、ESR特性に問題があると、Yahoo.com LTspice memberから指摘がありました。この回路の水晶モデルは、ちょっと気をつけたほうがいいかもしれません、)


図5. 水晶発振子の定義例 4MHz
(Copyright by Linear Technology inc.)

図5は、4MHz水晶の定義と特性の例。
水晶振動子の等価回路は、Qが大変高いRLC直列共振回路となっている。

共振周波数より僅かに高い周波数に鋭いインピーダンスが高くなるNULL周波数が現れる特性が見られる。

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Revision:
Mar. 08, 2017; 図4.を図4.2で入れ替え。図4.1追加。
Mar.30,  2017; 図4.1,図4.2 の水晶のspice modelは、ESR特性に課題があることを追記。

トランジスタによる水晶正弦波発振器の設計 (14MHz)

トランジスタによる水晶正弦波発振器の設計 (14.46MHz)を試みた。

図6.に示した水晶モデルのAC解析結果を図1.に示した。
この水晶モデルは、約14.46MHzに同調周波数があり、インピーダンスが極小になる。

発振器の共振周波数は図1.に示すように、f=1/(2*π√(LC)) [Hz]で計算でき、AC解析の同調点と一致した。
同調周波数 14.46MHzよりちょっとだけ高い周波数に鋭く切れ込んで、インピーダンスが大きくなるNull周波数が見られる

水晶発振器で使うLC共振回路の周波数は、この鋭いNull周波数側に同調しないように、共振周波数 14.46MHzより低い周波数に同調させる必要がある

同調周波数14.46MHzより少し高い周波数にLC同調回路を同調させると、急激に発振が停止する現象が発生する原因は、こうした水晶のインピーダンスが極大になる特性にあることが分かった

図1.  14.46MHz 水晶のAC解析

図2. トランジスタによる水晶発振回路で、コレクタ側にLC同調回路を持ち、コイル二次側から発振信号を取り出す回路を構成した。

FFT解析は、このケースでは .tran 5m startup の指定では、正しい結果が得られないので注意が必要。
正しい結果を得るFFT解析として、図3. のように解析時間幅を拡大する方法でこの不具合を回避できる。

図2. トランジスタによる水晶発振器 正弦波=14.46MHz 発振開始時の過渡解析結果

図3. トランジスタによる水晶発振器 正弦波=14.46MHz 過渡解析 時間軸拡大


図3: 過渡解析結果の時間軸を拡大すると、発振電圧波は概ね正弦波の形状で、目的周波数 14.46MHz近辺にあることが確認できた。
しかし、振幅電圧には小さな電圧の揺れが見られる。



図4. ベース抵抗の変化と発振開始時の過渡現象解析

図4.では、ベースバイアス抵抗を変化させ、発振スタートアップ時の過渡状態を見てみた。
バイアス電圧で発振開始時間が変化し、発振開始時の不安定な現象が出る現象を回避するR1の値をパラメトリック解析で探してみた結果。
2kΩ〜3kΩが安定な感じとなった。


図5. 発振波形と周波数スペクトルのFFT解析

図5.では、正弦波の純度をみるため、ベース抵抗を変化させてみた。
かなり高調波スプリアスが多く、振幅も一定にはならない、課題を持っている回路特であることがわかってきた。


図6. 水晶のモデル定義例 14.46MHz
水晶の定義モデルを図6.に示した。

ここの回路では、従来式のLC共振回路を使ったもので実機でも十分に実用になるが、より安定した振幅電圧と高い周波数純度を得たいという課題、時代の流れで、LC同調回路はできるだけ使わない回路にしたい、という課題があるので、次の記事で、クロック発振器を正弦波に変換するフィルタ方式を検討することにした。

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