2016年12月4日日曜日

IQ直交変調器を用いたAM低電力変調方式(SDR用)


1. AM変調電圧式からAM変調送信機回路構成の導出

AM変調電圧式は次のように表現されます。

Vam(t)=A*{Vdc+x(t)}*sin(ωc*t) ...(1) 
ωc = 2*π*fc ...(2)

ここで、

Vam(t) : AM変調電圧の時刻t[s]の電圧関数
t     : 時刻t[s]
A    : 高周波アンプA1の利得 :A>0
x(t) : ベースバンド信号(入力する音声信号の時刻t[s]の電圧関数
Vdc: ベースバンド信号電圧x(t)を底上げするDC電圧, Vdc>0
ωc : キャリア(搬送波)発振器 Voscの角周波数[rad*Hz]
fc   : キャリア(搬送波)発振器 Voscの周波数[Hz]

式(1)に従い、SDR(Software Defined Radio)用AM変調器のブロック図は、図1.にそのまま導かれます。



図1. IQ直交変調器を用いたAM変調器のブロック図


2. AM変調波のキャリア信号(搬送波信号)と変調信号、それぞの式の意味

Vdcはキャリア成分は、式(1)より、次の式(2)が導かれます。

Vc(t)=A*Vdc*sin(ωc*t) ...(2)

{
 (i) Vdc = 1.0 の時 AM変調
 (ii) 0 < Vdc < 1.0 の時 キャリア低減式AM変調
 (iii) Vdc = 0 の時DSB変調
 (iv) Vdc >1.0 の時、キャリア増加式AM変調
         (この条件では変調波がキャリアより相対的に弱く、変調が浅くなる。)
}

(2)式は、直流電圧Vdcに比例して、キャリア信号電圧が強くなり、
逆にVdc が Vdc < 1.0 の条件では、キャリア信号電圧は減衰し、
Vdc=0 の条件では、Vc(t)=0 となりキャリア信号電圧が消え、
DSB変調波(Double Sided Band)が発生する原理が導かれます。

一方、式(1)から、変調波電圧成分Vs(t)の一般式(3)式が導かれます。

Vs(t)=A*x(t)*sin(ωc*t) ...(3)

ここでベースバンド信号電圧x(t)を単一周波数のコサイン波と仮定すると、

x(t)=B*cos(ωs*t)...(4)
ωs=2*π*fs ...(5) 

式(4)が求まります。

式(4)を、式(3)に代入すると、変調波電圧Vs(t)が次のように導かれます。

Vs(t)=A*x(t)*sin(ωc*t) 
        =A*B*cos(ωs*t)*sin(ωc*t) 
        =A*B*(1/2)*{ sin((ωc+ωs)*t)+sin((ωc-ωs)*t) }
        =(A*B/2)*{ sin(2*π*(fc+fs)*t)+sin(2*π*(fc-fs)*t) } ...(6)

ここで元まった式(6)は、変調波電圧は、

(a)振幅電圧 A*B/2[V]の周波数 fc+fs[Hz] のUSB電圧成分
(b)振幅電圧 A*B/2[V]の周波数 fc-fs[Hz]  のLSB電圧成分

これら(a)と(b)が加算された電圧成分であることを意味しています。


3. 回路設計、ソフトウェア設計と、シミュレーション動作確認

上記の計算式をベースにして、トップダウン方式でAM変調計算式から、ソフトウェア機能とハードウェア機能の分担を決め、全体システムを構成し、実回路での動作を、回路製作前にspice(ここではLTspice)を使い、シミュレーション動作確認しました。



図3.1 IQ直交変調器を使用したAM変調器の過渡解析結果その1


図3.1は、AM変調回路の出力信号を、長めの時間で過渡解析したものです。
図3.1は、AM変調波の変調波と、それをFFT解析した結果を示しています。
AM変調波らしい波形と、スプリアス低減比 -40dB程度の結果が得られました。
(スプリアス低減はBPF性能で大きく変化します。)

マイクロコンピュータからは、プログラムで出力されたベースバンド信号1KHzサイン波電圧にDC信号を加えた信号をI入力信号に与え、IQ直交変調器のQ側は使わず、Q入力信号を0Vにプログラム制御し、ハードウェア側はIQ変調器をアナログスイッチ74VHC4066と、BPFを構成しています。

局部発振器の源発振器は、20MHzのクロック発振器で、プログラム制御DDSで発振周波数を指定することを仮定しています。

この20MHz局部発振器の20MHzは、D-F/F(74HC74)で4分周し、0度、90度、180度、270度の4種類の位相をシフトした信号を生成し、位相が相対的に90度ずれた2相のクロック信号5MHzを、IQ直交ミキサーに入力しています。

図3.2 IQ直交変調器を使用したAM変調器の過渡解析結果その2


図3.2は、AM変調回路の出力信号のFFT解析を、中心周波数5MHzで周波数の横軸を拡大したものです。
5.000MHzにキャリア信号、5.001MHzに変調波成分のUSB側、4.999MHzに変調波成分のLSB側が出力されています。


図3.3 IQ直交変調器を使用したAM変調器の過渡解析結果その3


図3.3は、上記図3.1の過渡解析結果に、ベースバンド信号1KHzのサイン波と、AM変調出力信号、IQ直交発振器のIクロック信号、Qクロック信号、源局部発振器20MHzのクロック発信器の過渡解析信号を並べて表示したものです。


図3.4 IQ直交変調器を使用したAM変調器の過渡解析結果その4


図3.3は、上記図3.3の過渡解析結果の横の時間軸を引き伸ばして、クロック信号波形が期待値になっているかどうかを確認したものです。

4.課題

(1)  AM変調波のスプリアス低減 -60dB以下にすること。
(2)   IQ直交変調器のスプリアス低減
  理想乗算器に近い特性の実現
(3)  別方式として、変調電圧の全てをマイコンでの計算とADC,DACで実現する方式等の検討
(4) システム構成の実現性能、価格の最適化

Appendix

A. 判明した電気電子業界の誤情報:

SSB/DSB変調については、従来方式として、ダイオード4本を使ったリング変調器が有名で、TRIO社(現在のKenwood社)の大ヒット製品TS-520X/D等に採用され、世界中で広く使われました。
このリング変調器も電気的特性としては、アナログ乗算器と同様(同機能)のものです。
(厳密にはリング変調器はスイッチング動作による周波数変換器なので、ギルバートセル型アナログ乗算器(1968年US.PAT)の動作とは電気的動作が異なりますが、周波数変換機能は同一で、数式では乗算として同一機能に扱えます。)

専門書籍やラジオ専門誌では、こうしたリング変調器にDC電圧を加えると、リング変調器のバランスが崩れ、DSB(Double Sided Band)にキャリアが現れ、AM変調信号になる、という(おそらく誤った)説が広がったままのようです。

しかし、上の式(1), 図1.を見ると、リング変調器またはアナログ乗算器に加えられる電圧は、ベースバンド信号 x(t)にDC電圧を底上げするVdc[V]をアナログ加算演算したものに該当します。
決してVdc[V]が電気的に乗算器のバランスを崩すことはないはずです。

このため、過去に書籍に書かれてきたような、「リング変調器へDC電圧を与えることでそれがバランスを崩しキャリア信号が現れる」という電気的動作現象は電気的・理論的にはあり得ず、むしろバランスしたアナログ乗算動作こそが、AM変調方式に重要な、必須の回路動作の必要条件と考えられます。


B. AM変調度の定義がおかしい?

従来まで、「AM変調では変調度100%以上が過変調で変調信号が歪む」と書籍に書かれてきました。
では、SSB変調ではどうでしょう?
SSBではキャリア信号が無いので、変調度式の分母が0になり、変調度値は無限大になってしまいます。SSB変調信号は、変調度無限大ですが、歪んでいるでしょうか。

キャリアを低減したAM変調方式でも、こうしたAM変調度の定義がおかしいことがわかります。

すなわち、上記計算式からは、アナログ乗算器が歪みなくリニア増幅できる条件(ダイナミックレンジが十分に広い時)では、変調度は100%を超えても全く歪みは発生しない結果が導かれます。
従って、従来のAM変調度定義式そのもの、またはその考え方に基礎的な誤りがあるのかもしれません。

このため、プロダクト検波式受信機では、従来言われてきた過変調のAM信号波は、何ら歪みなく、変調波からベースバンド信号を復調して受信できると予想されます。


Rev.0.0 2016/12/04 初版
Rev.0.1 2016/12/10 回路シミュレーション動作確認結果を追記


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FM復調方式 レシオ検波回路のF/V変換特性と復調されたベースバンド信号の解析

FM復調方式として知られるレシオ検波回路は、モトローラ社のMC3357(クアドラチュラ検波方式)が主流になる前の時代、おそらく1970年後期か1980年前期くらい(?)まで、FMラジオ、ラジカセ、FM通信機に盛んに使われていたと思われます。詳細の歴史やいきさつを僕は知りませんが、従来までレシオ検波回路の持つF/V変換特性の持つFM復調の原理説明が多くの書籍[3]等や現在のネット上の教育記事で長い間うまくいっていない現状が分かったため、この記事では、レシオ検波回路の持つF/V変換特性を、LTspiceで解析し、そのFM復調原理の本質をわかりやすく理解できるように、その動作の解明を行いました。

図1. FM復調用レシオ検波回路のF/V変換特性 No.1


図1. は、 FM復調用レシオ検波回路が、周波数を電圧へ変換するF/V変換特性を、広めの周波数9.6[MHz]〜11.2[MHz]でAC解析したものです。

ここのレシオ検波回路はFM変調波の中心周波数10.7[MHz]近傍では、直線的な電圧変化と直線的位相の変化が見られます。

FM変調波の変調波帯域を離れるとLC同調中心周波数の同調特性により、S字カーブになり約9.9[MHz]に出力電圧の極小値と、約11.0[MHz]に出力電圧の極大値が現れ、これらの曲線となる領域では、F/V変換特性は直線性を失うものの、中心周波数10.7MHz近傍では、かなり良好な近似的直線動作が見られ、FM復調に適した特性が見られました。


図2. FM復調用レシオ検波回路のF/V変換特性 No.2

図2.は、図1.の横軸 周波数軸を10.40[MHz]〜11.0[MHz]に制限し、同じF/V変換特性を描いたものです。中心周波数10.7[MHz]近傍では、かなり良好な近似的直線動作が見られ、FM復調に適した特性が見られました。

このspiceが計算したグラフから、F/V特性と、F/Phase特性を直線の式で表現できます。

このシミュレーションでは最適化がどこまでできるか現在不明ですが、
一種の実験式として、

V(f)=A*(f-F0)+B ...(1)

ここで f は入力周波数[Hz] 
A, Bは定数 ,
F0=10.7[MHz] (F0:中心周波数) 

P(f)=C*(f-F0)+D  ...(2)
ここで C, Dは定数
を得ることができます。
式(1)がF-V変換(周波数:電圧)の一次近似式、式(2)がF-P変換(周波数:位相)の一次近似式です。


理論式は文献[2]にあります。(文献[2]の計算信頼性は未確認です。)

このテストでは、周波数変調は±150[KHz]の周波数変化には、十分な直線的電圧値が求まりました。

位相変化 P(f)は、0≦ P(f)<2π[rad]の位相一回転分の出力は得られていません。



図3. FM復調用レシオ検波回路の過渡解析結果 No.1

図3.は、ベースバンド信号(変調用の入力音声信号) 1[KHz] 尖頭電圧5[V]の微小電力FM送信機からFM変調電圧信号を出力し、抵抗100[Ohm]を介して、レシオ検波回路に入力し、入力となるFM変調波信号 V(baseband)と、出力されたFM復調信号V(rx-out)信号の時間的電圧変化(過渡解析結果)と、それらの周波数分布をFFT解析で描いたものです。

ベースバンド信号 V(baseband)は1KHzの正弦波(左下のグラフの赤い色の線)とFM変調送信機のFM変調波形V(tx-out)の左下のグラフの青い色の線)が、レシオ検波回路に入力され、出力信号V(rx-out: 緑線)が制限波 1[KHz]で復調され、出力されています。

図3. 下側はFFTによる周波数分布スペクトラムを描いたものです。
V(tx-out)) 赤色の線は、遅い赤色のピークが10.7[MHz]に見えます。

図3. V(rx-out)は、青い色の線で、FM復調された1[KHz]信号のピークが見られます。
図3. V(baseband)は、青色の線で、FM変調送信機の入力となる音声信号で同じく1[KHz]のピークが見られます。

V(baseband)とV(rx-out)信号は、レシオ検波回路通過により、オリジナルのベースバンド信号のS/N劣化があることが分かります。
しかしながら、復調されたV(rx-out)信号のノイズフロアは -30db 〜 -60dBにもなっており、大変S/N比の良い雑音がほとんど聞こえないFM復調ができていることが分かりました。


図4. FM復調用レシオ検波回路の過渡解析結果 No.2


図4.は、図3.のFFT結果について、ベースバンド信号(緑)と、出力されたFM復調信号(青)のグラフを拡大表示したものです。



図5. FM変調波の周波数スペクトラム


図5.は、FM送信機のFM変調電波 V(tx-out)を青色で、周波数スペクトル表示したものです。
期待値通りに、10.7[MHz]を中心にして±75KHzの周波数帯域で、ほぼ平坦な振幅一定のFM電波が送信されています。

実機動作確認:
このレシオ検波は、僕が学生時代に製作し、144-146[MHz]帯をダウンコンバージョンした受信機で、音声が期待した音量、音質で再現できています。


References:
[1] このレシオ検波回路は、僕が昨年2015冬に暫定設計したものを、LTspice Group/ Yahoo.comのモデレータのHelmutさんに再設計していただいたものをベースにています。

[2]以前書いた新原さんの電子書籍(本ブログ、乗算器の文献のタイトル)

[3]トランジスタ技術 2016年1月号 「情熱のFMラジオの製作」

[4]本ブログ上のFM変調関連記事


2016年11月20日日曜日

ラジオ・キット KM-88 不具合原因解析と対策(改良設計) 暫定版

KM-88 スーパーヘテロダインラジオの動作方式

概要 KM-88は、RF MixerをTR1, 局部発振器をTR2でそれらの回路を独立に分離しているのを特徴とするスーパーヘテロダイン式ラジオである。

(一般家庭用、趣味のキット用として、安価な従来式スーパーヘテロダインラジオは、次の2タイプがある。

A. 一石のトランジスタでミキサーと局部発振器を同時動作させるタイプ
B. 二石のトランジスタで、ミキサー回路と、局部発振器を分離したタイプ

KM-88は後者Bのタイプで、ミキサー回路と、局部発振器回路が独立しているので、それぞれの回路のトランジスタに独立したバイアス電圧を与えることができ、それぞれの回路動作条件を若干だけ設計しやすく、動作も安定する設計意図による構成になっている。)


図1. KM-88 オリジナル回路と改良設計の概略


2. 回路構成と動作方式

(1) TR1は、ベース端子から L+VC1 同調回路で選択した放送局高周波AM電波を入力、局部発振器(TR2によるOSC)のサイン波電圧をエミッタ端子からC2経由で入力、両者のRF信号をアナログ乗算して周波数変換動作させ、455KHz帯の中間周波数帯を、IFT-1に出力する。

(2) TR2は、局部発振器(OSC)を構成。発振周波数はOSCコイルとVC2の同調回路より定まる。

(3) TR3,TR4は、IFT 455KHz帯の中間周波増幅帯高周波アンプを構成し、ここで高い受信感度利得を得る。 TR3のベースにはC11、R8で時定数の定まるAGC電圧がかかるAGC(自動利得制御)がかかる。TR4のベースは固定バイアス電圧により固定利得で動作する。

(4) D1のダイオード、R10,VR,C8,C9は、AM変調波を検波するダイオード検波回路を構成する。また、ダイオードから出力されるマイナスDC電圧をAGC電圧としてIF初段のTR3にフィードバックする。

(5) TR5,TR6はトランジスタ2段の小信号低周波増幅アンプを構成する。

(6) TR7、TR8は、プッシュプルによる電力増幅アンンプでスピーカSPを鳴らす。

3. 課題

(1)TR1がミキサー回路として周波数変換動作を行うためには、アナログ乗算器としてバイアス動作点を設定する必要がある。しかし、この一石アナログ乗算回路は、ギルバートセル型アナログ乗算のような優れたアナログ乗算特性が出せない電気的特性上の課題をかかえたまま、現在でも課題が解決されていない。

TR1の負荷が、iFT同調回路で、インピーダンスを下げてコレクタに接続されてはいるが、負荷インビーダンスが虚数成分(リアクタンス成分)を持つために、良好なアナログ乗算器特性を出せない原因になっている
TR1の負荷インピーダンスは、理想的には純抵抗成分であるのがアナログ乗算動作に必要な基本条件と考えられる。

(2)TR1のOSCとの結合抵抗C2 = 0.005uFが大きすぎる。このため、OSCの発振が不安定または停止し、ラジオが全く聞こえない現象を起こす原因になっている。

(3)OSC回路のC3は不要。

(4)回路構成上、TR1のミキサー回路と、OSC TR2の電気的結合が強すぎる。このため、両者の回路をそれぞれどちらも安定動作させる条件の同時成立が難しくなっている。
(どちらかの回路動作に不安定動作が現れると、他方に悪影響が及ぶ。)

(5)OSCが安定に発振するためには、TR2のバイアス電圧ポイント設定が適切である必要がある。しかし、このバイアス電圧ポイント設定が適正でないと、全く発振しないか、異常発振の原因になっている。

(6)OSC TR2コレクタ側に接続されるOSCトランスの2次側コイルから、Vccパタンを経由して、強い発振波RF電圧が漏れる。このため、これをバイパスする高周波特性の良いパスコンが必要だが、回路上に明確にはない。
(C12は電解コンデンサ(アルミ電界コン)なので良好な高周波バイパス特性が期待できない。)

このため、Vccと交流的にショート状態にあるGNDラインー>C1ー>TR1ベースへOSC発振電圧が流れ込みやすく、TR1が異常発振する原因になっている。

(7) iFT1, iFT2, iFT3はそれらは、一次側、ニ次側が密結合になっているので、iF増幅回路の総合利得が高いため、自己発振しやすい構造になっている。

(8) iFT1, iFT2, iFT3はそれらは一次側の中間タップから電源電圧をとっているが、このコイル構造は、LC同調回路の同調周波数が大きくずれやすい特性があるため、iFTのそれぞれが455KHzから同調周波数が大きく離れて同調しやすくなっている。
為に、iF増幅回路の利得がほとんどなく無くなり、ラジオ放送が何も聞こえない現象を起こす原因になりやすい。

(9) (8)とは逆に、TR1, TR2 のIF増幅器は、iFTが同調すると利得が高くなるので、構造的に自己発振が起こりやすいリスクも同時に持っている。

(10) TR4のバイアス抵抗は、TR4の利得に大きく影響する。このバイアス電圧が適切でないと、十分な感度・利得が得られないか、逆に利得過剰で、異常発振を起こしやすい特性がある。

(11)ダイオードは、ゲルマニウム・ダイオードが好んで使用されるが、ダイオード検波回路の動作について従来検波理論に誤りがある。この検波回路動作は、高周波特性モデルで計算解析されるべきであるが、これが必ずしも良く知られておらず、微小電圧でのDC特性と、低い周波数での整流とピークホールドという誤った包絡線検波理論で説明されていることが多い。

ダイオードはAM検波を実際に実用的に検波動作をしてはいるが、それは被変調波成分LSB,USB信号と、キャリア周波数の差分の低周波信号の周波数変換動作によるものである。

この検波特性は、ダイオー電流の指数関数特性に由来するので、3次、4次以上の高調波歪みが発生するのを避けられない課題がある。
(ピークを補完するダイアゴナル歪みが発生するという従来理論は誤りと考えられる。)

(12)ダイオードの出力には、高い信号レベルの455KHz帯域周波数が出力され、これをC8でグランドに落とし、R10+C9によるLPFで減衰させている。しかし、その減衰量が不十分で、小信号AFアンプに漏れ出し、増幅されてしまう結果を招く。

TR5は、このIF信号を増幅から防ぐ手段が回路上にない。
T1一次側コイル+C10のLC共振回路により、この検波回路出力から漏れたIF信号増幅を抑える回路が見られるが、TR5,TR6によるIF信号増幅動作を抑えることが十分にできていない。

(13) R17は、動的に変化している電流に比例して電圧降下が起こるので、TR1,2,3,4,5,6にその変動したDC電圧が加わる課題がある。

(14) TR5以降のトランスを用いたAFアンプは周波数特性が悪いので、良好な音質を得られない。

(15) 6V電池の利用が想定されているが、現在のポータブルラジオは3V動作が主流であるが、全体の回路構成が3V等の低電圧電源動作に向いていない設計になっている。

3. 対策(改良設計)


3.1 局部発振器の安定化対策

局部発振器を単独で発振安定に改良設計する。

図3.1 局部発振器の安定化対策の過渡解析結果


3.2 ラジオ受信部の改良設計


AF増幅部を除くラジオ受信部の改良設計を行う。


3.2 AF増幅部を除くラジオ受信部の過渡解析結果



参考資料:

後述とする。

Revision: 初版 2016/11/20

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2016年11月11日金曜日

3V動作 トランスレス型 3 BJT トランジスタ 低周波パワー・アンプの設計


乾電池3Vで動作できるポータブルラジオ用にスピーカを鳴らせる3石トランジスタ使用低周波ミニ・パワーアンプを設計した。

1. 前段LPF無しの増幅動作



















図1 過渡解析結果





















図2 AC解析結果


過渡解析結果からは、高調波歪みは多少あるが、実用範囲にあると思われる。
約20dBもの電圧利得が得られた。

しかしトランジスタの高周波特性が良すぎるため、中間周波数455KHzでも相当の利得がでてしまう。


2. 高周波ゲインを下げる改良

上記1.の周波数特性を、高周波領域で十分下がるように初段に 10KΩと0.01uFによるLPFをつけた。

その結果、総合利得はぼぼ同一で、中間周波数455KHz以上で十分に利得が下がる効果が得られた。





















図3 過渡解析結果
























図4 AC解析結果



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2016年11月5日土曜日

Synchronized AM demodulator by using “IQ demodulator” and calculations of square-multiplying and square root 

Synchronized AM demodulator by using “IQ demodulator” and calculations of square-multiplying and square root (Preliminary)
IQ(直交)復調器と、自乗、加算、平方根計算を使った数値演算式AM同期検波方式理論
(C) Noboru, Ji1NZL, Nov. 2, 2016


[Abstract] 
AM receivers can cancel the change of the phase on the received signal by using an IQ demodulator and the math operation Vout = √(I(t)^2+q(t)^2). 
The IQ demodulator here may configured by analog circuit and that the math operation Vout = √(I(t)^2+q(t)^2) can be calculated by some MPU or DSP. This AM detector can get good quality of sound with very low distortion.

 Fig.1 An architecture of AM synchronized detector

1. How the AM synchronized demodulator works

AM RF signal received on the radio expressed as the equation (1). 
Here, I assume that Vam changes the phase θ(t)[rad] on the propagation path of the AM RF/ ( E/M ) wave. 

Vam= ( Vdc+x(t) )*Vc*sin(ωc*t+θ(t)) …(1)  

Vdc : DC voltage at AM modulator. Unit is [V].
x(t) : Baseband signal function for AM modulator. Unit is [V].
Vc  : Carrier peak voltage that AM receiver receives. Unit is [V].
ωc : Angular frequency of the AM modulator. Unit is [rad・Hz].
fc  : Frequency of the carrier ωc. Unit is [Hz].

There is a problem that the signal strength of decoded tone changed by this phase change. For example, when the receiver used the oscillator frequency = π/2 [rad] shifted for the equation (1), the decoded signal becomes 0. It means there is no tone. Or we feel it as “fading” phenomenon as time goes on.

The AM decoder here synchronized with the phase of the carrier, fix this problem.
Assume the baseband signal is a sine wave voltage of single audio frequency defined as (2) here.

x(t)=Vs*sin(ωs*t) …(2)  

Vs  :  Peak voltage of (2). Unit is [V].
ωs : Angular frequency of a sine baseband signal. Unit is [rad・Hz].
ωs = 2πfs …(3)
fs : Frequency of baseband sine wave. Unit is [Hz].

The voltage of the oscillator Vosc is expressed as

Vosc = Vo*sin(ωc*t) …(4)

Vo : Peak voltage of (4). Unit is [V].

At the equation (1), 

sin(ωc*t+θ(t)) = sin(ωc*t)*cos(θ(t))+cos(ωc*t)*sin(θ(t))  … (5)

Then (1) becomes


Vam= Vc*{Vdc+ Vs*sin(ωs*t)}* { sin(ωc*t)*cos(θ(t))+cos(ωc*t)*sin(θ(t)) } …(6)
      = Vc{ Vdc*sin(ωc*t)*cos(θ(t))+Vdc*(cos(ωc*t)*sin(θ(t))) )
              +Vs*sin(ωs*t)*sin(ωc*t)*cos(θ(t))+Vs*sin(ωs*t)*cos(ωc*t)*sin(θ(t)) } …(7)

Since V3 = Vam*Vosc , then (7)x(4) becomes V3,

V3 = Vc{ Vdc*sin(ωc*t)*cos(θ(t))+Vdc*(cos(ωc*t)*sin(θ(t))) )
              +Vs*sin(ωs*t)*sin(ωc*t)*cos(θ(t))+Vs*sin(ωs*t)*cos(ωc*t)*sin(θ(t)) } * Vo*sin(ωc*t)

=Vc*Vo{ Vdc*(sin(ωc*t))^2*cos(θ(t))+Vdc*(sin(ωc*t)*cos(ωc*t)*sin(θ(t))) )
            +Vs*(sin(ωs*t)*sin(ωc*t))^2*cos(θ(t))+Vs*sin(ωs*t)*sin(ωc*t)*cos(ωc*t)*sin(θ(t)) }

=Vc*Vo{ (sin(ωc*t))^2* {Vdc*cos(θ(t)) + Vs*sin(ωs*t)*cos(θ(t))}
            + (sin(ωc*t)*cos(ωc*t)*{ Vdc*sin(θ(t)) + Vs*sin(ωs*t)*sin(θ(t)) } }

=Vc*Vo{ (sin(ωc*t))^2* (Vdc + Vs*sin(ωs*t))*cos(θ(t))
          + (sin(ωc*t)*cos(ωc*t)) *(Vdc + Vs*sin(ωs*t))*sin(θ(t)) }  …(8)


Here,
(sin(ωc*t))^2 = (1/2)*(cos(2*ωc*t)-cos(ωc-ωc)) = (1/2)*{cos(2*ωc*t)-1}  …(9) 
sin(ωc*t)*cos(ωc*t) =(1/2)*sin(2*ωc*t) …(10)

Replace (sin(ωc*t))^2 and sin(ωc*t)*cos(ωc*t) in (8) by (9) and (10)
Then

V3 = Vc*Vo{  (1/2)*{cos(2*ωc*t)-1} * (Vdc+Vs*sin(ωs*t))*cos(θ(t)) + (1/2)*sin(2*ωc*t) *(Vdc+Vs)*sin(θ(t)) } 
    = Vc*Vo{ (1/2)*cos(2*ωc*t)*(Vdc+Vs)*cos(θ(t)) -(1/2)* (Vdc+Vs)*cos(θ(t)) + (1/2)*sin(2*ωc*t) *(Vdc+Vs*sin(ωs*t))*sin(θ(t)) }  …(10)

Very high RF frequency voltage cos(2*ωc*t) and cos(2*ωc*t) can be remove from (10) by LPF,

Then
V-i = Vc*Vo{ -(1/2)* (Vdc+Vs*sin(ωs*t))*cos(θ(t)) }  
    = -(1/2)*Vc*Vo{ (Vdc+Vs*sin(ωs*t)) *cos(θ(t)) } …(11)

V2 is -π/2[rad] shifted signal of the oscillator (4),

V2= Vo*sin(ωc*t-π/2) = -Vo*cos(ωc*t) …(12)

Here the equations (4) and (12) configures as so-called an “orthogonal oscillator”. 
They may generate orthogonal sine waves or square (pulse) waves that they are shifted -π/2 [rad] each other.

When the orthogonal oscillator generates sine waves, the mixer devices must be used as analog multipliers.

When the orthogonal oscillator generates square (pulse) waves, analog switches can be used as the mixer devices. 

Get V4 = Vam * V2, 
V4 = Vc{ Vdc*sin(ωc*t)*cos(θ(t))+Vdc*(cos(ωc*t)*sin(θ(t))) )
            +Vs*sin(ωs*t)*sin(ωc*t)*cos(θ(t))+Vs*sin(ωs*t)*cos(ωc*t)*sin(θ(t)) } * (-Vo*cos(ωc*t)) }
    = -Vc*Vo{ Vdc*sin(ωc*t)*cos(ωc*t)*cos(θ(t))+Vdc*((cos(ωc*t)^2)*sin(θ(t))) )
                    +Vs*sin(ωs*t)*sin(ωc*t)*cos(ωc*t)*cos(θ(t))+Vs*sin(ωs*t)*(cos(ωc*t))^2*sin(θ(t)) }
    =  -Vc*Vo{ sin(ωc*t)*cos(ωc*t){Vdc*cos(θ(t)) +Vs*sin(ωs*t)*cos(θ(t))}
                    +((cos(ωc*t)^2) {Vdc*sin(θ(t))+ Vs*sin(ωs*t)*sin(θ(t))}  }
  =  -Vc*Vo{ sin(ωc*t)*cos(ωc*t){Vdc +Vs*sin(ωs*t)}*cos(θ(t))
                  +((cos(ωc*t)^2) {Vdc+ Vs*sin(ωs*t)}*sin(θ(t))) } …(13)

Here,
(cos(ωc*t))^2 = (1/2)*(cos(2*ωc*t)+cos(ωc-ωc)) = (1/2)*{cos(2*ωc*t)+1}  …(14) 

sin(ωc*t)*cos(ωc*t) =(1/2)*sin(2*ωc*t) …(10)

V4 = -Vc*Vo{  (1/2)*sin(2*ωc*t) *{Vdc +Vs*sin(ωs*t)}*cos(θ(t))
                  +((1/2)*{cos(2*ωc*t)+1}) {Vdc+ Vs*sin(ωs*t)}*sin(θ(t))) }
    = -Vc*Vo{  (1/2)*sin(2*ωc*t) *{Vdc +Vs*sin(ωs*t)}*cos(θ(t))
                  +((1/2*Vdc)*{cos(2*ωc*t)) + (1/2){Vdc + Vs*sin(ωs*t)}*sin(θ(t))} ) } …(15)

Very high RF frequency voltage sin(2*ωc*t) and cos(2*ωc*t) can be remove from (15) by LPF,

Then
V-q= -Vc*Vo{ (1/2){Vdc + Vs*sin(ωs*t)}*sin(θ(t))} ) } 
= -(1/2)*Vc*Vo*{Vdc + Vs*sin(ωs*t)} *sin(θ(t)) } …(16)

Here, define K(t) is as
K(t) ≡ -(1/2)*Vc*Vo*{Vdc + Vs*sin(ωs*t)} …(17)

Then (16) can be written as
V-q = K(t)*sin(θ(t)) …(18)

and (11) can be written as
V-i = K(t)*cos(θ(t))  …(19)

By using (18) and (19),

V-i^2 + v-q^2 = {K(t)*cos(θ(t)) }^2 + {K(t)*sin(θ(t))}^2
                    = K(t)^2*{cos(θ(t))}^2 + K(t)^2*{sin(θ(t))}^2 
                    = K(t)^2*{ {cos(θ(t))}^2 + {sin(θ(t))}^2 }  … (∵ {cos(θ(t))}^2 + {sin(θ(t))}^2 =1 )
                    = K(t)^2

∴ √(V-i^2 + v-q^2) = K(t)
                            = -(1/2)*Vc*Vo*{Vdc + Vs*sin(ωs*t)} …(20)

The equation (20) is the same as AM decoded voltage Vout on the Fig.1.
∴ Vout = -(1/2)*Vc*Vo*{Vdc + Vs*sin(ωs*t)} 
            = -(1/2)*Vc*Vo*Vdc  - (1/2)*Vc*Vo*Vs*sin(ωs*t) …(21) 

The equation (21) does not have the variable θ(t) in these parameters.
And Vo and Vdc are constant value. 
The DC voltage -(1/2)*Vc*Vo*Vdc [V] can be removed by some condenser such as 1uF.
Vc (signal strength) can change according to the time goes. 
However it can be nearly constant by using AGC (Automatic Gain Control) in the receiver.

This means output signal voltage Vout is extracted the baseband signal Vs*sin(ωs*t) as the output “Vout” from Vam, 
it is independent of change value of the phase θ(t),
and the AM Synchronized reception is possible by using the architecture of Fig.1.

I draw the Fig.1 by referencing the schematic[1] and changed the delay function to configure an orthogonal OSC(oscillator). that generates a 1MHz sine or square (pulse) wave and a π/2 [rad] shifted one.

If voltages V-i and V-q are sampled by A/D convertors, MPU or DSP can calculate Vout by the equation (21). 


Fig.2 is an example of simulation result of the transient analysis by LTspice iV developed by (C) Linear Technology inc. 
The quality of the detector is pretty better than the traditional diode detector.


Fig.2 Simulation result of the transient analysis by LTspice iV 

 
                        Fig.3  An example of actual work of demodulation by "IQ demodulator" 


      Fig.4  An example of assembling of "IQ memodulator" RF front end PB

2. Subjects

(1) Frequency stability of the orthogonal oscillator and error of demodulated tone

    The orthogonal signal oscillator have to have good frequency stability such as a few Herz.
    But old type of PLL that sets the frequency such as 100Hz every steps is used, 100Hz low beat can occur.
    Frequency error for the orthogonal oscillator can affect the tone difference. Especially, when listening music or songs. 
    It seems that human’s ears are very sensitive for 8Hz frequency drift.
    Accuracy and stability of frequency for the orthogonal oscillator is very important.  
    Latest DDS can satisfy this accuracy.

(2) Sampling noise of ADC (AD converter)
    The sampling noise of ADC (AD convertor) may affect the RF input of the receiver. It must be minimized.

(3) Switching noise of Analog switches
    When analog switches are used as the orthogonal mixer, they generates some noise. However, it can removed by LPF.
    In the actual experiments, they are practical enough.

(4) Wide dynamic range of AM demodulator
    The traditional diode AM detector so called “Peak detector” or “Envelope detector” generates harmonics tone such as 2KHz, 3KHz, …. if the baseband frequency is 1KHz used. This is derived from the electric characteristics of exponential function on the diodes current.  { The current on diode is expressed as  “ i = Is*(exp(K*v)-1) “. }
This demodulator can have much wider dynamic range for the baseband signal swings then the diode detector. 
Because the demodulator by analog multipliers or analog switch can have wide dynamic range without tone distortion such as the traditional diode detector.

(5) Programmable LPF/BPF
The LPF/BPF at I/Q output sides can be defined by the software on the DSP or MPU. Eg. FIR filter, IIR filter.
These LPF/BPF also can be configured by the analog circuit such as CR filter, LC filter, or other filter used with OP amps.  

References:
[1] The schematics of “AM synchronous detector” by the author Mr. “Kaikyou no Kaze” / “The wind from the sea” 
(Copyright of the schematics is reserved and is respected as nice knowledge of the author.)

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2016年11月3日木曜日

コイルを使わないGIC同調回路とそれを使ったダイオード検波AMラジオ

コイルを使わないGIC同調回路とそれを使ったダイオード検波AMラジオを構成してみました。
目標は、IC(集積回路)にコイルを使わずに同調回路やマッチング・フィルタを組み込むことを視野に入れています。
























図1 GIC同調回路を使ったダイオード検波AMラジオの過渡解析結果










図2 GIC同調回路を使った同調回路の周波数・位相特性解析結果
(長波〜中波〜短波)


































図3 従来式 LC同調回路を使った同調回路の周波数・位相特性解析結果
(長波〜中波〜短波)


参考資料:
[1]アナログ回路 培風館 "オペアンプによるGIC回路"
(内容が古いので現代に適応する改訂が望まれます。)


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