2015年12月12日土曜日

汎用トランジスタを使ったベース接地アンプ、エミッタ接地アンプの特性


トランジスタ技術誌が、spiceを使った基礎回路の記事を掲載されています。
今回はその記事を参考にして、ベース接地小信号(低周波用)1石トランジスタアンプ(電圧利得20dB)の特性をパソコン上で再現してみました。

1石アンプとして、ベース接地型アンプと、エミッタ接地型アンプの二種類の回路を、汎用トランジスタ2N2222(DIP品)、2SCR372(SMD品)を使ってシミュレーションしてみました。


1. 2N2222 1石アンプの過渡解析


±5m[V]のサイン波(10mVp-p) 周波数1KHzを、ベース接地型1石アンプ(左側)、エミッタ接地型アンプに入力し、増幅された信号を、過渡解析で見た結果です。

両者のアンプとも綺麗に増幅された電圧出力が得られています。
hFE(電流増幅率)=Ic/Ib は、約207でわずかに揺れながら動作しています。

出力の位相は、従来知られている通りに、ベース接地型では同相、エミッタ接地型では、反転位相が、期待通りに得られています。


2. 2N22221石アンプのAC解析結果



周波数20[Hz]〜10M[Hz]まで、両者のアンプとも、電圧利得約20dBが平坦な良好な特性が得られました。10M[Hz]以上の高域周波数帯での利得の落ち方も自然なカーブで落ちています。

(現在も含め)従来まで専門書で書かれてきたことに、ベース接地形トランジスタアンプのほうが、エミッタ接地式よりも、ミラー効果が少なくなり、高い周波数まで増幅できる、とありました。
しかし、ここでの結果は、両者のアンプともほぼ同等の高周波利得が得られ、むしろ、エミッタ接地形アンプのほうが、利得、位相特性とも自然な特性が見られます。

2N2222はかなり古いトランジスタのようですが、この古いトランジスタの時点で既に高性能で、こうしたエミッタ接地アンプで言われてきた高周波領域で利得が下がる、という現象は、(もしかしたら)現在では再現しないのかもしれません。

(個人的には、現在の電子技術関連の専門教本の改訂が長い間行われず、時代遅れになっているのではないか?という印象を持っています。)


3. ベース接地式アンプで見られる高域周波数特性の乱れ


ここで得られた結果は、トランジスタのspiceモデルがどこまで正確に定義できているかで結果が大きく変わってくるようです。
高周波特性がより優れていることになっているベース接地形が、高域周波数での利得が落ちてしまい、350M[Hz]近辺では位相の変曲点が見られ、共振現象が起きているようです。

実際こうなるかどうかは、ここまで周波数が高いと、高価な信号発生器と高性能オシロでも測定そのものの確認が難しいと思われます。


3.  2N2222 と 2SCR372 (Rohm社) の特性比較

日本では2SC372 -> 2SC1000 -> 2SC1815が汎用トランジスタが使用されてきましたが、表面実装の高密度配線に対応するため、そうしたDIP部品の汎用トランジスタも、表面実装品へ生産が移行しているようです。

幸い、Rohm社の2SCR372(表面実装用)トランジスタが、これらの汎用トランジスタと似た特性があるようです。LTspiceに標準でspiceモデルが入っています。

3.1 2SCR372アンプの過渡解析結果


ベース接地形アンプ、エミッタ接地形アンプとも問題無い特性が得られています。


3.2 AC解析結果


表面実装品の特性の良さがあるのか、2SCR372が、最も良い周波数特性が得られました。
高域での共振現象も現れません。


4. 補足情報

現在、トランジスタ技術誌が、spiceを使った基礎回路の記事を掲載されています。
今までは、随分長年の間、掲載された回路が実際に作ると全く動かない、または少しだけ動くが実用にはほど遠い・・・。僕は少年時代からこうした経験を長くしてきました。

最新のspiceは、電子回路設計文化の大きな分岐点を作りだしていると思います。
spiceは、こうした設計ミスが見抜けないことから発生する実回路のトラブルを回路製作前に確認できる点で、大変実用性の高いものになっています。

設計に問題があると、その不具合がそのままそっくりspiceで再現される経験を僕はしています。

ネットでさかんに聞いた話では、「spiceでは動いたけど、実機で動かなかった。だから実機で作らない限りだめで、spiceは使えない。」というものがありました。
これらの噂は、僕が経験している実験事実と全く異なった情報でした。

僕の経験では、動かない、または異常動作する(設計不良を伴った)回路は、spiceでも動かないか、または異常動作することが、パソコン上で再現しています。