2015年7月11日土曜日

AM変調の原理実験


このAM変調送信機は、LTspiceに用意されたAM/FM送信器定義部品を使って、1MHz キャリアに、1KHzの変調波(最大振幅40[mV])を与えて過渡解析結果と、FFTによる周波数成分を見たものです。変調度は100%です。このAM送信機は、DC電圧 40[mV]をオフセットとして、変調サイン電圧波を底上げした電圧と、キャリアのサイン波1MHzを乗算器で乗算する、いわゆるAM低電力変調と呼ばれる方式であることがわかります。

出力されたAM変調波の周波数成分は、中央が1MHzのキャリア、左側が1KHz下の変調波、右に同様に、1KHz上の変調波が見えています。変調度100%でも殆ど理想的な歪の少ないAM変調波が出力されています。

いにしえからの言い伝えによると、AM変調は簡単にその送信機を製作できるとあります。
その言い伝えがいつ始まったのかはわかりませんが、実際にラジオ専門誌、雑誌の回路設計を使うと、変調がうまくかからないことが殆どです。おそらくこの迷信化した言い伝えは今でも信じられています。

書籍として記事にいったん書かれ、それが繰り返されると、私達は知らない間に騙されていても、それに気づかないものなのです。結論から言うと、それらの製作記事は設計ミスのために、変調がうまくかかりません。プロのラジオAM局が綺麗に変調がかかっていますが、市販の通信機では、有名なナショナル社RJX-601すらも1W出力ではプラス変調がかかっていましたが、3W出力に切り替えると、通称 ”マイナス変調”と呼ばれる現象が発生していました。

これも設計ミスによるものであることは、未だに殆ど知られていないと思われます。
マイナス変調とは、AM送信機のマイクから音声を入力し変調をかけると、送信出力が現象方向に送信電圧が下がる現象です。他、製作すると期待しない異常動作を経験しました。



この回路は比較的近年にインターネットに公開された、終段コレクタ変調方式の一つです。これはうまく動作していることがわかります。オーディオアンプとして多用されているLM386の出力電圧を、終段トランジスタのコレクタへ接続し、直線増幅動作するようにバイアス動作点を設定し、変調用トランスを用いていない新規性が特徴で、優れた設計です。



この回路は、トランジスタによる1MHzのサイン波発振回路に、抵抗1本だけの自己バイアス方式で、トランジスタ高周波増幅器を接続し、同増幅器に変調トランスを介して、終段コレクタ変調方式で、AM変調をかけています。
結果は、図の通り、変調信号を十畳された変化する電源電圧が加わった終段トランジスタは、出力される高周波電圧にAM変調の振幅とは異なる位相の変調振幅波形が出力されています。



このケースは、終段トランジスタの出力する変調波が、上下で90度位相がずれて、上下対称にならない変調の位相ずれの問題が起きています。


この例では、バイアス無しの2段の高周波アンプを構成し、それぞれに、変調トランスを介して振幅する電源電圧を与えています。出力された変調波は、非常に変調度の低い信号電圧が現れています。バイアス無しなので上記の高周波アンプはC級アンプです。
この回路構成は、日本で数多く出版されたラジオ専門誌に掲載されてきたものです。

この回路方式を実験すると、実際に非常に変調の浅い音が、AMラジオから聞こえます。
この回路構成は、現在でもインターネットに多く掲載されています。


この回路は、2段の高周波アンプに抵抗二本で電源電圧を分圧したバイアス電圧を与え、トランジスタの直線増幅動作特性を改善させたものです。
上のバイアス無しの高周波アンプと異なり、かなり深いAM変調がかかるように特性が改善されています。


この回路は、変調をより深くかけて見た例です。


非常に長い間、現在でも、C級増幅アンプによるAM変調回路が発表されてきていますが、その従来方式では浅いAM変調またはマイナス変調という現象が発生します。

私の検証作業においては、簡単にAM変調ができるという従来の書籍説明は、シミュレーションでも、実機実験でも再現したことは一度もありません。

付録:
BJT TR 2N2222 を使った「終段コレクター変調式AM送信機」のシミュレーション計算実験例

AMコレクタ変調 例1

・・・コレクタに加える低周波電圧が低いレベルでは、電波の変調歪みは小さい。


                                                                      AMコレクタ変調 例2

・・・コレクタに加える低周波電圧が高いレベルになると、電波の変調歪みは大きくなる。


                                                                 AMコレクタ変調 例3

・・・コレクタに加える低周波電圧が低いレベルでは、電波の変調歪みは小さいが、
コレクタに加える低周波電圧が高いレベルになると、電波の変調歪みは大きくなる。

以上のように、LTspiceによるシミュレーション計算では、実回路と同様に、AMコレクタ変調方式は、歪変調みが発生し、良い音質のAM変調がかけにくい現象が再現する。

この特性・現象の原因は、BJTトランジスタのアナログ乗算器としての電気的特性が、真空管の プレート変調方式やハイジング変調方式より、大きく劣るためと考えます。


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