2015年8月26日水曜日

【発見】ラジオのLC並列共振回路で発生し得る電波振動現象

Noboru Aoki, Ji1NZL

ラジオのLC並列共振回路で発生し得る電波振動現象とその解決方法を発見しました。


このように約600[kHz]のLC共振回路を、コイルのQを100以上と高めに構成すると、受信したAM放送の受信電圧がLC共振回路端子で歪む現象を発見しました。

従来まで『LC共振回路のコイルはQが高いほど良い。』と書籍、文献、ネット記事に書かれてきました。
このシミュレーション計算は、こうした従来のコイルのQは高いほど良い、という考えかたが必ずしも正しくないことを示しています。



暫定策として、LC共振回路への結合コンデンサを、10[pF]からその100倍の1000[pF]にしてみました。するとLC共振回路で発生した歪の電圧波形は、殆ど見えなくなりました。
(ただし、これは本質的解決策ではありません。)


回路の動作を外から見て、その伝達関数を推定する方法として、ステップ信号を入力し、その出力を見る方法が既に知られています。ここでは、最初の図での歪の発生したLC回路にステップ信号として、パルス波を入力してみました。

このように、LRC回路の過渡現象により、パルス波を入力しただけで、約600[KHz]の電圧振動が現れました。
受信したAM信号を歪ませたその正体を捕まえました。



今度は、LC回路とAM放送電波の電圧源を結合するコンデンサを10[pF]から1000[pF]に変更した回路に、ステップ信号を入力してみます。

すると現れた過渡電圧の周波数は、受信周波数600[kHz]から大きく周波数の離れた約300[kHz]に電圧振動が現れました。
このため、受信電波600[kHz]へ歪が非常に少なくなることも分かりました。



従来は、高周波増幅回路が不安定で発振を起こしてしまう場合は、経験則としてコイルに並列に約10[kΩ]程度のダンピング抵抗を入れて実験的にその抵抗値を定めるという方法が取られてきました。

私は、今回本対策として、そうした経験則に頼らず、コイルのQを下げるために、それに直列接続する小さい値の抵抗で、理論的に完全に押さえ込む方法を考えました。

新しい解法は次の通りです。

(1)RLC回路の過渡現象を解析するために、電荷qに対する二階線形微分方程式を立てます。
(2) (1)の微分方程式を解くための特性方程式の二次元方程式を立てます。
(3) (2)の特性方程式の解の判別方程式をDと置きます。
(4) D >0 が上記電圧振動を抑える条件式なので、D >0 となるRの条件を計算します。


D >0では、余分な電圧振動は起こらない、なめらかな減衰電圧の解が求まるはずです。



手計算はかなり複雑になりますが、解はDの条件に関して3種類の電圧式が求まるはずです。

追記:
・VHFのミニパワーアンプを製作すると、回路図通りに配線してもさっぱり増幅が起こらない、という現象を経験する一方で、HFのミニパワーアンプを製作すると、増幅しているが発振気味になる、増幅スプリアスが多いという経験をしています。

後者の発振現象に対し、従来は、経験的に次の解決方法が使われてきました。

(1)入力LC共振回路に並列に10kΩ程度の抵抗を接続してコイルのQをダンプする。(Qを下げる。)
(2)トランジスタのベースに10〜20Ωの抵抗またはフェライトビーズ(FB-101)を直列に入れる。
(3)同調型アンプ方式に代わり、広帯域パワーアンプ方式にする。出力負荷には、フェライト素材の磁性体にキャンセル巻きのコイルを使用する。
(4)RFCは、パラスチックサンプレッサと呼ばれる100-200Ω程度の抵抗にコイルを巻いたものを使うか、フェライトビーズFB-225を使う。

現在のところ、方式(3)が最も安定な高周波パワーアンプの性能を引き出せています。
一方、方式(1)(2)(4)の対策に対応する発振原因は、現在まで解明されていませんでした。

この記事で扱ったLC共振回路で過渡現象により発生するサイン波の発生現象は、不安定な増幅状態にあるアンプを発振させる、キック・引き金になっていることを示しています。

送信開始操作と同時に、高周波パワーアンプが発振を開始する場合は、こうしたLC同調回路で起こる電圧振動を、前述の方法で止めれば良いことがわかって来ました。
(Dec.5, 2015)