2017年1月26日木曜日

SA612/NE612 SA602/NE602 14MHz受信機のAGC効果の計算

SA612/NE612,SA602/NE602 は、ギルバートセル型乗算器を 2ペア 1個 内蔵し、Mixer回路、プロダクト検波回路、水晶用局部発振器を実装している。
(高感度のシングルスーパヘテロダイン受信機や、送信機用のDSB/SSB/AM用平衡変調器を実現できる人気のあるIC。)

受信機として使う場合は、この応用で、総合利得が100dBを超えるのに対し、AGC制御がおよそ40dB程度可能らしく、飽和しやすい課題があるように思える。


図1. SA612/NE602 受信機で発生するプロダクト検波の奇数次高調波の歪み


図1.は、14MHz受信機を構成し、ベースバンド信号1KHz 最大振幅=20uV 程度を入力すると使用したspiceモデルでは、3次、5次、7次の奇数次の歪みが現れた。
おそらくこの原因は、サイン波同士の乗算では無く、クロック波形のような矩形波との乗算が起こっているのではないか、と思える。(図1.)


図2.1  AGC制御の効果 その1

増幅された信号が内部で飽和しているかもしれないので、AGC制御で利得を制御してみた。
AGC効果があまり効かないのと、IC入力前のLC回路で過渡現象によるRF入力電圧歪みが発生しているのがわかった。(図2.1)


図2.2  AGC制御の効果 その2

AGC電圧制御ピンの電圧を、パラメータ解析で変化させてみた。
AGC電圧も変化し、利得も変化しているが、IC仕様がAGCレンジ40dB程度らしいので、微弱な信号受信には高感度で受信できても、すこし信号が強くなると検波信号が歪むと思われる。
このため、ダイナミックレンジを広げるには、前段にAGC付きアッテネータがあると良い解決になるかもしれない。

最も簡単な解決方法は、バリオームの手動で感度を絞るのも現実的にあると思う。

図3. 初段LC回路を取り、過渡現象の電圧振動を止めた場合のAGC特性

フロントエンド部のLC同調回路を暫定的に取り去り、LC回路の過渡現象による電圧振動の歪みを取り除いた。(図3.)
AGC電圧制御は非常に微小な電圧変化で利得が変わるのでアナログ回路での制御が難しい。
依然としてAF出力は歪んでいる。
第一 OSC電圧およびBFO電圧に線形比例でAF出力があがるはずなので、それらの電圧を下げると過剰な利得を下げて、歪みが無くなる?かもしれない


このICは、DSW-II(US Small wander Lab.社製造販売の組み立てキット)という製品に採用されている。この製品ではAGC制御無しと、割りきった設計となっていた。
7MHzで使用すると電信の受信時、弱い信号は問題無いが、信号が強い場合に、800Hz程度のビート音に安っぽい音に聞こえるという違和感を感じた。

VGAというICが市場には出ていてダイナミックレンジは120dBにも達している。
しかし、使用できる周波数が現在のところ100KHzまでなので、こうした最新VGAをマイコン制御で使う場合、ダウンコンバートしてRF入力信号を100KHz以下にさげる必要がある。

国内通信機メーカはだいぶ以前に120dBのダイナミックレンジと超高感度の両立を実現しているが、VGAでこうしたAGC制御をマイコン制御でやることも可能。

一方、Direct Sampling Methodと呼ばれるダイレクトコンバージョン受信機で、DC(0Hz)〜ベースバンド周波数域へ落とし、ADコンバータで直接信号をサンプリングして、マイコンやDSPで信号処理して、DAコンバータで、音声や画像、データを復元する方法が現在の流行にある模様。
(この方法は高い周波数VHFでは利得が低くなるため、RFアンプで利得を稼がないといけない厄介な課題もあり、全てがHappyとは言えない。LNA IC 2段 +32dB/82.5MHzのFM受信機設計例あり。RF増幅段のAGC制御も不可能。ここまで高い利得をRF初段でとるのは、システム全体の利得配分としてはたして適切かどうか。)

1997年ころからポケットベルに採用されたらしいダイレクトコンバージョン受信機は、現在では、携帯電話やスマートホンでも採用されているかもしれない。(要確認)

AGC制御は、マイコン制御なら容易にプログラムで制御電圧を計算で出せるが、アナログ回路でやろうとすると、非常に回路の実現が難しいと感じる。


Revision;
2017.Jan.31: 図3.と説明追記。
2017.Apr.09 :誤記訂正: ギルバートセル型乗算器を 2ペア 1個 内蔵し