2017年2月4日土曜日

従来式スーパヘテロダインラジオ用局部発振器の広帯域発振 性能限界の評価

従来式スーパーヘテロダイン・ラジオの局部発振器は、中波帯域 550KHz〜1600KHz 実に1MHz以上、かつスプリアスの大変少ない綺麗なサイン波(正弦波)が生成します。

トランジスタ式スーパーヘテロダインラジオ用局部発振器用コイル(赤色)は、現在でも市販されていますが、そのコイル特性は神業とも言うべき、洗練された最適化がなされていることがわかってきました。

図1.は、KM-88という現在も市販されているラジオキットの局部発振器をオリジナルに最適化設計しなおしたものです。

図1. ラジオ用局部発振器の発振周波数範囲の限界

発振が開始され、振幅の安定するには電源ONから若干の時間を要し、振幅が一定になるには何らかの規則性が見られます。

図1. では、最も高い周波数(緑色)が早く発振を開始し、振幅幅も大きい結果になりました。
灰色の線が、最も周波数が低く、バリコン容量が最大になる近辺の限界周波数です。

周波数が低いほど、発振開始に時間がかかり、振幅が小さくなり、限界周波数より低くなると発振が起こらないことがわかりました。

欧米では、フルビッツさんらが、こうした発振理論を構築され、フルビッツの多項式で発振条件を数学で計算できるようにだいぶ以前に理論構築に成功されたようです。

しかし一方で、世界で最初にトランジスタラジオを市販されたのは、国内の家電メーカのようです。こうした真空管やトランジスタ動作が理論的にほとんど解明されていない時代には、おそらく試行錯誤法で、真空管回路からトランジスタ回路への移行が行われたかもしれず、それに要したコイルの巻き直しや試作の失敗の繰り返しという神業のような超人的努力があったのではないか?・・・と、想像されます。

これが現在では、パソコン上で、こうした回路計算ができるようになってはいます。
しかし、こうした回路設計法が十分に確立されているかというと、そうではない、と僕は思います。
多くの電子回路の設計法は現在でも存在しないものが大変多い(何故動くのか本当は良くわかっていない。学問として、電子回路設計法が個別回路でも確立されておらず、また全体システム設計として体系化もされていない。)と、僕は思っています。


図2. 発振波形

図2.のように大変綺麗なサイン波で、スプリアスが極めて少ない美しいものです。
どうやってコイルの巻き数やタップ位置を決めたのか・・・?
これは神業ではないでしょうか。

通信機のVFOはアナログ回路では、1MHz帯域を得るのは難しく、周波数が低いほど、発振周波数帯域は狭くなる傾向があるように個人的には経験しています。

こうした中波帯と周波数が低く、かつ1MHzを超える帯域幅で、ここまで純粋なサイン波が得られているのは超人的神業と思います。


図3. 発振周波数で振幅幅が変化する特性

図3.に、この局部発振器の最高周波数限界、最低周波数限界の振幅幅を比較しました。

ラジオのシステム性能上は、周波数が変化しても振幅幅が一定になることが望ましく、周波数混合器を理想アナログ乗算器と考えると、ラジオの感度は計算上、振幅電圧幅に線形比例して、出力される受信電圧は高くなります。
(記事「ラジオはどうして聞こえるの?」を参照)

この振幅の変化するサイン波を、振幅一定のクロック波に変換できれば、市販のOSCコイル、バーアンテナ、二連バリコンをそのまま無改造で流用した、機械同期による同調操作が可能になります。
別の記事で、この波形変換を考察します。


このVFOの課題:
(1)発振周波数が時間的に少しずつ変動する。
(2)#(2)の周波数変動は発振周波数が高いほど安定度を保つのが難しくなる。
(3)発振周波数が温度変化、一日の温度変化、季節的温度変化で変動する。

現在までに上記課題を解決する手段としてPLL,DDSが当たり前のように使われるようになりましたが、近年になり、再びこうした旧式回路を持つ海外製品が輸入される傾向があるようです。


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