N-MOS FETの設計法がJFETに通用しないことが判明したため、JFETを使った高周波小信号用JFETアンプの設計方法をオリジナルの手法で確立することを目指す。
1. DC特性の確認
電源電圧 Vcc を決定後、JFETのゲート電圧 Vgs : ドレイン電圧 Vds
の関係を求める。
負荷抵抗 RL をパラメータ指定して、それぞれの負荷抵抗での、
Vds : Vgs
Ids : Vgs
のグラフを求める。
図1. DC特性の確認 |
(1)JFETはある一定のゲート電圧をスレッショルド電圧 Vth として、ドレイン電流 Ids が流れ始め、ゲート電圧 Vgs が増えるほど Ids が増え、やがて飽和電流に達する。
(2)図1.のVds:Vgs曲線の傾きΔVds/ΔVgsが、JFETの電圧利得を意味する。
(3)負荷抵抗 RL が大きいほど、電圧利得は大きくなる。また入力可能なゲート電圧範囲は狭くなる。
逆に、負荷抵抗が小さいほど、電圧利得は小さくなるが、入力可能なゲート電圧範囲は広くなる。
(4)小信号入力で高い利得を得るには、電圧カーブの変化率が大きいRLを選択すれば良い。
(例:緑線)
(5)大信号入力で低い利得で広いダイナミックレンジを得る場合は、電圧カーブの変化率が小さいRLを選択すれば良い。(例:赤線)
2. 選択した負荷抵抗 RL に関して Vds:Vgs のグラフを書く。
図2. Vds:Vgs DC特性 |
図2. のグラフの傾斜の中心点近く、Vgs=0.0[V]をバイアス電圧とする。
多くの応用回路で、2SK192,2SK241は、ゲート抵抗 1MΩとして、Vgs=0.0[V]をバイアス電圧にしていることが多いが、-1.8[V]〜0.0[V]のマイナスのバイアスで利得が得られるのがJFETの大きな特徴。
NチャネルMOS-FETでは、このDC scan カーブがプラス電圧範囲に現れる。
3. 周波数:利得 特性の確認
以上のDC特性が、AC,RFでも通用する保証は全く無いので、さらに高周波特性を見る。
使えそうなRL=200[Ohm], 300[Ohm]について、目的周波数 0.5[MHz]〜2[MHz]の利得を確認する。
図3.1 RL=200, Vcc=3V, Vth=0V での周波数:利得 |
図3.1 から、指定条件では利得=0と判断する。これでは電圧増幅は起こらないと判別する。
図3.1〜図3.3に示すAC利得は、入力信号電圧V1のバイアス電圧設定で大きく変化する。
このゲ−ト電圧のバイアス値が適切範囲(図1,図2.のカーブ内、スレッショルド電圧 Vth以上)に無いと、アンプは全く増幅せず、減衰動作になるので十分に注意要。
図3.1〜図3.3に示すAC利得は、入力信号電圧V1のバイアス電圧設定で大きく変化する。
このゲ−ト電圧のバイアス値が適切範囲(図1,図2.のカーブ内、スレッショルド電圧 Vth以上)に無いと、アンプは全く増幅せず、減衰動作になるので十分に注意要。
図3.2 RL=300, Vcc=3V, Vth=0V での周波数:利得 |
図3.3 RL=可変, Vcc=12V, Vth=0V での周波数:利得 |
図3.3は、Vds=12Vになっているが、利用するVcc電圧で、同じグラフを書く。
各負荷抵抗 RLでとれそうな利得の傾向を見る。
マイナスになる利得の線は増幅がおこらないので、目標とする利得を得られる負荷 RLの値を見つける。
この利得特性グラフを書くには、V1に適当な、Vth以上のバイアス電圧を与えることが大変重要。
消費電力が大きくなりすぎないように注意する。
図4.1 2SK241GR Vds : Vgs DC特性 |
図4.2 2SK241GR 利得:周波数特性 |
概ね17dB程度の利得がとれると見積もる。
5. 過渡解析
図5.1 2SK241GR 過渡解析 1 |
Vgs= -0.68[V] RL=1K[Ohm], Vcc=9[V]で、増幅が正常に起こっていると判断する。
Vgsがマイナス電圧 -0.68[V]で電流Idsが立ち上がる。
N-MOS FETと異なり、2SK241は、マイナス電圧 -0.68[V]がスレッショルド電圧である点に注意する。
N-MOS FETでは、通常プラス電圧がスレッショルド電圧として、二次曲線のVds-Vgs関数で近似できる
図5.2 2SK241GR 過渡解析 2 |
6. 応用回路にて過渡解析。(図6.1)
マイナス電源を使わないと仮定し、Vth=0V で妥協する。
図6.1 2SK192 AMラジオ用 RF増幅回路での過渡解析+FFT解析 |
図6.2 他の候補FET AMラジオ用 RF増幅回路での過渡解析+FFT解析 |
2SK241が生産中止のため、2SK192で交替させる。
設計終わり
(ただし最適化は十分でない)
関連文書:
N-MOS FET , JFETの特性の調べ方、選択方法 ( LTspice 対応)
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