2017年2月15日水曜日

AMの過変調,包絡線検波方式,プロダクト検波方式の謎を解く

AMの過変調,包絡線検波方式、プロダクト検波方式について、国内に誤った認識と思しき情報が広がり「いいつつたえ」として定着、それ移行は理論修正が全くされないため、この状況を改善し、電子工学としての前進を試みます。

図1. は、変調率200%(変調指数=2.0)のAM変調電圧 です。

この計算式は、

Vam(t)={Vdc+x(t)}*Vc*sin(ωc*t) ...式(1)

に基づいています。

これまで、そして現在でも、こうした100%変調度を上回るAM変調波は、”過変調”と呼ばれ、送信波形が歪んでいると多くの書籍で語られ、その理解が定着してしまいました。

問題:

(1)AM変調波電圧は数学的計算式とグラフの示す通り、全く歪みはありません。(図1.参照)
 すなわち、送信波形は「過変調」にはなっておらず、変調波の歪みは全くありません。

(2)日本国内で言われているAM変調波の「包絡線」は、明らかに数学関数としての「包絡線」と異なったものです。
図1. 変調率200%(変調指数=2.0)のAM変調電圧


図2.1, 図2,.1 に図1.のAM変調波から取り出した数学的包絡線を示します。

なんら歪みは存在せず、ベースバンド信号である関数曲線は連続性を示し、変調は快調です。
この数学的包絡線を取り出せば、本来の正しい「包絡線検波」が可能です。

この数学的、真の意味の「包絡線」を検波する方式としては、既に「プロダクト検波」、または「同期検波」で実現できています。


図2.1 変調率200%(変調指数=2.0)のAM変調電圧の数学的包絡線 1(上側)

図2.2 変調率200%(変調指数=2.0)のAM変調電圧の数学的包絡線 2(下側)


従来の、日本国内の「包絡線検波方式」を図3.に示します。

図3. 日本国内の「包絡線検波方式」


僕にはいきさつは全くわかりませんが、日本国内の「包絡線検波方式」は、図3.に示すように、ダイオードが、最初の図1,の信号のプラスの電圧を通過させ、マイナス電圧をカットします。

これはおそらく、中学校技術家庭科で習う、商用100V交流の整流動作と同じ考えかたに由来すると推定されます。

この理論は、さらに、ダイオード検波回路後段のRC並列回路が、ピーク・アンド・ホールド動作を起こし、図3.の最大電圧を「ダイアゴナル歪み」を伴って、検波出力電圧になると説明されています。

しかし、ダイオードの高周波特性としては、このような整流動作は起こりません。

確かにシリコン・ダイオードは交流100Vやそれをトランスで分圧した、交流電圧、例えば先頭電圧12[V]を整流し、脈流と呼ばれる波形を出力し、ダイオードの後のコンデンサがそれを充電し、負荷が放電するために、脈流を伴った歪んだリップルと呼ばれる波形になることは、実験でも確認できます。

こうした単一周波数の交流の整流動作を、AM変調電圧の検波動作にそのまま適用することはできません。

倍電圧検波回路の倍電圧出力は、こうした整流動作の「勘違い」から発生した「いいつたえ」として定着してしまっていますが、それは正しくないことが、計算でも実測でも確認できます。

AM変調波電圧は、単一の周波数の交流電圧では構成されておらず、式(1)に従い、キャリア各周波数 ωc を中心に、帯状に無数の周波数による電圧源が加算させる回路で表現されます。

従って、従来の日本国内の「包絡線検波」理論は、ダイオード検波回路には適用できず、そのような電気的動作は再現できません。


付録:

AM変調の電圧式

Vam(t)={Vdc+x(t)}*Vc*sin(ωc*t) …式(1)

プロダクト検波の計算

Vout(t)=Vam*{2*sin(ωc*t+φ(t))} …式(2)
={Vdc+x(t)}*Vc*sin(ωc*t)*{2*sin(ωc*t+φ(t))}
=2*Vc*{Vdc+x(t)}*sin(ωc*t)*{sin(ωc*t+φ(t))}
=2*Vc*{Vdc+x(t)}*sin(ωc*t)*{sin(ωc*t)*cos(φ(t)+cos(ωc*t)*sin(φ(t))}
=2*Vc*{Vdc+x(t)}*{ {sin(ωc*t)}^2 *cos(φ(t)) +sin(ωc*t) *cos(ωc*t)*sin(φ(t))}
=2*Vc*{Vdc+x(t)}*{ (-1/2)*{cos(2*ωc*t) -cos(0)}*cos(φ(t))+(1/2)(sin(2*ωc*t)+sin(0))*sin(φ(t)) }
=Vc*{Vdc+x(t)}*{ (-1)*{cos(2*ωc*t) -cos(0)}*cos(φ(t))+(sin(2*ωc*t)+sin(0))*sin(φ(t)) }
=Vc*{Vdc+x(t)}*{ (-1)*{cos(2*ωc*t) -1}*cos(φ(t))+(sin(2*ωc*t)+0 )*sin(φ(t)) }
=Vc*{Vdc+x(t)}*{ (-1)*{cos(2*ωc*t)*cos(φ(t)) -cos(φ(t))})+sin(2*ωc*t)*sin(φ(t)) }

2*sin(ωc*t+φ(t)):局部発振器(Local OSC)の電圧式[V],φ(t):位相ずれ[rad/s]

LPF のカット周波数 ω cut[rad・Hz] < 2*ωc[rad・Hz] に設定すると
2*ωc[rad・Hz]の高い周波数成分が除去されるので、

LPF(Vout(t))= Vc*{Vdc+x(t)}*cos(φ(t)) … 式(3), プロダクト検波の出力電圧式
式(3)がプロダクト検波で復調されたベースバンド信号x(t)の式で、x(t)は、オリジナルのベースバンド信号x(t)について線形性を維持している。

ここで 位相ずれ 0≦φ(t) ≦2π で、-1≦cos(φ(t))≦+1 なので、
復調信号は、Vc*{Vdc+x(t)} が、時間的に-1~+1倍の幅で電圧値が変化する。
(具体的にはここで位相φ(t)は局部発振器の周波数ωcの位相が時間的にゆっくり変化する場合、その復調電圧 LPF(Vout(t))、瞬時的に最小0V 出力 0[V]となる出力変化を見せる。)

同期検波では、位相ずれφ(t)がキャンセルされるので、
cos(φ(t))=1 と制御するので、
LPF(Vout(t))= Vc*{Vdc+x(t)}… 式(4), 同期検波の出力電圧式

式(3),式(4)について、特殊化し、単一周波数の変調信号 x(t)=2.0*cos(2π*1000*t), Vdc =1.0 ,と設定すると
LPF(Vout(t))= Vc*{1.0+2.0*cos(2π*1000*t)}*cos(φ(t)) … 式(3)’
LPF(Vout(t))= Vc*{1.0+2.0*cos(2π*1000*t)}… 式(4)’

式(3)’, 式(4)’は、ベースバンド信号 x(t)=2.0*cos(2π*1000*t) に対し、線形関係を維持しているので、プロダクト検波、同期検波ともに、復調時の歪みは発生せず、ベースバンド信号を復調できる。
(これが本来の意味で、「数学的包絡線検波」動作となる。)

ここの特殊例では、
1.0+2.0*cos(2π*1000*t)
が「数学的包絡線」と一致する。

これは、振幅幅±2.0[V]はもちろん、理想アナログ乗算器を用いると、数学的に最大振幅±2.0[V]はいくら大きくなってもよく、それでも検波歪みは全く発生しないことを意味する。

(変調度100%以上の200パーセント,300,400%・・・となってもなんら歪み無く復調できる。)
(数学的には、変調度100%以上でも変調波電圧信号そのものに歪みがなく、かつプロダクト検波、同期検波は検波動作でも歪みが発生しないので、「過変調=歪む」の意味がもともとどのような電気的現象を意味していたのかわからなくなる、となる結果が数式から導かれる。)

ダイオード検波方式

日本国内では、検波用ダイオード(1N60が有名)に、RC並列回路を接続したダイオード検波回路が、「包絡線検波」と呼ばれる「定説」が現在まで引き継がれて語られ、現在でも、書籍やネットに書かれている。
この「定説」がいつ生まれ、どのように広がったてきたのか、そのいきさつは現在不明。

一方、ここでの解析結果では、こうした「包絡線検波回路」は、受信されたAM変調電圧波の包絡線と一致する説明記事は再現できなかった。
ここの解析では、AM電圧波のピーク・ホールドする動作が再現せず、またピーク電圧間を結ぶダイアゴナル歪みによる電圧も再現していない。

ここの検波動作解析結果では、受信されたAM変調波は、ダイオードの持つ周波数変換動作により、キャリア電圧と変調波電圧の周波数差分が現れ、それがベースバンド信号の低周波領域に現れていると推定している
(ダイオードによる周波数変換動作、ミキサー動作はすでに公知の事実。)

その復調波電圧は、グラフに書くと目には太い線に見え、その時間軸を大きく拡大すると、その太い線はキャリア波の細かい正弦波信号で構成されており、従来の「包絡線検波」とは全く別の概念/意味での2本の包絡線が存在し、微小な電位差の二つのベースバンド信号が包絡線となり、その包絡線に包まれるように、キャリア信号のなめらかな(ギザギザではない)正弦波の微小振動電圧の存在が見られる。
この微小電圧のキャリア波の振動は、ダイオードの後のRC回路が引きおこしている過渡現象かもしれない。
復調信号電圧のFFT解析では、キャリア周波数に一致する周波数にかなり高い信号レベルのピーク電圧が観測されるので、これは、先の二本の包絡線に包まれた微小電圧のキャリア正弦波の振動電圧の存在に対応すると推定している。(現在、解析中)

ダイオード検波の数学的計算の困難さ

変調電圧は複数の周波数の加算された複数交流を直列に加算したものになるが、
一方、コンデンサやダイオード,のインピーダンスは、周波数一定の高周波交流電圧に対し、1:1に対応して計算できるが、周波数の異なる交流電源が複数存在すると、それらのインピーダンスの計算方法が一意に定まらず、同時に異なる複数の周波数に対し、複数の異なるインピーダンスが同時に存在してしまう。この多重周波数の多重インピーダンスをどのように考えて計算する計算方法が課題。

産業上のメリット
無電源、無調整で実用になるAM検波回路が安価に容易に構成できる。
デメリット
指数関数特性に由来する高調波歪みの発生を防げない。


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