身近な非線形素子として最も基礎的なダイオードの検波回路動作が、従来から久しく知られている指数関数によるダイオードの直流電流式 i(t)=Is*{exp(v(t)/Vt)-1}と、それを基礎にしたダイオードのDC等価回路で、どこまでLTspiceに近づけるのか試算してみた。
結果は、まだまだLTspiceの計算精度には届けないが、ある程度のダイオードの電気的特性についておおまかな定性的理解と、数値計算上の計算値近似が可能になる感触を得た。
最初に、一番良い計算結果となったダイオードのDC等価回路による計算結果と、BAT54ダイオードの計算結果を図1.で比較する。
(現在、高周波のダイオード等価回路モデルの資料が無いので、今回の計算アプローチはここまでに留まります。)
図1.に、DC等価回路モデルによるダイオードBAT54計算モデルと、LTspice実装のBAT計算モデルのAM検波電圧の過渡計算結果を示す。
青線:AM変調電圧 変調指数1.0, ベースバンド 1KHz 100mV ピーク電圧の入力信号
緑線:DC等価回路モデルによるダイオードBAT54計算モデルによるAM検波電圧出力 1KHz
赤線:LTspice実装のBAT計算モデルのAM検波電圧 1KHz
結果:
(1) 緑線、赤線ともにPeak Detector/Envelope Detector理論によるAM変調波電圧のピーク電圧(青線)をホールドする動作は再現していない。
(2) 緑線のDC等価回路計算モデルでも、LTspiceの計算結果に類似した波形と、電圧数値が出てきた。
緑線のDC等価回路は、理想ダイオードの計算式に基づく電流源へ、接合容量12PFのコンデンサを並列に接続し、かつ直列抵抗をかまし、かつ電圧Vtの値を、赤線に近づく様に一種の現物合わせ込みの調整をした。
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Revision
-0.1-(Jun.27,2017)
図1.の出力信号電圧の変化は、次の講座で説明されている f(t)=cos(t)+C, g(t)=exp(αt)
の畳み込み積分の結果 f*g の波形にとても良くにています。
Exploration of the Convolution Accumulation Applet
青線:AM変調電圧 変調指数1.0, ベースバンド 1KHz 100mV ピーク電圧の入力信号
緑線:DC等価回路モデルによるダイオードBAT54計算モデルによるAM検波電圧出力 1KHz
赤線:LTspice実装のBAT計算モデルのAM検波電圧 1KHz
結果:
(1) 緑線、赤線ともにPeak Detector/Envelope Detector理論によるAM変調波電圧のピーク電圧(青線)をホールドする動作は再現していない。
(2) 緑線のDC等価回路計算モデルでも、LTspiceの計算結果に類似した波形と、電圧数値が出てきた。
緑線のDC等価回路は、理想ダイオードの計算式に基づく電流源へ、接合容量12PFのコンデンサを並列に接続し、かつ直列抵抗をかまし、かつ電圧Vtの値を、赤線に近づく様に一種の現物合わせ込みの調整をした。
図2. 小電圧入力 DC sweep計算結果 |
DC sweep計算は、高周波であるラジオ電波電圧に対しては、殆ど計算の意味をなさないが、試しに0〜100mVのDC電圧を入力し、理想ダイオードの計算式と、LTspiceのBAT54モデルの出力電圧を比較した。
(国内の書籍は、現在でもDC電圧でのみAM検波理論を論じている。すなわち100mV以下のDC電圧で、順方向電流が良く流れるか否かだけに気をとられ、肝心の中波放送/RF領域のゲイン・位相特性をとらえる考え方に気づいていない検討・製作・解説事例が多い。)
理想ダイオード電流値を見ると、指数関数の持つ曲線の特徴が見えるが、LTspiceのBAT54モデルでは、指数関数というよりも直線近似できるような計算結果となった。
DC sweep電圧を上げてゆくと、指数関数の計算値がぐんぐん上昇するので、両者の計算の誤差は大変大きくなるので、やはり理想ダイオード計算式ではDC特性であっても、近似計算は到底できない、という結果になった。
表現が不適当になるが、基本的には、AM検波回路の計算に、理想ダイオード式を使うのは無理そうである。
図3. 理想ダイオードモデルとLTspice BAT54モデルの検波動作比較 |
FFT結果を見ると、理想ダイオードの指数関数から予測される周波数変換特性は、LTspiceのBAT54計算値と類似した特性が見られる。
しかし、ダイオードに流れる電流値を比較すると、理想ダイオードでは計算式通りに、マイナス側の電流がカットされてしまい、ダイオードの高周波特性である貫通動作が見られず、結果、検波電圧値も大きく外れてしまう。
どちらにしても、AM検波モデルの両者とも、従来のPeak Detector/Envelope Detector理論によるAM変調波電圧のピーク電圧をホールドする動作は再現できない。
両者とも計算値は、AM変調電圧ピーク値をホールドしておらず、どちらにしても実際のダイオード検波回路は、従来検波理論に従っていない、それとは異なる動作をしている。
図4. 過渡解析とFFT計算結果 周波数レンジ最大幅 |
図5. 過渡解析とFFT計算結果 周波数レンジ キャリア周波数近傍 |
図4, 図5に周波数変換動作がどうなっているか、理想ダイオードモデルと、LTspice BAT54モデルを比較した。
検波動作の基本原理として僕がこれまで書いてきた周波数変換特性により、ダイオードの低周波検波電圧が出るという考えは、定性的な特徴は再現した。
LTspiceの計算結果と実測データをオシロスコープで観測で比較すると、この課題は、よりはっきりすると思います。
(現在、震災の影響で僕の実験室が使えない状態のため、お読みになられた方は、ぜひ、オシロスコープで検波回路の出力波形を見て欲しく、よろしくお願いします。)
Revision
-0.1-(Jun.27,2017)
図1.の出力信号電圧の変化は、次の講座で説明されている f(t)=cos(t)+C, g(t)=exp(αt)
の畳み込み積分の結果 f*g の波形にとても良くにています。
Exploration of the Convolution Accumulation Applet
(Copyright by MIT/US and Mr.Youtube)
三角関数電圧にDC電圧を加えた関数を、重み関数が指数関数で減衰する特性にも見えます。
RC並列回路が、重み関数 g(t)=exp(-αt) 、その入力 f(t)=cos(t)+C がダイオードによる周波数変換後の低周波信号電圧に対応できそうに思える。
すなわち、
f(t)=cos(ωs*t)+Vdc
g(t)=exp((-1/RC)*t)
の畳み込み積分で、ダイオード検波回路の出力電圧が求まるのではないかと思う。
{どなかたかチャレンジ願います。おそらくまだ誰もできていないと思います。}
(July.21, 2017)
Sep.22,2017 :図4(ダイオードの周波数変換効果特性を見る図)画像ファイル挿入ミスを差し替え
Jan.23, 2018 :一部分、文章遂行
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