2016年12月30日金曜日

クワドラチュラ(Quadrature) PM/FM 復調回路動作の基礎検討

インターネット上の検索で見つかった455[KHz] IFアンプ後段に使うクワドラチュラ(Quadrature) FM 復調回路の動作をLTspiceで、検波特性原理の理解を試みた。






図1. 過渡解析結果(+高域FFT解析)

(1) 455[KHz] ± 25[kHz] 音声信号(ベースバンド) 100[mV]を送信して、それをクワドラチュラ(Quadrature) FM 復調回路で検波した出力信号を図1.1に示す。

±18[mV]の1[KHz]の歪んだベースバンド変調信号が出てきたので音は復調はする。

しかし、二次、三次、4次の高調波が出てしまい音質はかなり悪くなると予想される。

図1.2 過渡解析結果(+狭帯域FFT解析)

図1.2では、(1) クワドラチュラ(Quadrature) FM 復調回路で検波した出力信号を図1.1の検波出力信号の周波数スペクトラムの周波数軸を広くして見た。

455[KHz]中心に多数の余分な周波数成分が広がり、結果は必ずしも思わしくない。


図2  AC解析結果

同回路のFrequency/Voltage変換、Phase/Voltage変換特性を見てみたところ、どちらもほぼ一定の値で期待する直線傾斜が出てこない。

この回路(図1)ではFM変調、PM変調の復調には向かないかもしれない。





























図3. クワドラチュア検波用ICの構成例 NJM-2590 (引用 出典:Copyright by JRC inc.)

図3は、NJM2590 JRC社のQuadrature検波用ICの例。

図1と構成は似ているが、セラミック振動子 455[KHz]が利用されている。
FSK復調が取り出せる等の相違がある。


簡単な考察:

(1)原理1 (図1の動作)

PM(位相変調)信号波と、コンデンサで90度位相をずらしたPM波を乗算して、LPF(ローパフィルタ)で位相の変化を取り出す思想と考えられる。

Vin(t) = Vc*sin(ωc+θ(t)) ...(1)
Vosc(t)=Vc*sin(ωc+θ(t)-π/2) = -Vc*cos(ωc+θ(t)) ...(2)

式(1),式(2)を乗算すると、

Vin(t)*Vosc(t)=Vc*sin(ωc+θ(t)) *{-Vc*cos(ωc+θ(t))} ...(3)
                        =-Vc^2*(1/2){sin(2ωc+2θ(t))+sin(0) }
                        = -Vc^2*(1/2){sin(2ωc+2θ(t))} ...(3)'

(3)'式にLPFを通過させると、高周波成分2ωc+2θ(t) [Hz]が除去されるので、

Vout = 0 ...(4)

困ったことに出力が何も出てこない計算結果になってしまう。


(2)原理2 (NJM2590)

前の計算方法では、出力が0で信号が出てこなくなるので、局部発振器では、セラミック振動子455[KHz]のOSC信号が乗算器に加わると仮定してみる。


Vin(t) = Vc*sin(ωc+θ(t)) ...(5)
Vosc(t)=Vc*sin(ωc-π/2) = -Vc*cos(ωc) ...(6)

式(5),式(6)を乗算すると、

Vin(t)*Vosc(t)=Vc*sin(ωc+θ(t)) *{-Vc*cos(ωc)} ...(7)
                        =-Vc^2*(1/2){sin(2ωc+θ(t))+sin(θ(t) }
                        = -Vc^2*(1/2){sin(2ωc+θ(t))+sin(θ(t))} ...(7)'

(7)'式にLPFを通過させると、高周波成分2ωc+θ(t) [Hz]が除去されるので、

Vout = -Vc^2(1/2)*sin(θ(t)) ...(8)
          ≒ -Vc^2(1/2)*θ(t) ...(9)   (∵ θ(t)≒0 の時、sin(θ(t) = θ(t) で近似できる。 )

式(9)で前段にリミッターアンプで振幅を1[V]にすると仮定すると、

Vout ≒ (1/2)*θ(t) ...(10)

(10)式は、PM/FM変調波 Vin(t) (1)式の位相変化関数θ(t)の近似的に復調できることになる。

しかし、(10)式は、|θ(t)| >0 の時、sin(θ(t) = θ(t) で近似できなくなる。 


この課題を解決するため、
式(8) で、
リミッターアンプを検波前段に置き Vc=1=Vc^2 として
式(8)からの復調を考える。

Vout = -(1/2)*sin(θ(t)) ...(8)'
-2*Vout = sin(θ(t))

∴ θ(t) = arcsin(-2*Vout) ...(9)

式(9)で、位相変化成分θ(t)が歪みなく取り出せる。
これは位相変調(PM変調)が復調できたことを意味する。

ところが、FM変調では、音声信号(ベースバンド信号)が、時間での積分演算と係数倍(k)になっているので

θ(t)=∫k*x(t)dt ...(10) 定積分範囲:0〜t[s], kは定数

このため、ベースバンド信号 x(t) は、θ(t)を時間で微分して、

dθ(t)/dt=k*x(t) ...(11)

∴x(t)= (1/k)* dθ(t)/dt ...(12)

式(12)は、FM変調が復調できることを意味する。


しかし、Quadrature検波回路では、
sin()関数逆関数 arcsin()演算と微分演算機能が無いので、良好な音質のFM復調はできそうにない。

この課題を解決するには、AD変換器でLPFからの出力信号を数値に変換し、マイコンの数値演算で、arcsin()演算と微分演算を行い、演算終了後、DA変換器でアナログ電圧に戻すと、歪みの無いFM復調が実現できると考えられる。


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