市販の中間周波数455[KHz]トランスを使用してIFアンプを作ると、受信感度が著しく悪い。1次コイル側の3端子の接続を逆に交換すると、感度は正常になる。
2. 原因の解析
図2.1 電源タップ接続前のIFTコイルの同調周波数 = 455[KHz]
図2.1は、IFTコイル1次コイル側の中間タップ端子をオープン状態で、1次コイルのコイル巻き数の多い側の端子に抵抗10[kΩ]を接続して、IFTコイルの同調状態を見たものです。
利得カーブの示す様に、約455[KHz]に同調しています。
図2.2 電源タップ接続後のIFTコイルの同調周波数 = 1.332[MHz]
図2.2は前述の図2.1の配線を保ったまま、IFTコイルの中間タップ端子を、Vcc=5[V]電源に接続したものです。
すると、同調周波数はこのように大きくずれてしまい、1.332[MHz]に同調周波数が移動してしまいます。
これは、Vcc=5[V]端子は、電源がほぼ直流的に0[Ω]に近いのでグランドへ直結に近く、また交流/RF周波数でもバイパスコンデンサ1[uF]を介して大変低いインピーダンスでグランド電位に落ちてしまうため、IFTコイルの同調周波数等の電気的特性が大きく変化してしまうことを意味しています。
従って、この配線状態では、IFT周波数が455[KHz]から大きく離調し、1.332[MHz]に同調し、ラジオの感度は殆ど失われてしまいます。
図2.3 1次側コイルのホットタップを逆接続にした同調周波数 = 455[KHz]
図2.3は、前述の図2.1, 図2.2のIFTコイル1次側の配線を逆にしたものです。
同調周波数は、約455[KHz]になり、さらに、コイル利得が極小になる1.32[MHz]にディップする特性が現れました。
すなわち、IFTの一次側コイル配線の両端を逆配線することで、IFTが期待する周波数455[KHz]に同調できたことを意味します。
3. 解決方法
市販のIFT 455[KHz]を使用する場合は、上記のように、1次コイル側の中間端子に電源端子を配線することで、周波数の離調を起こさないように、巻数の少ない端子側をホット端子として、例えば、トランジスタのコレクタ端子やFETのドレイン端子へ配線すると、この問題が解決出来ます。
この中間タップを持つコイルは、455[KHz]に限らず、全ての高周波増幅アンプの同調式アンプで、ここで示した同じ原理により、同調周波数が大きくずれて、増幅が正常に起こらない現象(全く増幅しない、利得が小さすぎる、異常発振する等の現象)が発生している場合がありえるので、十分注意が必要と考えられます。
ここでのコイル・モデル計算は、コイルのインダクタンス値だけでなく、巻き数と結合定数と相互インダクタンスを考慮することで、コイルの同調周波数を計算することが出来ます。この計算方法[1]は、時間が準備できれば後日追記しようと思います。
参考文献:
[1] IFTモデリング計算方法, 周波数混合回路のspice simulation
国立大学工学部公開教育資料より, 2015 (Copyright Reserved)
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