2016年12月17日土曜日

LC並列同調回路の同調特性とQ(Quality Factor)の最適値に関する検討

1. LC並列同調回路の同調周波数と周波数バンド幅の関係

RLC直列回路では、過渡現象電圧式のその特性方程式の解が虚数解となる条件で、電圧突入の瞬間で減衰電圧振動が起こることが「LRC回路の過度現象」として良く知られている。

その過度現象時の電圧振動の周波数は、

f=1/(2*π)*√{(1/LC)-(2*L/R)^2} [Hz] ...(1)

式(1)となり、R=0の場合の周波数である

f=1/(2*π)*√(1/LC) ...(2)

式(2)よりやや低い周波数の電波が放出されることが知られている。

この過度現象はコイルのQが一定以上高くなると発生する。

Q=2*π*f*L/R ...(3)

そして、その振動回数は概ねQ回で振動が終わる。[1]

このQが一定以上高い場合に式(1)に従った周波数の電波がLC同調回路から放出される。

従来まで(日本国内では)、ラジオ受信機のLC同調回路やアンテナのQは高いほど性能が良いと言われてきている。
例えばLC同調コイルに流れる電流はQに比例して大きくなると書かれている例など、コイルQは高いほど良いとする書籍記事やネット情報が現在でも多数見られる。

しかし、このブログ記事で示したように[2]、ラジオ受信機のLC並列共振回路でも、Qが一定上高くなると、式(1)に従った電波がLC回路から放出され、その周波数が受信周波数に近いと、ビート現象により、受信電波の電圧に歪みが発生する。

すなわち、受信機入力部や高周波増幅部に使用するLC共振コイルのQ値には最適値があり、あまりQが高くなりすぎると、ビート現象で受信電波が歪んで聞こえたり、高周波増幅アンプでは自己発振の発生原因になっていると考えられる。

逆に発振回路では、Qが一定上高くならないと発振現象は発生しないと予想される。

では、RLC共振回路の同調周波数は、コイル(インダクタ)内または、高周波動作で現れる交流抵抗成分で、式(2)の周波数からずれてしまうことは無いのだろうか?



図1. にLC並列同調回路の同調周波数と周波数バンド幅の関係をコイルの内部抵抗Rの値を変化させた一例を示す。
ここでは良く実用例が見られる50[MHz]帯受信機のLC並列共振回路を想定した。

結果:

幸いLC並列同調回路の同調周波数は、式(2)の周波数で利得が最大となり、位相の変曲点も
式(2)の周波数近辺に見られる。
Rの値が変化しても同調周波数は変化していない。
ただし、Rの値が大きくなるほど、利得は減衰し、逆にバンド幅は広くなる。


図1. LC並列同調回路の同調周波数と周波数バンド幅の関係 (一例)


2. LRC同調回路とアンテナを接続する抵抗値と同調の周波数幅の関係


図2. に、LC並列同調回路に直列接続する抵抗と同調周波数の鋭さの変化の一例を示す。
アンテナ側は、インピーダンス50Ωで完全に50[MHz]に同調しているSWR=1.0を仮定した。

ラジオ受信機側で、抵抗Rval[Ω]で、アンテナへ接続すると、Rvalの値が大きいほど同調特性はシャープに鋭くなるメリットがある。

逆に、Rvalが小さくなるほど、同調特性はブロードに甘くなり、広帯域動作にメリットがある。

同調ハンド幅は、Qが大きいほど狭くなり、逆にQが小さいほど広くなるので、応用の目的に合わせたQの値を、Rvalの調整で最適値に設定できる。

図2. LC並列同調回路に直列接続する抵抗と同調周波数の鋭さの変化 (一例)


3. LC並列回路の過渡電圧特性

図3.に、図3. LC同調回路の過渡現象解析結果(一例)を示す。
同調コイルのQはこのシミュレーションパラメータの条件下では、過度現象による電圧振動は見られない。
ここの条件ではコイル内の抵抗成分が0に近くても特に問題はないが、コイルの巻き数のもっと大きいインダクタンス値の大きい、周波数が低い応用用途では、Qを高くしすぎると過度現象による電圧振動が発生するので十分な注意が必要となる。


図3. LC同調回路の過渡現象解析結果 (一例)


参考資料:
[1] MIT OCW 6.002
[2] 本ブログの記事(目次を参照)
[3]電波時計の長波受信回路のアンテナ回路:フェライト・バーアンテナが使用され、水晶共振器(Qが著しく高い)は使われていない。


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